最終更新:2025-11-02|監修:歯科衛生士 上林ミヤコ/執筆: 上林登(口腔ケアアンバサダー)
今すぐ痛みを和らげたい方へ。まずは安全な応急処置で“今日”を乗り切り、必要なときに受診しましょう。以下は診療の代替ではありません。
まず結論|60秒でできる応急処置
患部側の頬の上から、タオル越しに冷却。
氷を直接当てたり、氷水を含むのは刺激で悪化しやすいので避ける。
フロスで挟まった食片を除去 → ぬるま湯に食塩少量でやさしくうがい。
ロキソプロフェン or アセトアミノフェンを用法・用量どおりに。
詳細は下の「市販薬ミニ表」を参照。
※妊娠・授乳中、持病や併用薬がある場合は薬剤師に相談。
- 患部を温める
- 刺激の強いうがいを繰り返す
- アスピリン等を歯ぐきに当てる(粘膜障害の恐れ)
顔の腫れ/発熱/口が開けにくい・飲み込みにくい・息苦しい・痛みが鎮痛薬で全く引かない。
※本カードは一般的情報で診療の代替ではありません。症状が続く/悪化する場合は受診してください。
※上のカードどおりに「外から冷やす → 洗浄 → 市販薬 → NG行動確認 → 赤旗チェック」の順で実行してください。
- Mayo Clinic|Toothache: First aid(応急処置/アスピリンを歯ぐきに置かない)
- NHS|Toothache(塩水うがい・市販鎮痛薬・受診の目安/赤旗)
- 第一三共ヘルスケア|ロキソニンS(用法・用量・添付文書) :製品詳細 /添付文書PDF
※国内OTCの服用は各添付文書に準拠してください。
市販薬の選び方(要点と安全な使い分け)
| 成分 | 代表例 | 用法・用量(15歳以上) | 注意ポイント |
|---|---|---|---|
| ロキソプロフェン | ロキソニンS*1 | 1回1錠、1日2回まで。症状再発時は3回目可。服用間隔4時間以上。 | 胃腸障害に注意。なるべく空腹時は避ける。15歳未満は服用不可。 |
| アセトアミノフェン | タイレノールA*2 | 1回1錠、1日3回まで。服用間隔4時間以上。 | 肝機能障害・多量飲酒は要注意。15歳未満は服用不可。妊娠・授乳中は医師・薬剤師へ相談。 |
※自己判断で薬を歯ぐきに当てないでください(アスピリンを患部に置くのは不可)。*3
症状別の見分け方
冷たい物でしみる:知覚過敏/初期むし歯
- キーンと一瞬だけしみるのが特徴。歯ぐき下がり・エナメル摩耗・初期むし歯などが原因。
- 応急処置:刺激物(冷・熱・甘)を避ける。ブラッシングはやさしく。
- 受診の目安:数日続く/範囲が広がる場合は歯科へ。
噛むと痛い:高い詰め物/歯根膜炎/歯の亀裂
- 噛み締め時にズキッ。詰め物の高さ不適合、歯のヒビ(クラック)などで起こりやすい。
- 応急処置:硬い物を避け、患部側で噛まない。
- 受診の目安:早めに歯科へ。放置で悪化しやすいタイプです。
夜ズキズキする:歯髄炎(神経の炎症)/感染/食いしばり
- 横になると拍動痛が強まるのが特徴。温かい飲食で悪化することも。
- 応急処置:上の即答カードを実施。就寝時は枕をやや高く。
- 受診の目安:当日〜翌営業日までに歯科へ。
腫れ・発熱がある:膿瘍/蜂窩織炎の可能性
- 顔の腫れ、飲み込みにくい、口が開きにくい、発熱を伴う場合は重症化のサイン。
- 応急処置:外から冷却。温めない。刺激の強いうがいは避ける。
- 受診の目安:至急受診。夜間は救急窓口へ相談。
むし歯じゃない歯痛の代表例
副鼻腔炎による関連痛
頬骨付近の圧痛・前屈で増悪・鼻症状を伴うことがあります。上顎奥歯が複数本同時に痛むときは疑います。→ この場合は耳鼻咽喉科も検討。
三叉神経痛(発作的な電撃痛)
触れるだけでビリッと鋭い痛みが走るタイプ。持続は短いが反復します。→ 神経内科・脳神経外科へ相談。
噛み合わせ・筋痛(顎関節・咬筋の問題)
