その他の記事

シェーグレン症候群とは?口・目の乾燥の原因と受診の目安、口腔ケアまで徹底解説【専門家監修】

こんにちは、口腔ケアアンバサダー(社団法人 日本口腔ケア学会認定)の上林登です。この記事は、歯科衛生士 上林ミヤコ監修のもと、AIアシスタント「ChatGPT(OpenAI)」の協力を得て執筆しています。

「口がカラカラに乾く」「目薬をさしても目がゴロゴロする」「シェーグレン症候群と書いてあって不安」──そんな思いでこのページにたどり着かれたかもしれません。

シェーグレン症候群は、自己免疫が関わる全身性の病気で、口や目の乾燥、関節痛、倦怠感などが続くことがあります。ただし、口の乾き=シェーグレン症候群とは限りません。薬の副作用や更年期、ストレスなど、ドライマウスの原因は他にもたくさんあります。

この記事では、公的機関(難病情報センターや厚生労働省など)の情報をもとに、シェーグレン症候群の「全体像」をやさしく整理しつつ、口臭・ドライマウス専門サイトならではの視点で「口の乾きとの付き合い方」をお伝えします。

※診断や治療は必ず主治医と相談してください。この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を代替するものではありません。

まず結論:シェーグレン症候群は「自己免疫による乾燥の病気」。口の渇きだけで決めつけないで

シェーグレン症候群の一言まとめ

シェーグレン症候群は、自分の免疫が、唾液腺や涙腺などを攻撃してしまう自己免疫疾患です。その結果、

  • 口が乾く(ドライマウス)
  • 目が乾く(ドライアイ)
  • 関節痛・強い疲れ・皮膚やその他の粘膜の乾燥

といった症状が続きます。日本では指定難病の一つとして扱われ、リウマチ膠原病内科や眼科、口腔外科などで診断・治療が行われています。

こんな人はシェーグレン症候群を一度は疑ってほしいサイン

「口が乾く」だけであれば、多くは生活習慣や薬の副作用、更年期などで説明できるケースが多いです。ただし、次のようなサインが複数あてはまるときは、シェーグレン症候群など自己免疫疾患の検査が役立つことがあります。

  • 3か月以上、強い口の乾燥が続き、水が手放せない
  • 目の乾き・ゴロゴロ感・異物感が長く続き、点眼しても改善しにくい
  • 唾液腺(耳の下・あごの下)が繰り返し腫れたり、痛むことがある
  • 関節痛、原因不明のだるさ、発熱、レイノー現象(手足の冷え・色の変化)など全身症状も気になる
  • 虫歯・歯周病・口内炎が繰り返しやすくなった気がする
  • 目・口に加えて、皮膚・鼻・のど・腟など、体のあちこちの乾燥が目立ってきた
  • 自己免疫疾患(リウマチ・膠原病など)をすでにもっている/家族に多い

こうしたサインは、あくまで「受診のきっかけ」にすぎません。「シェーグレンかどうか」を決めるのは検査と専門医の総合判断です。自己判断で不安を膨らませ過ぎないことも同じくらい大切です。

この記事の位置づけ:公的情報をかみくだき、口腔ケア目線を足した“橋渡し役”

シェーグレン症候群については、

  • 難病情報センター
  • 厚生労働省研究班の診断基準資料
  • 大学病院・医療機関の解説ページ

など、医学的に信頼できる情報源がすでに整備されています。一方で、専門用語が多く「結局、自分は何から始めればいいの?」と迷う方も少なくありません。

そこで当サイトでは、

  • 病気そのものの解説は、公的情報の要約+リンクで補う
  • 「口の乾き・口臭・虫歯リスク」など、口腔ケアに特化した部分を深掘りする
  • シェーグレンではないドライマウスの代表的な原因は、別記事で詳しく解説する(役割分担)

