歯周病

歯周病は歯磨きで治る?結論:初期○/進行×|受診の目安と“今夜の一手”

歯周病は歯磨きで治せますか?に答える歯科衛生士

監修:歯科衛生士 上林ミヤコ/執筆:上林登(口腔ケアアンバサダー)

まず結論|歯周病は歯磨きで治る?

一目でわかる結論

結論:歯磨きだけで改善できるのは歯肉炎まで。
歯がぐらつく/広く腫れる/歯が長く見える等は、歯石除去(スケーリング等)を含む専門治療が前提です。
受診目安は出血や腫れが2週間以上。今夜は就寝前の少量1回すすぎ+歯間清掃から再開しましょう。

根拠: 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病」日本歯周病学会『歯周治療のガイドライン 2022』

歯磨きで改善できる範囲 歯磨きだけでは難しい範囲
歯肉炎(出血・腫れ・朝のねばつき) 歯周炎(歯がぐらつく/広範な腫れ/歯が長く見える)
正しいブラッシング+歯間清掃+就寝前ケアで改善 歯石・バイオフィルムは歯科での機械的除去(スケーリング/SRP)が必要

セルフ判定|3ステップでA/B判定

Q1:歯磨きで出血しますか?

はい → Q2へいいえ → Q3へ

Q2:歯がぐらつく/歯が長く見える感覚は?

はい → B判定(進行疑い)いいえ → A判定

Q3:朝のねばつき・口臭は?

はい → A判定いいえ → 「今の習慣をキープ」

A判定(軽度炎症想定)→ 今夜の一手(要点のみ)

  • 就寝前はすすぎ1回(少量5〜15ml)で有効成分を残す
  • フロス/歯間ブラシ→最後に歯ブラシの順で“死角”を埋める
  • 毛先は45°で境目に当て、弱い力で小刻み

具体的な手順は「自宅ケア完全ガイド」へ

B判定(進行疑い)→ 受診優先

“歯がぐらつく”ときの最短ルート。自己流で力任せに磨くと悪化します。
歯科でのスケーリング/ルートプレーニング(SRP)等で炎症源を除去し、以降はホームケアで維持しましょう。

受診の目安(2週間ルール)

  • 出血/腫れが2週間以上続く・広がる
  • 歯が動く・噛むと痛む・口臭が急に強くなった
  • 発熱や顔の腫れなど全身症状がある(早急に受診)

歯科での治療の流れ(要点)

初期はクリーニング、進行時はSRP、必要に応じて外科(フラップ等)。炎症源除去後は定期メンテ+ホームケアで再発を抑えます。 詳細は 日本歯周病学会GL を参照。

今夜の一手(30秒チェック)

  • 歯磨き後のすすぎは少量1回にする
  • 寝る前だけで良いので歯間清掃を先に行う
  • 痛い日は“やさしく短く”に切り替える(無理はしない)
著者の一言アドバイス

「治す」は専門治療とホームケアの両輪です。迷ったら“2週間ルール”で判断し、今日のケアは弱い力×少量すすぎから。

参考文献

歯磨きで取り切れない口臭対策に、アルカリイオン水のうがいという選択

歯周病が手遅れ?手遅れ症状チェックと受診目安|6mm・動揺度の危険サイン早見表

最終更新:2025-10-28|監修:歯科衛生士 上林ミヤコ/執筆: 上林登(口腔ケアアンバサダー)

「もう手遅れかも…」と不安になったら、このページが“最初の相談窓口”。
症状の閾値受診ラインを1画面で確認し、今日できる一歩へ。

まずはここだけ(最短回答)
  • 次の手遅れ症状が1つでも当てはまる → 早期受診: 歯がグラグラ(動揺度2–3相当)/噛むと痛い/が出る/強い口臭/歯が長く見える(歯茎が下がる)/前歯が開いてきた(歯列変化・ブラックトライアングル)
  • 検査の目安歯周ポケット6mm以上=重度の可能性(要精査)
  • 至急(当日)受診:顔の腫れ/38℃以上の発熱/嚥下・呼吸のしづらさ
※数値・用語は歯科の検査指標(動揺度・プロービング深さ)と学会分類の考え方に基づく一般向けの目安です。

 

症状/所見 臨床の目安 受診目安
歯がグラつく・噛むと痛い・膿が出る 動揺度2–3、深いポケット、骨吸収の疑い 早期(数日以内)受診
「ポケットが深い」と言われた プロービング6mm以上=重度の可能性 早期(数日以内)受診
顔の腫れ・38℃以上の発熱・嚥下/呼吸困難 重篤感染(蜂窩織炎 等)の疑い 至急(当日)受診

※重症度判定はポケット深さのみで決まらず、臨床所見・画像所見・付着喪失量などの総合評価(2018新分類)で判断します。ポケット深さは一般向けの目安です。

歯周病の手遅れ症状チェック(原因の進行サイン)

