舌のパサパサはドライマウス対策で治す
口腔ケアアンバサダー(社団法人口腔ケア学会認定)の上林登です。
タイトルをご覧になられて、「舌のパサパサを解決する方法」が解っているという方は、ここから先を読む必要はありません。
舌がパサパサになる症状はドライマウスですが、唾液がネバネバで臭いのが特徴です。ドライマウス症は10人に1人の割合であるといわれます。しかし、ドライマウスの対策法についてはあまり紹介されていません。
ドライマウス症になり、舌がパサパサになり食べ物が飲み込めない、舌がピリピリ痛い、味覚障害になり口が苦い、など困っている人が多いのです。あなたはいかがですか?
現在そのように困っていても、ドライマウスを解消できればそれらの問題も解決できます。
この記事では、舌のパサパサが治らないことにジレンマを抱いている方のために、舌がパサパサすることの対策方法についてお伝えします。ぜひご参考にしてください。
舌のパサパサはドライマウスが原因
ドライマウス症は、口腔乾燥症ともいいます。その名のとおり、ドライマウスになると口腔が乾きます。
口腔乾燥は鼻炎からでも起きます。鼻炎で鼻づまりになると鼻呼吸ができなくなり無意識に口呼吸になります。寝ている時に口呼吸になっていると、朝起きた時に口がカラカラになります。
口呼吸以外でも、唾液の分泌量が減るとドライマウスになります。
口呼吸や唾液不足によってドライマウスになると、舌がパサパサに乾きます。そして、舌が乾燥すると次のような症状を起こします。
- 舌が白くなり舌苔(ぜったい)ができる
- 舌がヒリヒリと痛む
- 味覚障害を起こし味がわからなくなる
- 口が苦くなる
- パンなど乾いた食べ物が飲み込めにくい
- 虫歯や歯周病になりやすい
- 口内炎になりやすい
- 口臭が強くなる
唾液が出なくなる原因は人によって様々ですが、主なものは次のとおりです。
- 加齢
- ストレスによって自律神経に異常をきたす。
- 食事のときに良く噛まない。
噛む筋力が低下し唾液腺を刺激しないことも影響しています。- 更年期障害
- 糖尿病・腎不全などの病気が原因。
- 薬の副作用(抗うつ剤、睡眠薬、降圧剤など)
口腔乾燥がひどい場合には、『シェーグレン症候群』という病気の場合もあります。気になる方はお医者さんにご相談されることをおすすめします。
ドライマウスの対策法
大学病院などに「ドライマウス外来」を設置しているところがありますが、ドライマウスの治療は歯科でも受けられます。でも、ドライマウスは症状であり根本的な原因を取り除かないかぎり完治できません。一般的には、ドライマウスから起きる症状への対処療法になります。
代表的な治療をご紹介しますのでご参考にしてください。
人工唾液
治療で処方される人工唾液には、「サリベート」というものがあります。サリベートは、口腔乾燥がひどく義歯を入れているのがつらいケースや、口の乾きから嚥下困難な患者さんに処方されます。
しかし、サリベートは長時間にわたり効果が続かなく不快感をもつ人もおられます。
通販でも購入できるスプレータイプの人工唾液もありますが、効果は定かではありません。
保湿ジェル
舌がパサパサするなどの口腔乾燥を防ぐ方法で、かんたんなものは、保湿ジェルです。保湿ジェルは、歯科医院だけではなく市販のものもあります。
保湿剤配合のマウスウォッシュもありますが、アルコールが含まれている場合には、かえって口腔乾燥を起こすことがあるのでご注意ください。
保湿ジェルは、舌や頬粘膜の乾燥がひどい場合に粘膜に塗って使用します。舌苔(ぜったい)ができている場合に有効です。しかし、日中は食事や唾液によって塗布したジェルが取れていくので長時間は保てません。
ですから、就寝前に舌に保湿ジェルを塗ることをおすすめします。寝ているときに口呼吸になっている人が多いですが、保湿ジェルを塗ることで防ぐ効果があります。詳しくは『舌の奥が白い!その原因と対策は?保湿ジェルがおすすめ』をご参考にしてください。
うがい薬
うがい薬としては、イソジンうがい薬を処方されることが多いのではないでしょうか。イソジンは、口腔乾燥によって増えた細菌がを殺菌消毒するためのものです。ですから、直接ドライマウスを改善することではありません。
他のうがい薬として、アズレンがあります。アズレンは、口腔乾燥によっておきた頬や舌粘膜の炎症を取り除くために使います。
トローチ・口腔用軟膏
トローチもうがい薬と同じように、殺菌作用が目的で使われます。口腔用軟膏は炎症を抑える目的で処方されますが、抗生剤が含まれるので長期にわたり使用するとカンジダ症になることがあるので使用には注意が必要です。
一瞬で唾液を出す方法
ドライマウス症なのに、「何が一瞬で唾液が噴きだすだ。笑わせるな!」とお叱りを受けそうですが、あえて、このような表現を取らせていただきましたことお許しください。
それでは、「唾液を一瞬で出すことができる」種明かしをします。唾液が一瞬で出る時ってどんな時だと思いますか?