という方針で整理しています。この記事は「シェーグレン症候群って何? 口の乾きとどう関係するの?」を全体像としてつかむための“ハブ記事”だと考えてください。

シェーグレン症候群とは?(公的情報をやさしく要約)

どんな病気?──自己免疫・膠原病・指定難病

シェーグレン症候群は、涙腺や唾液腺など、体の中の「外分泌腺」に炎症が起こる自己免疫疾患です。免疫システムが誤作動し、自分の組織を攻撃してしまうタイプの病気の一つで、膠原病の仲間に入ります。

代表的な変化は、唾液腺・涙腺の働きが落ちること。これにより、

  • 唾液が減って口が乾く
  • 涙が減って目が乾く

という症状が出やすくなります。さらに、全身の関節や内臓などにも炎症が及ぶことがあり、関節リウマチや肺・腎臓・神経・血液(リンパ腫など)の合併症が話題になることもあります。

どんな人に多い?──中高年女性に多いが、誰でもなりうる

公的な調査では、シェーグレン症候群は中高年の女性に多いとされています。発症のピークは40〜60代ごろとされ、女性が圧倒的に多い病気です。ただし、

  • 若い世代(20〜30代)でも発症することがある
  • 男性の患者さんも一定数いる

ことが報告されています。「女性・中高年じゃないから大丈夫」とは言い切れませんし、逆に「自分は年齢・性別がドンピシャだから絶対そうだ」と決めつけてしまう必要もありません。

原因として分かっていること/まだ分からないこと

シェーグレン症候群のはっきりした原因は、まだ完全には解明されていません。現時点で分かっているのは、

  • 体質(遺伝的な要因)
  • ホルモンバランスの変化(特に女性ホルモン)
  • 何らかのウイルス感染など、外的なきっかけ

が組み合わさり、免疫が暴走してしまうのではないか、ということです。

「ストレスが原因ですか?」とよく聞かれますが、ストレスだけで発症するとは考えられていません。ただ、ストレスは免疫や自律神経に影響するため、症状を悪化させる要因になりうるとされています。

シェーグレン症候群の主な症状

口の渇き(ドライマウス)と口臭・虫歯リスク

シェーグレン症候群で多くの方が最初に気づくのが、口の乾きです。具体的には、

  • パンやビスケットが飲み込みにくい
  • 夜間・起床時に口がネバネバする、カラカラになる
  • 水やお茶が手放せない
  • 話していると舌や唇が貼りつきやすい

といった形で現れます。唾液には、口の中を洗い流し、細菌の増殖を抑える「自浄作用」があります。そのため、唾液量が減ると、

  • 虫歯が一気に増えやすくなる
  • 歯周病が進行しやすくなる
  • 舌苔が厚くなり、口臭(卵の腐った臭い・生ごみのような臭いなど)が強くなる
  • 口内炎・ヒリヒリ感・しみやすさが続く

といった、「二次的なトラブル」が起こりやすくなります。

口臭については、シェーグレン症候群そのものではなく、「唾液不足+舌苔+歯周病」が重なって強くなるケースが多い印象です。これは、シェーグレンがない方のドライマウスでも同じですので、「口臭がある=シェーグレン」というわけではありません。

目の乾き(ドライアイ)と日常生活への影響

涙の分泌が減ると、

  • 目がゴロゴロする、砂が入ったような感じがする
  • 光がまぶしく、目を開けているのがつらい
  • 長時間のスマホ・PCがとにかくしんどい
  • コンタクトレンズが合わなくなってきた

といったドライアイ症状が出やすくなります。シェーグレン症候群では、目と口の乾きがセットで長く続くのが特徴の一つです。目の症状については、眼科の専門的な評価(涙液量・角膜の状態など)が欠かせません。

全身症状(関節痛・倦怠感など)と合併症

シェーグレン症候群は、乾燥だけの病気ではありません。人によっては、

  • 関節痛(手指・膝など)
  • 強い倦怠感・微熱
  • 皮膚の乾燥・発疹
  • 肺・腎臓・神経などの臓器の異常

が出ることもあります。また、長い経過の中で、悪性リンパ腫などの合併症が話題になることもあります。

ここは、歯科や口臭の専門家だけではフォローしきれない領域です。少しでも「全身がおかしい気がする」と感じたら、早めにリウマチ膠原病内科や総合内科に相談してください。

シェーグレン症候群はどう診断される?

