口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登です。
十分に唾液が分泌されている時には、食べものをスムーズに飲み込める、しゃべりやすい、口内を清潔に保つことができるため口臭のない綺麗な息がしています。
ところが、唾液が減ると、口がネバネバして口臭になったり、舌がヒリヒリと痛む原因になります。このように十分な唾液の分泌は健康に欠かせないものです。
今回の記事は、唾液減少の原因と唾液腺(だえきせん)マッサージについてお伝えします。ご参考にしていただければ幸いです。
唾液のはたらき
唾液は、一日に1~1.5リットルも分泌されると言われています。唾液には、口の中の粘膜を保護したり、外からの細菌をやっつけるなど様々な働きがあり、粘膜や歯を守っています。
この他にも、唾液には、食べかすを洗い流して口の中に残るのを防ぐ「洗浄作用」や、酸によって歯が溶けるのを防ぐ「緩衝作用」、細菌から守る「抗菌作用」などがあります。
そのため、唾液が減り口が乾くと口臭を強くする原因になります。このように、唾液と口臭は密接に関係しています。
【唾液の役割】
- 唾液が口腔粘膜にうるおいを持たせることで、咀嚼・嚥下・発声を容易にできる。
- 唾液成分ムチンが、粘膜を保護する。
- 食事をスムーズにする。
- 食べかすなどが、粘膜に付着するのを防ぐ。
- 唾液の成分アミラーゼが、でんぷん質の消化を補助する。
- 食べ物の味成分を分解して味覚を助ける。
- 口腔内を中性に保つ。
- 抗菌作用がある。
唾液の減少による影響
口が乾くのは一時的な場合もありますが、慢性的なのは「ドライマウス(口腔乾燥症)」という病気です。唾液が減ると口が粘つくだけではなく、虫歯や歯周病のリスクも高くなります。
【口腔乾燥の症状】
- 口の中がカラカラと乾く
- 口の中がネバネバする
- 歯磨き粉や洗口剤がしみて舌がヒリヒリする
- 話しづらい
- 水がないと食べ物が食べられない
- 口内炎ができやすい
- 唇が乾き口角が切れやすい
- 舌がヒリヒリする
- 舌に溝がある
唾液が少なくなる原因は、シェーグレン症候群などの病気によって唾液腺が痛んでいる、ストレスなどで自律神経が乱れている、薬の副作用のほか糖尿病などの病気が影響しているなどさまざまです。唾液の減少原因を特定するには、専門の病院で検査が必要です。
唾液腺マッサージ
唾液腺は、耳たぶの前方の耳下腺、アゴ骨内側の柔らかい部分にある顎下腺、顎の真下にある舌下腺の3つあります。
唾液腺を顔の外から指で押してみてください。力を入れ過ぎないように、唾液腺を軽く指で押します。回数は、5回~10回を繰り返すことで、唾液腺を刺激出来ます。
【唾液腺マッサージの仕方】
- 耳下腺マッサージ:耳の下を、指で後ろから前へ回すようにマッサージします。5回程度。
- 顎下腺マッサージ:耳の下から顎の下あたりを指で押すようにマッサージします。5回程度。
- 舌下腺マッサージ:アゴの下を親指で押し上げるようにマッサージします。5回程度。
テレビを見ながらでも、唾液腺マッサージを行うと良いですよ。リラックスしながら唾液腺を刺激すると、より効果がアップします。
唾液腺マッサージの注意点
唾液腺マッサージで注意しないといけないのは、「マッサージのし過ぎ」です。唾液腺を強く刺激すると悪影響を起こすことがあるので痛くないようにマッサージしましょう。
マッサージを行うと、唾液腺が刺激されるため一定の効果がありますが、効果は一時的です。マッサージによる即効性を期待し過ぎると、唾液腺を傷めるなどのリスクがありますので、毎日続けることが大事です。
また、唾液が出なくなる病気に、難病指定の「シェーグレン症候群」があります。この病気の症状は口腔乾燥がひどいことですが、この病気の原因についてはまだ解明されていません。ですから、シェーグレン症候群が疑われるケースでは、唾液腺マッサージを行う前に、専門病院を受診されることをおすすめします。
シェーグレン症候群について詳しくは『シェーグレン症候群って何?治療方法はあるの?』をご参考にしてください。
>>ドライマウスの対策はコレが一番!いったいどんな方法なのか?
まとめ
唾液減少による口内への影響と唾液を出す方法として「唾液腺マッサージ」をご紹介しました。
唾液の減少は更年期や高齢の方によく見られますが、最近は若い人にも増えています。唾液を出す方法としては、舌を動かすと唾液腺が刺激されて唾液が分泌されますので、舌の体操や、咀嚼回数を増やすと効果的です。また、梅干しやレモンを想像するだけでも唾液は出ますので、困った時にはお試しください。
口がよく乾く場合には、こまめに水やお茶を飲んで口内を潤すことも大切です。