口にカンジダが増殖することがあります。カンジダは真菌というカビの一種で、 通常は尿道、性器周辺の皮膚、膣内などに感染します。 常在菌による自己感染が多く、キスや性行為でも感染します。
口中に真菌が増えて口腔カンジダ症を起こすと、舌が白くなる、ヒリヒリする、口角炎ができる、誤嚥性肺炎の原因になるなど多くのトラブルを引き起こします。
常在菌のひとつであるカンジダは口の中にも存在しますが、異常に増えて口腔カンジダ症を発症することがあります。口腔カンジダ症になったときに適切に対処するように、今回の記事は、「口腔カンジダ症」について詳しくお伝えします。是非ご参考にしてください。
記事は口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登が書きました。
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口腔カンジダの症状
口腔カンジダの症状は、口の中の粘膜(舌や歯茎など)に膜がはり白くなります。カンジダ性口内炎になると、粘膜が赤くなる、ひりひり・ピリピリと痛いなどの症状が出ることがあります。症状が悪化する前に早目に治療することが大切です。
症状としては口の中にぬぐい取れる白斑を認め、軽度の場合は無症状で経過します。悪化すると、潰瘍や赤みがでてきて粘膜や舌の痛み、味覚異常、口角炎などを引き起こします。
引用:国立病院機構 熊本医療センター
舌がヒリヒリする
舌がヒリヒリしたからといって、口腔カンジダ症とは限りませんのでご注意ください。舌がヒリヒリする原因は数多くあります。
舌がヒリヒリする時は、舌の口内炎や外傷性が原因になっていることが多いのですが、原因不明で神経痛による「舌痛症」のケースもあります。他にも次のようなことが舌のヒリヒリを起こす原因になるのでご参考にしてください。
→ 舌が痛い!ヒリヒリする。…何科に行けば良い?お薬は何が良い?
【舌がヒリヒリする原因】
- 舌を噛んで傷付けた(その後に口内炎になる)
- 義歯やクラウンの縁で舌に傷や口内炎ができる
- ドライマウス症によって舌がパサパサに乾く
- 口腔カンジダ
- 地図状舌や溝状舌(舌苔が悪化する)
- 鉄・亜鉛・ビタミンの欠乏症
- 舌がん(口腔がん)
- 自己免疫疾患
- アレルギー
- ウイルス、細菌
- 神経痛(舌痛症)
- ストレス、うつ
意外にも、舌がヒリヒリする原因に「舌磨き」があります。舌をブラシで磨くと舌粘膜が傷つくからです。
舌磨きが良くない理由は、『舌磨きは歯磨きでやってはダメ。コットンにあるものをつけて磨く方法とは?』をご参考にしてください。
舌が白くなる
厚い舌苔ができる原因は、、、
1. 唾液の分泌量の減少(加齢、ストレスなど)
2. 薬の副作用(降圧剤、安定剤、睡眠誘導剤など)
3. 胃腸の疾患や不調(便秘、下痢)
4. 喫煙(ヘビースモーカー)、飲酒
この写真のように、健康な人でも多少は白く膜が張っているように見えます。舌が少し白いのは、舌乳頭は細く先がとがっていて、食事によって簡単に傷つきやすく角化をするからです。
ところが、人によっては、角化ではなく、舌に苔ができたように真っ白くなっていることがあります。いわゆる舌苔(ぜったい)というものです。
舌苔ができる場合は、舌の中央部から奥に多くできているのではないでしょうか?詳しくは『舌が白い人は舌苔です。舌苔を取り除く5つの方法とは?』をご参考にしてください。
この苔を舌苔(ぜったい)といいます。
舌が白くなっている人の多くが、舌苔(ぜったい)を取ろうと舌磨きをします。ところが、数時間すると、すぐに元の白い舌に戻ってしまいます。
どうしてだと思いますか?
じつは、舌の苔の正体は、「カンジダ菌」というカビの一種の菌です。
こういうと、ビックリするかもしれませんが、カンジダ菌は誰の口の中にも存在する「常在菌」ですのでご安心ください。ふつう健康な人でも、カンジダ菌は、皮膚、腸管、女性の生殖器周辺にあります。
カンジダ菌は病原性が弱く、健康な状態では舌に苔を作ることはありません。しかし、そのような弱い菌がどうして頑固な苔を作れるのでしょう?