「もしかして?」と思ったときの受診先

シェーグレン症候群が心配なとき、まずどこを受診すべきか迷う方が多いです。一般的には、

  • 全身症状も含めて相談したい → リウマチ膠原病内科・内科
  • 目の症状がつらい → 乾燥性角結膜炎に詳しい眼科
  • 口の乾き・虫歯・口臭が気になる → 歯科(口腔外科)

のいずれか、またはかかりつけ医からの紹介が入り口になります。最終的な診断は、複数の検査結果を総合して決めるため、歯科・眼科・内科が連携するケースも珍しくありません。

病院で行われる主な検査(唾液・涙・血液・画像など)

診断の際には、厚生労働省研究班がまとめた診断基準(改訂版)をもとに、次のような検査が行われます。

  • 唾液の量を調べる検査(ガムテスト・サクソンテストなど)
  • 涙の量を調べる検査(シルマーテストなど)
  • 血液検査(抗SSA/Ro抗体、抗SSB/La抗体、リウマチ因子、免疫グロブリンなど)
  • 唾液腺の画像検査(超音波、造影など)
  • 小唾液腺生検(耳の下ではなく、口の中の小さな唾液腺を一部採取して顕微鏡で確認)

すべての検査を必ず行うわけではなく、年齢・症状・他の病気との関係を見ながら、必要な検査が選ばれます。

自己判断で決めつけないほうがいい理由

インターネット上には、シェーグレン症候群のチェックリストや体験談が数多くあります。参考にはなりますが、

  • 「口が乾く」「目が乾く」は、シェーグレン以外の原因でも起こる
  • 逆に、シェーグレンがあっても症状が軽く、気づきにくい人もいる

ということも忘れてはいけません。

不必要に不安を膨らませてしまうことも、逆に「自分は違う」と決めつけて受診を遅らせてしまうことも、どちらも避けたいところです。迷ったら、チェックリストは「あくまで受診のきっかけ」と割り切り、主治医に相談するのがおすすめです。

シェーグレン症候群の治療と付き合い方

根本的に「完治」させるのは難しいが、症状は軽くできる

現在の医学では、シェーグレン症候群そのものを完全になくしてしまう治療(いわゆる「完治」)は難しいとされています。ただし、

  • 乾燥症状(口・目・その他)を軽くする
  • 関節痛・臓器の炎症などをコントロールする
  • 将来の合併症リスクを減らす

という意味での「うまく付き合うこと」は十分可能です。治療の目標も、「症状の軽減」「生活の質(QOL)の維持・向上」に置かれます。

乾燥症状への治療(唾液・涙を補う/守る)

代表的な治療・ケアとしては、

  • 唾液分泌を促す薬(唾液腺を刺激する内服薬)
  • 人工唾液スプレー・保湿ジェルなどの外用剤
  • 人工涙液・ヒアルロン酸点眼など、目の保湿
  • 鼻・皮膚・腟などの保湿ケア

などがあります。ここに、日常の口腔ケア(歯磨き・舌ケア・マウスウォッシュの選び方)を組み合わせることで、虫歯・歯周病・口臭のリスクをかなり減らすことができます。

全身症状への治療と、医科歯科連携の大切さ

関節痛や臓器の炎症が目立つ場合は、

  • 鎮痛薬・消炎薬
  • 免疫抑制薬・生物学的製剤

など、リウマチ膠原病内科での専門的な治療が必要になることがあります。治療薬には効果と同時に副作用もあるため、定期的な血液検査や診察がかかせません。

また、シェーグレン症候群では口腔内のトラブル(虫歯・歯周病・口臭・義歯の調整など)が生活の質に直結します。「医科(内科・眼科など)+歯科」の連携は、QOLを守るうえで非常に重要なポイントです。

