要点:黒い膿栓(扁桃結石)は長期停滞+石灰化+血液/色素沈着のレア例。
自己流で摘まむ前に、まずは安全ガイドと受診の赤旗を確認。
膿栓(臭い玉)は扁桃栓子とも呼ばれ、長期間留まって石灰化すると扁桃結石になります。通常は乳白~黄白色・直径1~5mmほどですが、放置が長引くとカルシウム沈着が進み、まれに茶褐色~黒色へ変色・硬化するケースがあります。
膿栓の主成分は口腔内細菌・食べかす・脱落上皮細胞などが混ざったバイオフィルム。潰すと硫黄臭・下水臭の強い悪臭を放ちます。黒く硬い結石は自然脱落しにくく、慢性口臭の温床になりやすい点に注意が必要です。
この記事は、口腔ケアアンバサダー(社団法人口腔ケア学会認定)の 上林登が執筆しています。
膿栓の石化・参考文献:
- Large tonsillolith associated with the duct of the submandibular gland: a case report
- Bilateral and pseudo-bilateral tonsilloliths on cone-beam CT
- 扁桃結石の症例報告(耳鼻咽喉科領域)
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膿栓が石化(扁桃結石)するメカニズム
“黒色化”はなぜ起きる?
ふつうの膿栓は乳白〜黄白の柔らかい塊ですが、長期停滞で次第に黄褐→茶→黒へ変色することがあります。主因は以下の3つ。
- 微小出血の混入:粘膜の刺激や炎症でにじんだ血液が付着し、酸化で黒っぽく見える。
- 石灰化の進行:カルシウム沈着で硬化が進み、乾燥・沈着物で色調が濃くなる。
- 細菌・代謝産物の蓄積:バイオフィルムの層が厚くなり、色素沈着・悪臭が増す。
“口の中の石”は1つじゃない
唾液腺や導管にできる唾石と、扁桃のくぼみにできる扁桃結石は発生部位が異なります。どちらも石灰化で硬化しますが、対処法は異なるため鑑別が大切です。
【症状別】痛み・黒い塊・茶色い塊の見分け方
痛みがあるときに考えること
多くの膿栓は軽い異物感のみですが、以下に当てはまる場合は注意。
- 扁桃炎/扁桃周囲膿瘍:強い咽頭痛・嚥下困難・発熱が持続する。
- 結石の増大:硬い塊が大きくなり、圧迫感や口臭が悪化する。
重症例(膿が広がる/呼吸困難リスク)についての医療情報:順天堂大学医学部附属順天堂医院:扁桃周囲膿瘍
黒色化でも“自己流で取らない”が基本
黒く硬い結石は粘膜損傷・出血のリスクが高め。具体手順は下記の安全ガイドで確認し、自然脱落しない/痛みや腫れがある場合は耳鼻科で除去を。
受診が必要な“赤旗”チェック
- 強い喉の痛み/嚥下障害/発熱が48時間以上続く
- 出血を繰り返す・金属臭や口臭が急に悪化
- 黒い塊が大きくなる・呼吸が苦しい
石灰化が進行した場合の治療(概要)
扁桃摘出を検討するケース
- 扁桃炎を反復(年に複数回の高熱・激痛)
- 結石が大きい/埋没し、口臭・違和感が改善しない
費用・入院・痛み(目安)
- 費用:保険適用で数万〜10万円程度(施設・術式で変動)
- 入院:数日〜1週間前後
- 術後痛:1週間ほど強い咽頭痛が続く場合あり
治療は医師と相談し、メリット/デメリット・回復見込みを理解して決めましょう。
再発を減らす生活習慣(ミニチェック)
- 水分補給で乾燥を防ぐ
- 唾液分泌を促す(よく噛む・ガム・口腔体操)
- 就寝前の口腔ケア(歯間清掃・舌ケア・うがい)
後鼻漏がある場合
- 鼻炎・副鼻腔炎の治療を優先
- 生理食塩水の鼻洗浄を医師の指導で
- 乾燥対策・禁煙・睡眠で粘膜コンディションを維持
予防の基本
予防は口腔清潔+唾液+鼻呼吸が三本柱。食事はよく噛み、口腔体操でだ液を増やしましょう。具体的な日常ケアはのどが臭い・対策と予防を参照。
よくある質問
Q1.膿栓は毎日できる?
扁桃のくぼみ(陰窩)の深さ・慢性炎症・後鼻漏の有無で個人差があります。黒っぽい場合は血液/色素沈着や長期停滞が示唆されることがあります。
Q2.石化したら必ず手術?
表層の小結石は外来での吸引・除去/レーザーで済むことが多いです。大きい・埋没・症状強い場合は扁桃摘出術の検討対象に。
Q3.セルフチェックのコツは?
明るい光+大きめの鏡で週1確認。白〜黄・黒っぽい粒、金属臭、強い口臭、長引く違和感があれば受診目安。
まとめ
- 黒色化は長期停滞×石灰化×色素沈着が重なるレアケース。
- 自己流での深追いはNG。基本手順は安全ガイドで確認。
- 強い痛み・出血・発熱・増大は受診の赤旗。
日常ケアの一例として、うがい設計の見直しも検討を。