口腔カンジダと舌苔の違い
口腔カンジダ症は、口腔感染症の一種で主にカンジダ・アルビカンスという真菌(かび菌)によっておこります。口腔カンジダには、急性と慢性があり、舌など口腔粘膜に痛みを生じたり味覚障害になることも。
口腔カンジダ症になると、舌に強い痛みを感じるほかに、舌苔(ぜったい)ができることがあります。口腔カンジダ症でできた白い舌苔はガーゼでふき取ることができますが、拭き取ると、赤くなったり、びらんができたりするので良くありません。
また、舌苔ができていないのに、舌が赤くなりヒリヒリする場合も口腔カンジダ症のことがあります。このように口腔カンジダ症が疑われる場合は、口腔外科もしくは歯科を受診されることをおすすめします。
しかし、通常の「舌苔」の場合は、舌が白くなっても、痛みを生じることはほとんどありません。まれに、痛みを感じるケースもありますが、その場合の原因は口腔乾燥によるものや、舌苔による不快ストレスが「舌痛症」の原因になっていることがあります。
舌苔と口腔カンジダの大きな違いは、舌苔は舌の奥に苔ができやすい。ところが、カンジダは、舌全体が白くなったり斑紋状に白くなります。他にも舌がただれるなど「びらん」が出来るのも特徴です。
カンジダを放置するのは良くありませんので、気になったら口腔外科や歯科を受診されることをおすすめします。
偽膜性(ぎまくせい)カンジダ症
舌粘膜に白い苔ができるのが、偽膜性カンジダ症です。一般的に多いカンジダ症で、病気や疲労から免疫力が低下したときに突然、舌に苔ができるのが特徴的です。また、偽膜性カンジダ症の場合には、ほとんど痛みもありません。
舌の苔は、ガーゼでも容易にふき取ることが可能ですが、ふき取った後に発赤やびらんができることがあるので、ご自分で舌苔を除去するのはおすすめではありません。
萎縮性(いしゅくせい)カンジダ症
萎縮性カンジダ症の場合は、偽膜性カンジダ症のように舌苔ができ白くなることはありません。萎縮性カンジダ症になると、舌のブツブツ(舌乳頭)が小さくなり舌粘膜がツルツルになります。
舌がヒリヒリとしたり強い痛みを感じるのが特徴です。また、味覚障害をおこすこともあります。
口腔カンジダ症を予防するために
舌の苔を作っているのが、カンジダ菌です。
でもカンジダ菌は誰もが持っている常在菌の一つ。それなのに、悪さをすることがあるのです。
何か納得できませんよね。それは…
カンジダ菌が悪さをするのは、カンジダ菌が異常繁殖したときです。
健康な人の口には、善玉菌や悪玉菌など多くの菌があります。健康な状態では、それらの菌はバランスをとって生きています。菌バランスの取れた状態が口の健康にも良い。体の常在菌もそうですよね。
ところが、この菌のバランスがくずれると、病気を引き起こします。
たとえば、虫歯も歯周病もそうです。虫歯菌が増えすぎると虫歯になります。たとえ虫歯菌があっても、少数だったら何の害もありません。
同じように、カンジダ菌も増えすぎると悪さをします。それが、「口腔カンジダ症」。
口腔カンジダ症の主な症状としては、
- 口内にクリーム状の斑点ができる。
- 唇の端にひび割れができる。(口唇炎)
- 舌が赤くなり痛みがある。舌が平滑になる。
口腔カンジダ症には、舌に苔ができ真っ白くなる偽膜性カンジダ症と粘膜が赤くなりヒリヒリする萎縮性カンジダ症があります。
舌が白くなっていなくても、舌がヒリヒリする場合にはカンジダ症が疑われます。舌がピンクだからといって安心できません。また、口内炎だと思っていても、舌の痛みが2週間以上も続く場合は、舌がんの場合があるのでご注意ください。詳しくは、『舌にガンができた?それとも口内炎?見分ける方法と注意点とは?』をご参考にしてください。
それでは、どんなときにカンジダ菌が異常繁殖するのでしょう?
