監修:歯科衛生士 上林ミヤコ/執筆:上林登(口腔ケアアンバサダー)
このページは「歯のぐらつき(動揺歯)」に特化して、30秒セルフ判定→受診の目安→固定/再生・負荷コントロールまでを再現性ある手順で解説します。
※「歯磨きで治る?」といったQ&A意図は対象外です(Q&Aは専用ページへ)。自宅ケアの詳細オペは 自宅ケア完全ガイド を参照してください。
30秒セルフ判定|動揺歯の緊急度と最短ルート
下の3ステップで現在地を簡易確認(無理に歯を揺らさない/迷ったら安全側)。
- 歯ぐきの赤み・腫れ・出血あと・膿の有無を鏡で確認
- 清潔な丸い柄などで横方向にごく軽く触れて違和感を確認(大きく揺らさない)
- 軽く噛んだときの痛み・浮いた感じの有無を確認
判定A(軽度の可能性)
- 明確な横揺れは感じない/噛む痛みは弱い〜なし
- 腫れ・出血は軽度
→ 清掃性の確保とやわらかい食事・食いしばり対策を開始。1〜2週間以内に検査予約。
判定B(中等度の可能性)
- 横に揺れる感じがある(目視でわかる/約1mm前後)
- 噛むと痛い・浮いた感じが続く
→ 数日以内に受診。基本治療+咬合調整/暫間固定の検討。
判定C(緊急受診)
- 膿・発熱・急な腫れの拡大/短期で動揺が増えた
- 上下方向にも動く感じ(脱臼感)/外傷後
→ 当日〜翌日に受診。自己処置は最小限・安静を優先。
受診の目安
当日〜翌日に受診(緊急)
- 強い痛み/上下にも動く感じ/膿・発熱
- 短期間で動揺が悪化/外傷・大きな腫れ
数日以内に受診
- 横揺れが目視でわかる・噛むと痛い
- 食事がしにくい/補綴が外れた歯が揺れる
1〜2週間観察可
- 明確な揺れなし・違和感が時々
- 寝不足や食いしばりの翌朝だけ“ふわっと”
強い力で揺らして確認するのは避けてください。
動揺歯の原因とメカニズム
歯周炎による支持組織の破壊
プラーク由来の炎症で歯周組織・骨が吸収し、歯周ポケットが深くなると動きやすくなります。放置は喪失リスクを高めます。
厚労省 e-ヘルスネット:歯周病/日本歯周病学会ガイドライン2022
咬合性外傷(負荷過多)・補綴不適合
食いしばり・噛み癖・被せ物の不適合などで局所に過度の力が集中しても動揺が出ます。負荷分散(咬合調整・ナイトガード)が有効な場面があります。
外傷・根破折など保存困難な原因
転倒・スポーツ外傷や根破折では緊急評価が必要です。保存困難な場合は再建(ブリッジ・義歯・インプラント)を含めて検討します。
動揺度と対処の早見表
| 動揺の目安 | 主な背景 | 自宅での生活管理 | 歯科での対応 | 見込みの考え方 |
| ほぼ揺れない/違和感が時々 | 早期歯周炎/一時的な過負荷 | 歯間清掃→やさしいブラッシング、就寝前は少量1回すすぎ、硬い物・片側噛み回避 | 検査・スケーリング(必要でSRP)・生活指導 | 数週間で安定しやすい→維持 |
| 横揺れが目視でわかる(約1mm) | 中等度歯周炎/咬合性外傷/補綴不適合 | 清掃性の確保・就寝時ナイトガード・片側噛み回避 | 基本治療+咬合調整/暫間固定/外科・再生の適応評価 | 数週〜数か月で安定化を目指す |
| 目立つ揺れ+噛むと痛い | 進行歯周炎/垂直性骨欠損/根破折 等 | 無理に噛まない・歯を揺らさない・清潔保持 | 急ぎ精査/消炎→固定(暫間〜症例で長期)/外科・再生を慎重判断 | 保存困難なら再建(ブリッジ/義歯/インプラント) |
「上下にも動く」「痛み・膿・発熱」は緊急域です。
固定の考え方(暫間〜長期)
目的と適応
清掃性を上げ、炎症と負荷をコントロールして安定の足場をつくることが目的です。中等度以上の動揺・痛み・清掃困難が指標になります。
流れと期間の目安
- 基本治療(スケーリング/SRP)→消炎後に暫間固定→再評価→解除 or 継続
- 期間は症例差が大きく、数週〜数か月(再評価で決定)
費用の考え方
保険/自費で幅があります。材質・範囲で差が出るため、事前に見積・適応を確認してください。
歯周組織再生の位置づけ
適応と前提
垂直性骨欠損などで適応を検討。禁煙・清掃性の確保・咬合管理が前提条件です。
期間・費用の目安
期間は一般に6〜12か月スパンで評価。費用は症例・術式・医院方針で大きく変動します(事前説明で確認)。
咬合負荷のコントロール
- 就寝時のナイトガード/日中の食いしばり気づき法
- 硬い食品・片側噛み・長時間の同一姿勢を回避
- 補綴物の不適合は調整・再製作を検討
自宅の生活管理(清掃性と負荷の調整)
- 歯間清掃を先に→やさしいブラッシング(境目を小刻み)
- 就寝前は少量1回すすぎで有効成分を残す
- 痛む日は弱い力×短時間に切り替え、無理をしない
手順や道具選びの詳細は 自宅ケア完全ガイド(歯肉炎〜初期歯周炎) を参照。
1〜4週間アクションプラン(動揺歯向け)
- 0〜3日:セルフ判定→症状記録→受診予約。清掃はやさしく、無理に噛まない。
- 〜1週:検査・スケーリング/SRP。家庭では歯間清掃を毎日、寝る前は少量すすぎ。
- 〜2週:咬合指導に沿って負荷を調整。必要に応じてナイトガード。
- 〜4週:再評価。動揺が残る場合は暫間固定や再生の適応を相談。
よくある状況別Q&A(動揺歯)
固定はいつ外しますか?
消炎・清掃性の改善・負荷安定を再評価して判断。外した後もメンテと負荷管理が重要です。
動揺がある歯で食べて良いものは?
やわらかい食品を中心に、片側だけで噛まない。痛みが強い時は無理をせず受診を前倒しに。
口臭が強くなった気がするのはなぜ?
深いポケット内の細菌によりVSC(揮発性硫黄化合物)が増えやすくなります。基本治療と清掃性の改善が有効です。