口臭対策ネット流「口の渇き」とどう付き合うか

シェーグレンがある人の口腔ケアで大事な3つのポイント

シェーグレン症候群がある方の口腔ケアは、一般的な口臭・ドライマウス対策と重なる部分が多いものの、特に次の3つを意識すると負担が少なくなります。

  1. 「こすらない」「短時間」で終えるケアを選ぶ
    乾燥した粘膜はとても傷つきやすい状態です。ゴシゴシ磨き・強いアルコール入りマウスウォッシュの長期使用は、かえってヒリヒリや炎症を悪化させることがあります。舌ケアは「なでるだけ」、歯磨きは「やさしく・細かく・短時間」を意識しましょう。
  2. 唾液の「代わり」と「助っ人」を上手に使う
    人工唾液スプレー・保湿ジェル・アルカリ性の洗浄水などを、「今つらい時間帯」に狙って使うのがおすすめです。水180cc+補助洗浄剤でうがい→やさしいブラッシング→仕上げに水でしっかりすすぐ、という3ステップは、多くの方に共通する安全なベースになります。
  3. 歯科での定期チェックを“保険”として活用する
    虫歯・歯周病・入れ歯の擦れは、乾燥した口の中で一気に悪化しやすい要素です。3〜6か月に一度、歯科でクリーニングとチェックを受けておくと、「気づいたらボロボロ」を防ぎやすくなります。

詳しいドライマウスのセルフケアや口臭対策は、以下の関連記事でより具体的にまとめています。

シェーグレンではない「ドライマウス」の代表的な原因

「シェーグレンが不安で検索したけれど、検査の結果はシェーグレンではなかった」というご相談も多くいただきます。その場合、ドライマウスの主な原因としては、

  • 薬の副作用(降圧薬・抗うつ薬・抗アレルギー薬など)
  • 更年期・ホルモンバランスの変化
  • 口呼吸・いびき・睡眠時の環境
  • ストレス・緊張・長時間の会話やパソコン作業
  • 糖尿病など、その他の全身疾患

といったものがよく見られます。これらは、生活習慣の工夫や薬の調整、歯科・内科でのフォローによって改善していく余地が大きい領域です。

当サイトでは、こうした「シェーグレン以外のドライマウス」については、上記の専門記事で詳しく解説しています。

関連記事の読み分けガイド

  • シェーグレン症候群が気になる人の入口・全体像 → 本記事
    病気の概要・診断・治療の方向性・受診の目安をざっくり把握するためのページです。
  • 「自分のドライマウスは何が原因?」を詳しく知りたい → ドライマウス関連記事
    更年期/薬剤性/口呼吸/全身要因など、タイプ別に切り分けたいときは、ドライマウスの口臭特化記事更年期ドライマウス記事を参考にしてください。
  • 口臭そのものを総合的に立て直したい → 総合ガイド
    舌苔・歯周病・胃腸・ストレスなど、口臭の全体像を整理したい場合は、口臭を本気で改善!即効〜根本ケアまで完全ガイドで、時間軸と原因別に対策をまとめています。

まとめ:不安をひとりで抱え込まないで

「まずは受診」+「同時に、できることから口腔ケア」

シェーグレン症候群は、名前だけ聞くととても怖く感じるかもしれません。けれど実際には、

  • 専門医と連携しながら
  • 乾燥症状や全身症状をコントロールしつつ
  • 歯科での口腔ケア・セルフケアを組み合わせる

ことで、長く上手に付き合っている方がたくさんいらっしゃいます。

「もしかして…」と感じたら、まずはかかりつけ医や、リウマチ膠原病内科・眼科・歯科などに相談してみてください。同時に、「今の自分にできる口腔ケア」を整えておくことで、虫歯・歯周病・口臭といった二次的な悩みを抑えやすくなります。