次の症状は進行した歯周病で見られやすいサインです。1つでも当てはまる場合は放置せず、早めに歯科で検査を受けましょう。

歯周病 初期症状チェックはこちらを参考にしてください

歯がグラグラと動く

歯槽膿漏で歯がぐらついている。歯が抜けないように小人が支えているイラスト

歯を支える骨(歯槽骨)が大きく失われている可能性。ピンセットでの検査で動揺度2–3だと進行度が高い目安になります。
歯がぐらつく|原因と当日できる応急処置

噛むと痛い(咬合痛)

歯周組織の炎症・膿瘍や、噛み合わせの変化が背景にあることも。悪化しやすいサインなので受診を。

歯茎から膿が出る

歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)で細菌が増殖し膿がたまっている状態。潰す・押し出すなどの自己排膿は感染拡大の恐れがあり厳禁です。
歯茎から膿|原因と治療の流れ

強い口臭がある

膿・血・壊死組織に由来する揮発性硫黄化合物(VSC)が増加し、口臭が悪化します。歯周治療とセルフケアの併用が必要です。
口臭の原因と根本からの対策

歯茎が下がり、歯が長く見える

歯茎の退縮で歯根が露出。知覚過敏や清掃性の悪化につながります。
歯茎が下がる|原因と対処

歯並び・噛み合わせの変化/ブラックトライアングル

骨の支持が減ると前歯の隙間が開く・歯が傾くなどの変化が起きます。歯間乳頭が痩せて黒い三角形(ブラックトライアングル)が目立つことも。

受診目安(時間軸のガイド)

  • 至急(当日)受診:顔の腫れ、38℃以上の発熱、嚥下・呼吸のしづらさ(重篤感染の疑い)
  • 数日以内に受診:歯がグラつく/噛むと痛い/膿が出る/前歯が開いてきた
  • 48時間でセルフケアしても改善しない:痛み・腫れ・出血が続く → 受診

※市販鎮痛薬や冷却などは一時的な対処にすぎません。繰り返す場合や症状が強い場合は迷わず歯科へ。

できる治療と期待できること

スケーリング・ルートプレーニング(基本治療)

歯石やバイオフィルムを専用器具で除去。炎症を抑え、ポケットの改善を目指します。

歯周外科(フラップ手術 など)

深い部位の汚れを直視下で徹底除去。清掃性とメンテナンス性を高めます。

再生療法(条件適合時)

失った骨・歯肉の再生を目指す治療(移植/再生材料など)。適応は検査で判定します。

抜歯と補綴(インプラント・ブリッジ・入れ歯)

保存困難な歯は抜歯のうえで機能回復を検討。骨量不足では骨造成が必要なことも。

自宅でできる対策とNG行動

今日からのセルフケア

  • 歯ブラシ+デンタルフロス/歯間ブラシで歯と歯茎の境目をやさしく清掃
  • 「しみる・痛む」時は無理にこすらない(悪化を招きます)
  • 補助洗浄ツールの活用(例:アルカリイオン水のうがい・薄め洗浄)※治療の代替ではありません
    アルカリうがいの基礎
  • 喫煙・過度な飲酒・睡眠不足の見直し/よく噛む食事

やってはいけないこと

  • 膿を押し出す・潰す・針で刺すなどの自己排膿
  • 痛いところを強く磨く/爪楊枝で突く
  • 痛み止めだけで先延ばし(原因が残ると悪化します)
著者の一言アドバイス

「手遅れかも…」と感じたその日がターニングポイント。
数値(6mm・動揺度)とサイン(膿・噛む痛み)で“判断の迷い”を減らし、受診→原因除去→再発予防の流れへ。

よくある質問(FAQ)

Q1. 歯周病が手遅れになると、どんなリスクがありますか?

A. 歯を支える骨が失われ、最終的に抜歯に至ることがあります。噛む力低下や栄養・会話への影響、全身疾患(心血管・糖尿病等)との関連も指摘されています。

Q2. 歯がグラグラ=すぐ抜歯ですか?

A. 必ずしも抜歯ではありません。残存骨量・動揺の原因を評価し、基本治療や外科・再生療法で保存できる場合もあります。早めに精密検査を。

Q3. ポケットが6mm以上と言われました。様子を見てもいい?

A. 放置は悪化リスクが高い状態。早期受診で原因除去とメンテナンス計画を立てましょう。

Q4. 顔が腫れて発熱があります。市販薬で治りますか?

A. 自己対応は危険です。当日受診が原則。進行で入院や全身管理が必要になることもあります。

Q5. 自宅ケアでできる“手遅れ防止”のコツは?

A. 境目清掃(フロス/歯間ブラシ)、やさしいブラッシング、薄め洗浄などの刺激を抑えたケア+定期メンテナンスが基本です。

参考文献(実在リンク)

アルカリイオン水で歯周病を防ぐ