こんにちは、口腔ケアアンバサダー(一般社団法人 日本口腔ケア学会認定)の上林登です。監修:歯科衛生士 上林ミヤコ
30秒でわかる結論
8020運動とは、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動です。20本は、さまざまな食品を噛みやすい状態を保つための目安ですが、20本未満になったら手遅れという意味ではありません。
厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査では、8020達成者は61.5%でした。ただし、これは75歳以上85歳未満の調査結果から算出した推計値です。
今日から始めたいのは、歯と歯ぐきの境目の清掃、歯間ケア、甘い物の摂り方の見直し、症状に応じた歯科健診です。
「80歳まで歯を20本残せるだろうか」「すでに歯を失っているから遅いのでは」と不安になる方もいるでしょう。
8020は合格・不合格を決める数字ではありません。大切なのは、今ある歯を守ることと、歯を失っていても入れ歯などを適切に使い、噛む、飲み込む、話すといった口の機能を保つことです。
この記事の要点
- 8020運動の意味と20本が目標になった理由
- 最新の8020達成率と数字を見る際の注意点
- 自分の歯に含まれる歯、含まれない人工歯
- 歯を失う主な原因と受診したいサイン
- 今日から続けたい5つの予防習慣
次の図では、8020を目指すために確認したい項目をまとめています。

8020運動とは「80歳で自分の歯20本以上」を目指す運動
8020運動は「ハチ・マル・ニイ・マル運動」と読み、80歳になっても自分の歯を20本以上保つことを目指す運動です。
1989年に当時の厚生省と日本歯科医師会が提唱し、全国へ広がりました。親知らずを除いた永久歯は通常28本です。そのうち20本以上を保つことが、生涯にわたって食事を楽しむための一つの目標とされています。
ただし、8020は歯の本数だけを競う運動ではありません。治療した歯も含めて今ある歯を長く使い、口の清潔と噛む機能を守ることに意味があります。
なぜ80歳で20本の歯が目標なのか
20本以上の歯があれば、多くの食品を比較的噛みやすく、食事の選択肢を保ちやすいと考えられているためです。
奥歯を失って噛みにくくなると、肉、繊維の多い野菜、硬めの食品などを避けるようになり、食事内容が偏ることがあります。歯の状態は、食事の楽しみや会話、外出への意欲にも関係します。
ただし、同じ20本でも、歯の位置、歯周病の状態、噛み合わせによって噛みやすさは異なります。歯の本数だけでなく、次の機能も確認することが大切です。
- 左右の奥歯で食べ物を噛める
- 食事中にむせることが増えていない
- 口の乾燥が強くない
- 入れ歯が痛くなく、安定して使える
- 会話や発音に困っていない
最新の8020達成率は61.5%
令和6年歯科疾患実態調査による8020達成者の割合は61.5%で、前回の令和4年調査の51.6%を上回りました。
| 調査 | 8020達成者 | 確認事項 |
| 令和4年歯科疾患実態調査 | 51.6% | 75~84歳の結果から推計 |
| 令和6年歯科疾患実態調査 | 61.5% | 75~84歳の結果から推計した全国補正値 |
「80歳の人を全員調べたところ61.5%だった」という意味ではありません。各都道府県の人口規模が反映されるように補正された推計値である点には注意が必要です。
同じ調査では、過去1年間に歯科検診・健診を受けた人の割合は63.8%でした。ただし、健診受診率の上昇だけが8020達成率を高めたと断定することはできません。日常の清掃、虫歯治療、歯周病管理、生活習慣など複数の要因が関係すると考えるのが適切です。
8020で数える自分の歯とは