もう一度読みたい関連記事リスト

著者の一言アドバイス

「シェーグレン症候群かもしれない」と感じたとき、一番つらいのは「正体のわからない不安」と「誰にも相談できない孤独感」だと思います。診断がつくこと自体が怖く感じられる方も多いでしょう。

けれど、病名がはっきりすると、治療の選択肢や支援制度、情報源が一気に整理されていきます。「知らないまま我慢する」よりも、「知ったうえで一緒に対策を考える」ほうが、長い目で見ると心も体もラクになります。

この記事は、あくまで“入り口”です。気になるところは何度読み返していただきつつ、具体的な治療や薬の選択は、かならず主治医と相談してください。口臭・ドライマウスについては、当サイトの他の記事もフル活用しながら、一歩ずつ「自分のペース」で整えていきましょう。

参考文献・公的情報リンク

口臭はアルカリうがいでケアするのがおすすめ

糖尿病と歯周病の関係とは?歯ぐきの腫れ・出血で分かる危険サインと対策

糖尿病の検査

監修:歯科衛生士 上林ミヤコ/執筆:上林登(口腔ケアアンバサダー)

こんにちは、口臭対策ネットを運営している上林登です。この記事は、歯科衛生士 上林ミヤコ監修のもと、医療情報を確認しながら執筆しています。

「糖尿病だと歯周病になりやすい」「歯ぐきが腫れたり出血するけれど、糖尿病と関係あるの?」──そんな不安を感じて、このページにたどり着かれたかもしれません。

結論から言うと、糖尿病と歯周病はお互いを悪化させる“悪循環の関係”にあります。ここを理解し、早めに対策することで、血糖コントロールとお口の健康の両方を守りやすくなります。

【結論:糖尿病と歯周病の関係】

  • 糖尿病があると、免疫力の低下や血流の悪化、唾液分泌の低下などにより、歯周病になりやすく、いったんかかると進行しやすくなります。
  • 一方で、歯周病があると、歯ぐきの炎症から出る物質が血液に入り込み、インスリンが効きにくくなって血糖コントロールを悪化させることが分かっています。
  • そのため歯周病は、網膜症・腎症・神経障害などと並ぶ「糖尿病の合併症のひとつ」と考えられており、歯周治療によって血糖値(HbA1c)が改善したという報告も多数あります。
  • 歯ぐきの腫れ・出血・ぐらつき・口臭があり、糖尿病やその疑いがある方は、内科だけでなく歯科でも早めに相談することが大切です。

結論:糖尿病と歯周病はお互いを悪化させる関係

まず押さえたいポイントは、糖尿病と歯周病は「一方通行」ではなく「双方向」の関係だということです。

血糖コントロールが悪くなると歯周病が進みやすくなり、逆に歯周病の炎症が続くと血糖コントロールが乱れやすくなります。この悪循環を断ち切るには、「内科での血糖管理」と「歯科での歯周病ケア」をセットで考えることが重要です。

糖尿病の人に歯周病が多い理由(免疫・血流・唾液の変化)

糖尿病があると、次のような変化が起きやすくなります。

  • 免疫力の低下:高血糖が続くと白血球の働きが弱まり、細菌に対する防御力が落ちます。
  • 毛細血管の障害:血管がもろくなり、歯ぐきへの血流が悪化。ダメージを受けた組織の修復が遅れます。
  • 唾液の量や質の変化:口の中が乾燥しやすくなり、細菌が増えやすい環境になります。
  • 高血糖そのものの影響:血液だけでなく、歯ぐき周辺の組織にも糖が多くなり、細菌のエサになって炎症が長引きやすくなります。

その結果、同じような歯みがき状態でも、糖尿病がある人のほうが歯周病になりやすく、重症化しやすいことが分かっています。

歯周病が糖尿病を悪化させる理由(炎症物質とインスリン抵抗性)