朝のこわばり・頬のだるさ・歯の擦り減りがヒント。ストレスや食いしばりが関与。→ 歯科(口腔外科)で相談。
歯の亀裂(クラックトゥース)
噛むとピンポイントで痛い/温冷でしみる。レントゲンで見つかりにくいことも。→ 早期受診が推奨。
食事と生活の注意
避ける飲食・行動(甘い物/極端な温度/喫煙)
- 砂糖の多い飲食、氷入りの冷飲・熱すぎるスープは刺激になります。
- 喫煙は治りを遅くします。
痛みを悪化させにくい代替メニュー(やわらかい・常温・反対側で咀嚼)
- おかゆ・スクランブルエッグ・温度が極端でないスープなど。
- 患部の反対側で噛み、ゆっくり食べる。
就寝時のコツ(枕高め・ナイトガード相談)
- 頭を少し高くすると拍動痛が和らぐことがあります。
- 食いしばりが疑われる場合は、歯科でマウスピースを相談。
受診の目安と探し方
今すぐ/当日中/数日以内の目安
- 今すぐ:顔の腫れ・発熱・飲み込みにくい・開口障害・外傷後の痛み。
- 当日中:夜間の拍動痛・市販薬で抑えられない強い痛み。
- 数日以内:冷温痛が持続/噛むと痛い/欠けた・詰め物が取れた。
受診先の選び方(一般歯科/口腔外科/救急)
- 多くは一般歯科でOK。顎の脱臼・外傷・大きな腫れは口腔外科を検討。
- 夜間や休日で重症の疑いがある場合は救急外来に相談。
診察がスムーズになる事前メモ(痛みの型・発症時期・服薬)
- いつから/どんな時に痛む(冷たい・噛む・夜間など)
- 服用した薬(製品名と回数)・アレルギー・既往歴
参考文献
- American Dental Association(Dental Emergencies/Toothacheの応急処置):公式ページ
- Mayo Clinic「Toothache: First aid」:公式記事
- NHS「Toothache」(受診目安・塩水うがい・食事の注意):公式ページ
- Cleveland Clinic「Toothache: Symptoms, Causes & Remedies」(冷却など):公式ページ
- 第一三共ヘルスケア「ロキソニンS」:製品情報 / 添付文書PDF
- タイレノールA(アセトアミノフェン)用法・用量:公式ページ / 販売元(英語)
※当ページは一般的な情報の提供を目的としています。症状が続く・悪化する・赤旗サインがある場合は、至急医療機関を受診してください。
専門家に聞く!よくある質問Q&A
歯の痛みについて、専門家に寄せられるよくある質問とその回答を紹介します。ここにある対処は一時的な応急処置です。痛みが続く・悪化する・赤旗サイン(顔の腫れ/発熱/飲み込みにくい・口が開きにくい等)があるときは、できるだけ早く受診してください。
夜、眠れないほど痛い時は?
外から冷やし、塩水でやさしくうがい。市販薬を用法どおりに。枕を少し高くして休み、翌営業日に受診を。 ※顔の腫れ/発熱/飲み込みにくい・口が開けにくい等の赤旗サインがあれば至急受診。
歯髄炎かも?見分け方と今できること
冷たい/熱い刺激の後も30秒以上痛みが残る、夜間のズキズキする自発痛、温かい飲食で悪化——は (不可逆性)歯髄炎のサイン。応急処置は「外から冷却・鎮痛薬の用法遵守・就寝時は枕高め」。 多くは原因治療(根管治療など)が必要になります。 → 根管治療の流れと受診目安
急に痛みが消えた…神経が死んだ?放置は危険?
痛みが急に軽くなるのは歯髄壊死の可能性も。症状が和らいでも感染源は残り、 後から膿瘍・顔の腫れ・発熱に進むことがあります。赤旗(腫れ・嚥下/開口困難・発熱)が出たら至急受診。 軽快しても早めの歯科受診で原因確認を。
カロナールとロキソニン、どちらがよい?
体質・既往歴で適否が変わります。一般にロキソプロフェンは鎮痛力が強め、アセトアミノフェンは胃腸への刺激が少なめとされます。 迷う場合は薬剤師に相談を。→ 本文上部の市販薬ミニ表参照
むし歯じゃないのに痛いのはなぜ?