答えA「梅干しをほおばった時。」
答えB「切ったレモンを口に入れて吸った時。」
答えC「きゅうりの酢の物の酢を一気に飲んだ時。」
どれも、唾液が一気に噴き出します。というよりも、この質問を書いてる時から、私の口のなかには唾液が噴き出ています。
あなたはいかがでしょうか?酸っぱいことをイメージしただけで、唾液が出てきたのではないでしょうか?不思議な話です。酸っぱいものを食べてもいないのに、唾液が出てくるのです。
何故だと思いますか?
じつは、唾液腺は脳がコントロールしているからなのです。
頭で酸っぱいと感じれば、たとえ、それが実際に食べていなくても、酸っぱいことへの防御反応が起きる(この場合は唾液が出る。)仕組みなのです。
ところが、これが口臭を解決するために重要なことだということは、ほとんどの方がご存じではないのです。これだけでは、何のことかわからないかもしれませんね。
脳のどこかに唾液を制御するスイッチがあるように、「梅干し」の反対の「切スイッチ」に入れれば、唾液が出なくなるのです。
冗談のようですが、本当のことです。
口臭に悩まれて、よく口が渇く方がおられます。その方にお話しをうかがうと、「人と至近距離で話す場面に出会うと、必ず、緊張して口がカラカラになる。」とか、「外出すると、周囲の人が鼻を押さえるのが目に入り、口が渇いてしまう。」と話されます。
他にも、「他人と話さないといけないと考えただけで、口が臭くなってしまう。」という方までおられます。
これが、切スイッチです。
本来の唾液腺の制御装置とは関係なしに、切スイッチが入ってしまうのです。
それは、「私の口臭を他人に気づかれたらどうしょう。」という思い込みによるものです。
ですが、その不安が交感神経に伝達し、唾液の分泌を止めてしまっているのです。
実際、相手はどう思っているのかも分からないのですが、口臭が気になっていると、悪いように思ってしまうものですよね。
100人いれば、全員が「臭い。こちらに来るな!」とは思っていません。反対に100人全員が、「これぐらいのニオイ、私もしているし。」とも思っていません。一部の人だけが「臭い!」、そして、何割かの人が「別に臭わない」と思っているのではないでしょうか。
想像と実際は異なるのものです。想像ではなく事実を検証することは大事です。
ところが、口臭で悩まれている方というのは、必ずといっていいほど、「私の口臭を他人に気づかれたらどうしょう。」と不安に思ってしまうようです。
外出する前。営業の仕事中で。人と会うとき。などになると、唾液が出ないように「切スイッチ」が入ってしまうようです。
そして、口がカラカラに渇き、白くなった舌から強烈な口臭が出てしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
この事実だけでも解っていただければ、唾液を制御する「切スイッチ」も入りにくくなるはずです。そうなることを祈ります。
唇をなめる
先ほど梅干しをなめるとか、レモンを食べる方法をご紹介しましたが、口腔乾燥の対策としては現実的ではありません。
口腔が乾燥するのは、日常生活で緊張したときなどに急に起こるもの。その時に梅干しやレモンを食べることは困難です。
ですが、たとえどのような場面でも想像することはできるはずです。緊張し口がパサパサに乾いてきたと思ったら、梅干しやレモンを食べる場面を想像してください。
それだけでも、唾液が出始めると思いますが、その次に行ってほしいことがあります。それは、「唇をなめる」ことです。周囲の人にわからないようにこっそりと唇をなめてください。梅干しを想像したことで少し唾液が出ているため、濡れた舌で唇をなめると唾液腺が刺激され、一瞬で唾液が出てくると思います。おすすめな方法ですので、異常に口が乾いたときには、ぜひお試しください。
砂糖をなめる
砂糖をなめると、唾液が分泌されます。舌で甘さを感じると、唾液を出すように脳が指令を出します。
風邪のひき始めにのどが痛くなった時にのど飴をなめるのは、唾液の分泌を良くしてのどを潤すのがねらいなのです。
だからといって、糖分の多いお菓子や飴ばかり食べていると、口内環境が悪くなり虫歯や歯周病になります。その結果、かえって口臭がひどくなるなんてこともあるのでご注意ください。砂糖で唾液を出す方法について詳しくは、『あっという間に口臭を消す方法 !?砂糖は口臭を悪化させるのでご注意』をご参考にしてください。