歯周病は、歯ぐきのまわりに慢性的な炎症が続いている状態です。この炎症が長引くと、歯ぐきから

  • 炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)
  • 細菌の毒素(エンドトキシン)

といった物質が血液の中に入り込みます。

これらの物質は、体のあちこちでインスリンの効きを悪くする(インスリン抵抗性を高める)方向に働きます。その結果、

  • 同じ量のインスリンが出ていても血糖が下がりにくい
  • すでに糖尿病治療中の人では、血糖コントロールが乱れやすくなる

という悪影響が出てきます。つまり、歯周病は「口だけの病気」ではなく、全身の血糖状態にも関わる炎症なのです。

歯周病は「第6の合併症」と言われる根拠

古くから、糖尿病の合併症といえば「網膜症・腎症・神経障害・心血管疾患・足の潰瘍」が有名でした。そこに「第6の合併症」として歯周病(歯周炎)が加えられるほど、関係性が注目されています。

主な根拠として、次のようなことが分かっています。

こうした糖尿病と歯周病の関連は、厚生労働省が公開している資料や、日本歯周病学会・日本糖尿病学会の合同ガイドラインでも、歯周病が糖尿病の合併症として位置づけられていることが示されています。

参考:厚生労働省「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」日本歯周病学会「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2023」

  • 糖尿病の人は、そうでない人と比べて中等度〜重度の歯周病になるリスクが2〜3倍高いとする研究が多い。

参考:JCHO山手メディカルセンター「歯周病と糖尿病」日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2024 第16章 糖尿病と歯周病」

  • 歯周病が重いほど、HbA1cなどの血糖コントロールが悪化している傾向がある。
  • 歯周治療(スケーリングやルートプレーニングなど)を行うと、平均してHbA1cが約0.3〜0.4%程度改善するとするメタ分析が複数ある。

もちろん個人差はありますが、「歯周病を放置すると、他の合併症のリスクも高くなる可能性がある」と考えられており、国内外のガイドラインでも糖尿病患者への歯周病治療・定期管理が推奨されています。

糖尿病がある人に出やすい「歯ぐきの危険サイン」

糖尿病があると、歯ぐきのトラブルが「いつのまにか進んでいた」というケースも少なくありません。ここでは、早めに気づくためのサインを整理しておきます。

こんな歯ぐきの症状は要注意(セルフチェックリスト)

まずは、次の項目をチェックしてみてください。

  • □ 歯みがきやフロスのたびに毎回のように出血する
  • □ 歯ぐきが赤く腫れている部分がある(丸くぷっくり膨らむ感じ)
  • □ 朝起きたときに、口の中がネバネバしている・嫌な味がする
  • □ 口臭を指摘されたり、自分でもにおいが気になることが増えた
  • □ 冷たい水や歯ブラシが歯ぐきにしみる(しみる範囲が広い)

ひとつでも当てはまる場合、歯ぐきにはすでに炎症が起きている可能性があります。とくに糖尿病がある方は、「そのうち治るだろう」と様子を見るのではなく、早めに歯科に相談することをおすすめします。

歯周病が進行したときのサイン(ぐらつき・膿・口臭)

次のような状態は、歯周病が中等度〜重度まで進行しているサインです。

  • 歯を指で押すとグラグラと動く感じがある
  • 歯と歯ぐきの境目から膿(うみ)が出る、苦い味や嫌な味がする
  • 歯が長くなったように見える(歯ぐきが下がってきた)
  • 噛んだときに痛い歯がある/噛みにくい部分がある
  • 強い口臭が続き、うがいやマウスウォッシュでは消えない

ここまで進むと、自宅ケアだけで元に戻すのは難しい段階です。歯科での歯石除去(スケーリング)や、根の表面をきれいにする治療(ルートプレーニング)など、専門的な処置が前提になります。