副鼻腔炎・三叉神経痛・噛み合わせ・歯のヒビなど多様です。自己判断せず歯科で評価を受けましょう。
副鼻腔炎の痛みと歯の痛み、どう見分ける?
上顎の奥歯が複数同時に鈍く痛む/前屈で増悪/鼻症状がある→副鼻腔炎の可能性。 歯の一点に響く噛む痛みや、温冷での持続痛は歯のトラブルを疑います。 判断が難しいときは歯科で評価し、必要なら耳鼻科も併診。 → 副鼻腔炎で歯が痛い?見分け方と受診の流れ
歯痛用ジェルや貼付剤は使っていい?
成分や用法により異なります。粘膜へ直接鎮痛薬を当てる使い方は避けてください。製品表示と薬剤師の助言を優先。
痛みを予防するための生活習慣とセルフケア
歯の痛みを予防するためには、日々の生活習慣とセルフケアが欠かせません。以下に、具体的な方法を紹介します。
毎日の正しい歯磨きとフロスの使い方
- 正しい歯磨き方法:
- ブラッシングの頻度:1日2回、朝と夜に歯を磨くことが推奨されます。
- ブラシの選び方:柔らかい毛先の歯ブラシを選び、歯茎に優しく当てて磨きます。
- 磨き方:歯と歯茎の境目を45度の角度でブラシを当て、小刻みに動かして磨きます。
- フロスの活用:
- デンタルフロスの使用:歯と歯の間に挟まったプラークや食べかすを取り除くために、毎日フロスを使用します。
- 正しい使い方:フロスを歯の間に丁寧に滑り込ませ、優しく動かして汚れを取り除きます。
食生活で気を付けるべきポイント
- 糖分の摂取を控える:糖分は虫歯の原因となるため、過剰な摂取を避けます。
- バランスの良い食事:カルシウムやビタミンCを豊富に含む食材を積極的に摂取し、歯と歯茎の健康を保ちます。
- 間食の管理:間食を控え、食事の間に口を休めることで、口腔内の酸性度を低下させます。
ストレスと歯の健康の関係
- ストレスの影響:ストレスは歯ぎしりや食いしばりの原因となり、歯や歯茎に負担をかけます。
- ストレス管理:適度な運動やリラクゼーション法を取り入れ、ストレスを軽減することで、歯への悪影響を防ぎます。
定期検診の重要性とメリット
- 定期的な歯科検診:半年に一度の歯科検診を受けることで、早期に虫歯や歯周病を発見し、適切な治療を行うことができます。
- プロフェッショナルなクリーニング:歯科医師や衛生士による専門的なクリーニングで、家庭では取り切れない汚れを除去します。
- 予防接種やフッ素塗布:必要に応じて、虫歯予防のためのフッ素塗布やシーラント処理を行います。
これらの生活習慣とセルフケアを継続的に実践することで、歯の痛みを予防し、健康な口腔環境を維持することができます。
まとめ:痛みから解放され、快適な毎日を取り戻そう
歯の痛みは日常生活に大きな影響を与えるだけでなく、心身にもストレスをもたらします。しかし、適切な知識と早期の対応、そして日々のケアによって、その痛みを軽減し、健康な口腔環境を維持することが可能です。
早期対応の大切さ
痛みを感じたら、すぐに対処することが重要です。初期の段階であれば、簡単な応急処置や早期の治療で痛みを和らげることができます。放置すると、痛みが悪化し、治療が困難になる場合もあります。
専門家からのメッセージ
歯の痛みは、自分だけで抱え込まず、専門の歯科医師に相談することが最善です。専門家は、痛みの原因を正確に診断し、最適な治療法を提案してくれます。また、日々のケア方法についてもアドバイスを受けることで、再発を防ぐことができます。
次の一歩を踏み出すために
痛みから解放され、快適な毎日を取り戻すためには、以下のステップを踏み出しましょう。
- 症状の確認:セルフチェックリストを活用して、痛みの原因をある程度特定します。
- 応急処置の実施:自宅でできる対処法を試し、痛みを和らげます。
- 歯科医師への相談:痛みが続く場合や悪化する場合は、早めに歯科医院を受診します。
- 日々のケアの見直し:正しい歯磨きや食生活の改善、定期検診を習慣化します。
歯の痛みは誰にでも起こり得る問題ですが、適切な対応とケアによって、その影響を最小限に抑えることができます。この記事が、あなたの痛みからの解放と健康な口腔環境の維持に役立つことを願っています。





