こんにちは、口腔ケアアンバサダー(社団法人 日本口腔ケア学会認定)の上林登です。
監修:歯科衛生士 上林ミヤコ
「喉の奥に白〜黄色のベタつき(膿汁?)が見える」「朝の口臭が強烈」——そんな不安に、やさしく確かな答えを。
この記事は、膿性痰(後鼻漏)・膿栓(臭い玉)・扁桃周囲膿瘍などを整理し、今すぐできる対策から病院受診の目安までを一気に解説します。まずは正体を見極め、ムダなく改善していきましょう。
著者の一言アドバイス:「膿汁=いつも膿栓が主因」ではありません。多くは鼻由来(副鼻腔炎の後鼻漏)が口臭を悪化させ、乾燥・舌苔がそれを増幅します。まずは鑑別→“今できる”手順→必要なら耳鼻科へ。この順番が最短ルートです。
膿汁(のうじゅう)とは?喉に見える白〜黄色の正体
「膿汁」は、一般に膿を含んだ粘液を指します。喉で見える/感じる“ネバいもの”の正体は、
①鼻から流れ落ちる後鼻漏(膿性痰)
②扁桃の穴に溜まる膿栓(臭い玉)
③激しい痛みを伴う扁桃周囲膿瘍など、いくつかに分かれます。
副鼻腔炎では膿性鼻漏・後鼻漏・口臭が生じ得ることが知られています。
30秒セルフチェック:後鼻漏/膿栓/膿瘍のちがい
項目 | 後鼻漏(副鼻腔炎など) | 膿栓(臭い玉) | 扁桃周囲膿瘍 |
---|---|---|---|
主な場所 | 鼻〜上咽頭→喉へ流れる | 口蓋扁桃の「穴(陰窩)」 | 扁桃の周囲(膿がたまる) |
見え方・性状 | 黄〜緑で粘い痰/喉のネバつき | 白〜黄の米粒状の塊が見える/潰すと強烈な臭い | 強い咽頭痛・片側腫れ・口が開けにくい |
随伴症状 | 鼻づまり・顔面圧痛・嗅覚低下・湿った咳 | 違和感・咳き込み・時に口臭 | 発熱・嚥下痛・開口障害(要受診) |
口臭との関係 | 鼻性の膿臭+口呼吸乾燥で増幅 | 潰れた時に強く臭うが、常に主因とは限らない | 強い炎症で悪化(緊急対応) |
今すぐ | 鼻→喉の洗浄と保湿、原因治療へ | 無理に取らない。うがい中心/耳鼻科相談 | 至急耳鼻咽喉科(切開・抗菌薬など) |
口臭との関係:鼻性の“膿のにおい”+乾燥・舌苔の相乗悪化
副鼻腔炎などで膿性の鼻汁が喉へ流れ続ける(後鼻漏)と、喉奥で生臭いにおいが滞留しやすく、さらに口呼吸・乾燥が重なると舌苔が増え、においが増幅します。後鼻漏は不快感や痰、口臭の原因になり得るため、鼻の原因治療と口腔ケアの両輪が大切です。
今すぐできる対策(朝30分プロトコル)
1) 鼻→喉の順に“上流から”クリア
- 鼻うがい(5分):生理食塩水・体温程度のぬるま湯でやさしく。自己流で無理をしないよう注意し、耳鼻科で方法を確認できると安心です。
- 喉うがい(1〜2分):上を向き、喉奥で「ガラガラ」。膿栓の最も安全な一次対応は“濃いめのうがい”。
アルカリイオン水による喉うがい方法はこちら
2) 舌苔ケアは“なでるだけ”(5〜10秒)
- 舌ブラシは1日1回・5〜10秒・奥から手前に1〜2往復。こすり過ぎは逆効果。
- 強いジェットや固い器具でのこすりはNG。喉や扁桃を傷つけ、炎症で口臭が悪化します。
3) 保湿・水分(5分)
- 起床直後と朝食後にコップ1杯の水。室内は加湿で喉の粘液を流れやすく。
- 日中もこまめに水分補給。乾燥は口臭を増幅します。
4) NG自己処置
- 膿栓の無理な自己摘出(綿棒・ピンセットなど):扁桃を傷つけ、炎症・出血・感染のリスク。耳鼻科での除去が安全です。
- 過度な刺激洗浄や強アルカリ剤:粘膜障害の恐れ。穏やかな洗浄と保湿を基本に。
病院での治療:副鼻腔炎・後鼻漏・扁桃疾患
副鼻腔炎(蓄膿症)が疑われる場合、保存療法(吸引・鼻洗浄・抗菌薬など)を基本に、難治例では内視鏡下副鼻腔手術が検討されます。
後鼻漏は原因疾患(副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎など)への治療が土台。対症療法(保湿点鼻や粘液調整)も併用されます。
膿栓は耳鼻咽喉科で吸引・洗浄などで安全に除去可能。日常生活に支障がある場合は相談を。
扁桃周囲膿瘍は緊急対応で、切開排膿+抗菌薬が標準。再発例では扁桃摘出を検討します。
受診の目安(レッドフラッグ)
- 高熱・強い片側の咽頭痛・開口障害・飲み込みづらさ(扁桃周囲膿瘍の疑い)→至急、耳鼻咽喉科。
- 顔面の圧痛・膿性鼻漏・夜間の湿った咳・口臭が長引く→副鼻腔炎評価を。
- 自力除去が困難/再発する膿栓→耳鼻咽喉科で安全に除去・原因評価。
よくある質問(FAQ)
Q. 膿汁は口臭の主因ですか?
A. 多くは鼻性(後鼻漏)が関与し、口呼吸・乾燥・舌苔で臭いが増幅します。副鼻腔炎の改善が口臭の軽減につながるケースは少なくありません。
Q. 膿栓は必ず強い口臭の原因ですか?
A. 潰れた時に強く臭うのが特徴ですが、常に主因とは限りません。再発性・違和感が強い場合は耳鼻科へ。
Q. 自分で膿栓を取ってもいい?
A. おすすめできません。喉や扁桃を傷つけ炎症で悪化することがあります。取りたい場合は耳鼻咽喉科で。
Q. 鼻うがいは毎日やって良い?
A. 正しい方法・濃度であればセルフケアとして有用です。耳鼻科で指導を受けられると安全です。
関連・深掘り(内部リンク)
うがい+やさしいブラッシングを続ける方へ:刺激を抑えながら口内環境を整えたい場合は、美息美人の活用も一案です。まずは受診の必要性の確認と原因治療を優先し、そのうえで日々のケアにお役立てください。
参考文献
- 口臭の原因・実態 厚生労働省 e-ヘルスネット
- 口臭の治療・予防 厚生労働省 e-ヘルスネット
- 診療ガイドライン/手引き・マニュアル INDEX(鼻副鼻腔炎ほか) 日本耳鼻咽喉科学会
- Sore Throat Basics U.S. CDC
- About Strep Throat(Group A Strep) U.S. CDC
- Sinus Infection Basics U.S. CDC
- Tonsillitis NIH MedlinePlus
- 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン 日本鼻科学会
- 厚生労働省-抗微生物薬適正使用の手引き 第一版(仮称)
- 日本感染症学会-急性咽頭・扁桃炎診療の抗菌薬適正使用における A 群 β 溶血 …
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会-口・のどの症状
- 日本口腔外科学会-口臭がひどい