「歯がぐらつく」「膿が出る」といった状態を放置すると、最終的には抜歯が必要になることもあるため、できるだけ早く受診しましょう。

歯周病治療で血糖値が改善する?最新知見と限界

最近は、「歯周病治療をしたらHbA1cが下がった」というニュースや論文も増えています。ここでは、そのポイントを簡単に整理します。

歯周治療でHbA1cが改善した研究のポイント

歯周病の治療として、

  • 歯石・歯垢(プラーク)の除去:スケーリング・ルートプレーニング
  • ブラッシング指導・歯間清掃指導
  • 必要に応じて抗菌薬の局所投与など

を行うと、3〜6か月後のHbA1cが平均で0.3〜0.4%程度改善したとするメタ分析が複数あります。

数値だけ見ると「少しだけの変化」に見えるかもしれませんが、糖尿病治療の世界では0.3〜0.4%の改善は、内服薬を1種類追加したときと同じくらいの効果として評価されることもあります。

もちろん全ての人で必ず改善するわけではなく、

  • 元々のHbA1cの値
  • 歯周病の重症度
  • 並行して行う食事・運動療法、薬物療法

などによって結果は変わります。それでも、「口の中の炎症を減らすこと」が、全身の血糖コントロールの助けになる可能性は高いと考えられています。

それでも「歯科だけ」では不十分な理由(内科との連携)

大切なのは、歯周病治療が糖尿病治療を置き換えるものではないという点です。

  • いくら歯周病を治しても、食事・運動・内服薬・インスリンなどの管理が不十分であれば、血糖は再び悪化します。
  • 逆に、血糖コントロールが非常に悪い状態だと、歯周病治療の効果が出にくい・治りにくいこともあります。

つまり、糖尿病と歯周病は「どちらかだけ」ではなく「両方を一緒にケアする」ことが重要です。内科や糖尿病専門医と連携している歯科医院も増えていますので、受診の際に「糖尿病があること」「HbA1cの値」などを伝えると、より適切な治療計画を立ててもらえます。

参考:厚生労働科学研究「口腔と全身の健康状態の関連に関する大規模コホート研究」日本歯周病学会「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2023(PDF)」

今日からできるセルフケアと歯科受診のめやす

ここからは、「具体的に何をすればいいのか?」という視点で整理していきます。

毎日のセルフケア(歯磨き・歯間清掃・禁煙・生活習慣)

糖尿病がある方の歯周病予防・改善には、次のようなセルフケアが基本になります。

  • 1日2〜3回のていねいな歯みがき:力任せではなく、小刻みにブラシを動かし、歯と歯ぐきの境目を意識して磨きます。
  • フロス・歯間ブラシの併用:歯と歯の間の汚れは、歯ブラシだけでは約6割しか取れません。毎日1回はフロスや歯間ブラシを使いましょう。
  • 舌をやさしくケア:舌苔が厚いと細菌が増えやすくなります。専用ブラシなどで「なでる程度」にケアし、こすり過ぎないよう注意します。
  • 禁煙:喫煙は血流を悪くし、歯周病の大きなリスクになります。糖尿病がある方は、できればゼロを目標に。
  • 口の乾燥対策:こまめな水分補給、鼻呼吸、部屋の加湿などで、口の中を極端に乾燥させないようにします。
  • バランスのよい食事と適度な運動:血糖コントロールが整うことで、歯周病も治りやすくなります。

自宅ケアの具体的なやり方や、ステージ別のセルフケア手順について知りたい方は、「歯周病の“自宅ケア”完全ガイド|初期の改善と進行ブロック」も参考にしてみてください。

歯科受診のタイミング:出血・腫れが続くときは要相談

次のような場合は、できるだけ早めの歯科受診をおすすめします。

  • 歯ぐきの腫れや出血が2週間以上続いている
  • 歯がぐらつく、噛んだときに違和感や痛みがある
  • うがいやマウスウォッシュをしても強い口臭が続く
  • 糖尿病と診断されてから、しばらく歯科にかかっていない