食事で唾液を出す
あまり知られていないようですが、食事をすると唾液が分泌されます。食事をすると、顎や舌を動かし脳に伝わり唾液腺を刺激します。食事をすると唾液が出る。そのように、動物の脳はプログラムされているのです。
これは、唾液が分泌されることによって、噛みやすくなる、味覚できる、食べ物が混ざる、嚥下しやすくなる、などが容易にできるようになるからです。
じつは、一番簡単に唾液を出すようにできるのは、食事のときに「よく噛む」ことなのです。現在の咀嚼回数を2倍から3倍に増やすことで唾液の分泌量も増やすことができます。「よく噛む」を習慣にすると、唾液腺が刺激され、普段から唾液がよく出るようになります。ですので、今日から「よく噛む」を習慣づけられることをおすすめします。
ドライマウス対策は水を飲むのが一番
ドライマウス対策法がどれだけ良いものであっても、体の水分量が不足していれば唾液の分泌量も低下します。
ドライマウス(口腔乾燥)になる一番の原因は、水分不足です。一日に必要な水分摂取量は、2.5リットルと言われていますが、ほとんどが2リットル以下しか飲んでないそうです。ですから、厚生労働省では、「一日にコップ2杯の水を飲みましょう!」と呼び掛けています。
20%も水分摂取が不足していれば、ドライマウス(口腔乾燥)になっても不思議ではありませんよね。厚生労働省のHPでは、「水分不足が熱中症(ねっちゅうしょう)、脳梗塞(のうこうそく)、心筋梗塞(しんきんこうそく)のリスクを高める。」と注意を促しています。水分不足によって、血液がべたべたになるのが高血圧の原因になっているのです。
同じように、水分不足によって唾液がネバネバになります。口が乾き舌苔(ぜったい)も出来るというわけです。だから、水を飲むことが大切なのです。
のどの渇きは脱水が始まっている証拠であり、渇きを感じてから水を飲むのではなく、渇きを感じる前に水分を摂ることが大事です。水分が不足しやすい、就寝の前後、スポーツの前後・途中、入浴の前後、飲酒中あるいはその後等に水分を摂ることが重要とされており、枕元に水分をおいて就寝することも重要です。水分の摂取量は多くの方では不足気味であり、平均的には、コップの水をあと2杯飲めば、一日に必要な水の量を概ね確保できます。
その際、砂糖や塩分などの濃度が高いと、吸収までの時間が長くなる点に注意が必要です。また、アルコールや多量のカフェインを含む飲料は、尿の量を増やし体内の水分を排せつしてしまうので、水分補給としては適しません。
なお、腎臓、心臓等の疾患の治療中で、医師に水分の摂取について指示されている場合は、この指示に従う必要があります。
水を口に含むと、それだけで口中を潤しますが、水を飲むことによって唾液腺を刺激できます。一度に多量に飲む必要はありませんが、少量ずつ口に含むことをおすすめします。
水を飲むのは良いことなのですが、ジュースや緑茶、コーヒーなどを飲むのは逆効果になります。
厚生労働省が勧めている水の飲み方は、「目覚めの一杯、寝る前の一杯」です。これは、血液中の水分が不足しないようにするためです。しかし、睡眠中は唾液がほとんど出なくなるので、寝る前に水を飲むのは良いことです。ドライマウスで朝、口が乾く場合には是非お試しください。
まとめ
口腔乾燥症(ドライマウス)で困っていると、すぐに唾液を出す方法を知りたいと思うでしょう。今回の記事では、いろんな唾液を出す方法をご紹介しました。
残念ながら、それらのほとんどは一時的な対策で実用的ではありません。その中でも、「小まめに水を飲む」は少し努力すればできるかもしれません。できる環境にある人には、ぜひ行ってほしい方法です。
でも、私の一番のおすすめな方法は、「よく噛むこと」です。
食事は、だれでも毎日行うものです。だから、やろうとおもえば誰でもできるはずです。ただし、噛むというのは習慣性が強い。ですから、始めは意識的に、「10回噛む」というように決めて行うと良いかもしれません。続けることで、「よく噛む」ことが習慣になれば、唾液がたくさん出るようになります。そして、唾液腺も活発になり、普段から唾液がよく出るようになると思います。