口腔カンジダの原因
口腔カンジダ症になる要因
- 抵抗力が弱ったとき(高齢、病気、妊娠、疲労、ストレスなどで抵抗力が落ちたとき)
- ステロイド剤、真菌剤、抗生物質を長期間服用
- 癌治療
- 糖尿病
- HIV感染症
- ドライマウス(唾液の減少や口呼吸による口腔の乾燥)
- 義歯の不衛生
- 口内炎
- 口腔内の不衛生(歯磨き不足)
引用:日本歯科医師会・東京歯科医師会障害研修セミナー 意外に多い口腔カンジダ症
カンジダ症になる原因で多いのは抵抗力が落ちたときです。体力が落ちると抵抗力も落ちるので、カンジダ菌が異常繁殖しやすくなります。
舌にびっしりと厚い苔ができている場合には、軽く考えないで歯科や内科を受診されることをお勧めします。詳しくは『舌にびっしりこびりついた舌苔を取る方法を教えます。』をご参考にしてください。
カンジダ菌は口腔常在菌で、菌バランスがとれている状態では害がありません。ところが、菌バランスが崩れると過剰に増え悪玉菌に変わりカンジダ症を発症します。
カンジダ菌は口腔内の常在菌の一種で、普段はある程度以上は菌数が増えないように他の菌と共存しています。しかし、副腎皮質ステロイド薬の投与や糖尿病、全身衰弱などにみられる免疫力の低下している状態、唾液量の減少、長期間にわたる抗菌薬の服用などにより、常在菌間のバランスが崩れ、カンジダ菌が異常に増殖し、病原性を発揮することにより発症します。
カンジダは常在菌
「口腔カンジダにうつらないだろうか?」そのように心配していませんか。
カンジダ菌はカビ(真菌)の一種で、誰もが持っている常在菌の一つです。ですから、健康な人の口の中にも20%程度存在しています。
ところが、病気などで免疫力が低下すると、口内フローラのバランスが崩れカンジダが異常に増加するようになります。(口腔カンジダ症)
ステロイド治療中の患者さんでは、口腔細菌中のカンジダの割合は約80%、膠原病患者では約50%にも増えるようです。
元々、カンジダを持っていない人は少ないかもしれませんが、もしカンジダを持っていなければ、カンジダが増えている人とキスなどするとうつるかもしれません。
発症しやすい人
常在菌としてカンジダが存在している場合は、うつる心配はありません。しかし、カンジダを持っていない場合にはうつります。その場合でも、特にうつりやすいのは、体力や免疫が低下しているときです。他に、免疫力が低い幼児などもうつりやすいといえます。
成人のほとんどがカンジダを保有しています。しかし、カンジダ症にならないのは、口腔細菌フローラのバランスが保たれているからです。カンジダ症は、口腔細菌のバランスが崩れたときに起きます。
口腔細菌のバランスが崩れカンジダ症になるのは、次のような人が多いです。
免疫力の低下。病気やステロイド剤治療を受けていることで免疫が低下すると、カンジダが増えて悪玉菌に変わります。このことを日和見感染(ひよりみまんせん)といいます。日和見感染すると、普段は問題がない菌でも異常に増えることで口腔カンジダのようなトラブルが起きます。
ドライマウス。唾液には抗菌作用があり、また、舌など口腔粘膜を保護する働きがあります。ところが、唾液が少ないとか口呼吸の人の場合には、菌などから粘膜を守ることができなくなり、カンジダ症を引き起こしやくなります。
消毒薬の使いすぎ。消毒薬の含まれるうがい薬を長期間使っていると、常在菌まで殺菌することになります。そのことで口腔細菌バランスが崩れカンジダ症を引き起こすことがあります。うがい薬には、ヨードやアルコール、抗生物質が含まれるものがあるので、正しい使用方法についてはお医者さんにご相談されると良いでしょう。
口腔カンジダ症の治療
病院で口腔カンジダ症と診断されると、抗真菌薬を含むうがい薬や塗り薬が処方されます。ケースによっては、内服薬を飲むこともあります。
一般的に口腔カンジダ症の治療方法は、口腔内の清掃から始まります。その次は、抗生物質である抗真菌薬を含むうがい薬や塗り薬で治療します。
しかし、抗真菌薬がカンジダ症の原因になっていたり、抗真菌薬の服用によって悪化する場合は、服用を中止することがあります。
口腔内の清掃、抗真菌薬を含むうがい薬や塗り薬を使用しますが、時に抗真菌薬の内服を必要とすることもあります。
口腔ケアが大切
菌は汚い環境が好きですから、義歯をはめたまま睡眠をとるのはよくありません。義歯は外して清掃剤に一晩付けるのが良いです。
たとえ忙しくても、朝の歯磨きをサッサと済ましてしまうとか、就寝前に歯磨きをしないのは、一番よくありません。菌にエサを与えるようなものです。
口腔カンジダ症を予防するためには、義歯や口腔内を清潔にして菌が増えないようにすることが大切です。具体的な予防の方法は…
口腔カンジダ症の予防方法
- 時間をかけて丁寧に歯磨きを行なう。
- 喉と口のうがいを小まめに行い、口腔内の清潔を維持する。
- 口腔内を乾燥させないように、小まめに水を口に含む。
- 唾液を出すように工夫する。
- ストレスをためない。リラックス状態を作る。
- 一番大切なことは、健康を維持して日頃から免疫力をつけておくことです。
これらを行なうことで、かなりの予防になると思います。でも、さらに予防効果を上げるためには、アルカリイオンの口臭予防歯磨き粉「美息美人(びいきびじん)」でうがいを行なうことをお勧めします。
まとめ
口腔カンジダは、常在菌のカビ(真菌)が原因で起こる症状です。しかし、発症すると、舌苔ができたり、舌が痛くなる、味覚障害を起こすなど多くのトラブルの原因になります。
口腔カンジダの原因としては、口腔ケアが不十分、抗菌薬の長期投与、糖尿病、口腔乾燥、免疫機能の低下などがあります。ですので、口腔カンジダを発症したら病院にかかることはもちろん大事ですが、予防のためにも普段からの口腔ケアの徹底が大切です。