受診の際は、

  • 糖尿病で通院中であること
  • 最近のHbA1cの値(分かれば)
  • 内科・糖尿病専門医の医院名

などを伝えておくと、歯科側でも全身状態を踏まえた治療計画を立てやすくなります。

糖尿病専門医・内科に相談すべきケース

次のような状況がある場合は、歯科だけでなく内科・糖尿病専門医への相談が必須です。

  • のどの渇き・多飲・多尿・体重減少など、血糖コントロール悪化を疑う症状がある
  • HbA1cが高値のまま(目標値から大きく外れている状態)が続いている
  • 歯周病治療をしても炎症や腫れがなかなか引かない
  • 「インスリンの量を増やしても血糖が下がりにくい」と言われている

歯ぐきの状態は、糖尿病コントロールの「ひとつのバロメーター」でもあります。口の中の変化をきっかけに、全身の治療を見直すことも大切です。

糖尿病と口臭の関係(甘い匂い・ネバつきが気になるとき)

糖尿病と歯周病があると、口臭が強くなることも少なくありません。ここでは、とくに相談の多い「甘い匂い」「ネバネバ感」のポイントを整理します。

甘い匂いの口臭が続くときに考えたいこと

血糖コントロールが大きく乱れると、体はエネルギー源として脂肪を大量に分解します。その過程でケトン体(アセトンなど)が増え、

  • 甘いフルーツのような匂い
  • 甘酸っぱいシンナーのような匂い

として息に混ざることがあります。これは、糖尿病にともなう「ケトーシス」「ケトアシドーシス」のサインである可能性もあるため、

  • 強い口渇・倦怠感・吐き気・腹痛・呼吸が荒い

といった症状を伴う場合は、すぐに内科・救急外来などに相談してください。

糖尿病による甘い匂いの口臭のしくみや対策を、より詳しく知りたい方は「糖尿病による甘い口臭の原因と対策法:健康を守るための実践ガイド」も参考になります。

口臭が強いときの応急ケアと専門受診の流れ

「今すぐ何とかしたい」というときには、次のような応急ケアが役立ちます。

  • 水やお茶を少しずつ飲み、口の中を潤す
  • 舌苔をやさしくケアし、歯と歯ぐきの境目をていねいに磨く
  • 口呼吸を避け、できるだけ鼻呼吸を心がける

ただし、これらはあくまで一時的な対処です。繰り返す口臭や、「いつもと違う・病気が隠れていそうなニオイ」が続く場合は、「口臭は病気のサイン?見逃さないセルフチェック&早期対策ガイド」で全身疾患との関係を確認しつつ、必要に応じて内科・耳鼻科・消化器内科など適切な科を受診しましょう。

歯周病が原因の口臭について、タイプ別の詳しい対策を知りたい方は、「【口臭対策 歯周病徹底ガイド】原因・特徴・セルフケア&最新治療で口内環境を改善!」もあわせてご覧ください。

まとめ:血糖と歯ぐきを一緒に守るために

糖尿病と歯周病は、「どちらか一方だけを頑張ればよい」という関係ではありません。血糖コントロールが整っているほど歯周病は治りやすく、歯周病の炎症が少ないほど血糖コントロールも乱れにくくなります。

その意味で、

  • 内科・糖尿病専門医での治療(食事・運動・薬物療法)
  • 歯科での定期検診と歯周病治療
  • 毎日のていねいなセルフケアと生活習慣の見直し

この3つを車の両輪+ハンドルのようにセットで続けることが、合併症を防ぎ、元気に過ごす近道になります。

「糖尿病があるから歯ぐきが弱いのは仕方ない」とあきらめる必要はありません。気になるサインがあれば、内科と歯科の両方に相談しながら、一歩ずつ整えていきましょう。

参考文献

口臭はアルカリうがいでケアするのがおすすめ