8020では、基本的に口の中に残っている自分の永久歯を数えます。被せ物や差し歯があっても、歯根が残っている歯は自分の歯として扱います。
| 歯の状態 | 数え方 | 補足 |
| 天然歯 | 数える | 治療していない自分の歯 |
| 銀歯・被せ物のある歯 | 数える | 自分の歯根が残っている歯 |
| 差し歯 | 数える | 自分の歯根を利用している場合 |
| ブリッジの人工歯部分 | 数えない | 支台となる自分の歯は数える |
| 入れ歯 | 数えない | 噛む機能を補う重要な治療 |
| インプラント | 数えない | 人工歯根を使用した歯 |
歯根だけが残っている場合など、自分で判断しにくい歯もあります。歯科健診で「現在歯は何本ありますか」と聞くのが確実です。
歯を失う主な原因は歯周病・虫歯・歯の破折
8020推進財団の2018年「第2回永久歯の抜歯原因調査」では、抜歯原因の上位は歯周病37.1%、虫歯29.2%、破折17.8%でした。
| 抜歯の主原因 | 割合 | 注意したいサイン |
| 歯周病 | 37.1% | 出血、腫れ、口臭、歯のぐらつき |
| 虫歯 | 29.2% | しみる、痛む、穴、詰め物の違和感 |
| 破折 | 17.8% | 噛んだ時の痛み、欠け、被せ物の動き |
歯周病は、進行するまで強い痛みが出ないことがあります。「痛くないから問題ない」と判断せず、出血やぐらつきなどの変化を見逃さないことが重要です。
歯ぐきの出血、腫れ、口臭が重なる方は、歯周病の症状と歯科を受診する目安を確認してください。
8020を目指すための5つの確認軸
歯を残すために確認したいのは、本数だけではありません。次の5つを順番に見直しましょう。
- 歯の本数:現在歯が何本あるか、失った部分を放置していないか
- 歯ぐき:歯磨き時の出血、腫れ、膿、ぐらつきがないか
- 歯間:フロスや歯間ブラシを使えているか
- 噛む機能:左右で噛めるか、避ける食品が増えていないか
- 定期管理:自分の状態に合った間隔で歯科を受診しているか
歯科受診を優先したいサイン
- 歯がぐらつく、噛むと痛い
- 歯ぐきの腫れ、膿、出血が続く
- 歯や詰め物が欠けた
- 入れ歯が当たって傷や痛みがある
- 口臭と同時に歯ぐきの異常がある
- 口内炎やしこりが2週間以上治らない
今日から続けたい5つの予防習慣
1.歯と歯ぐきの境目を軽い力で磨く
歯周病対策の基本は、歯と歯ぐきの境目に付着した歯垢を丁寧に取り除くことです。
強くこすると、歯ぐきや露出した歯根を傷めることがあります。毛先を境目に当て、小刻みに動かしてください。
2.フロスか歯間ブラシを取り入れる
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の歯垢を十分に除去しにくいため、歯間清掃も必要です。
隙間が狭い場所にはフロス、隙間がある場所には歯間ブラシが向いています。無理に太い歯間ブラシを入れず、サイズは歯科で確認してもらうと安全です。
歯間ケアと口臭の関係は、フロスで口臭はどこまで改善できるかで詳しく解説しています。
3.虫歯予防ではフッ化物配合歯磨剤を適切に使う
永久歯の虫歯予防では、年齢に合った濃度のフッ化物配合歯磨剤を適量使用する方法があります。
使用後のすすぎ方や量は、製品表示や歯科医師・歯科衛生士の説明に従ってください。乳幼児は年齢に応じた使用量を守る必要があります。
4.甘い物は量だけでなく回数を見直す
砂糖を含む飲食物を長時間または頻繁に摂ると、口の中が酸性になる回数が増えます。
甘い飲み物を少しずつ飲み続ける、飴を頻繁になめるといった習慣がある方は、飲食する時間を決めることから始めましょう。
5.歯科健診の間隔は口の状態に合わせる
健診やメンテナンスの適切な間隔は、歯周病の状態、虫歯リスク、治療歴、セルフケアの状況によって異なります。
「全員が年1回で十分」とは限りません。次回の受診時期を歯科医師や歯科衛生士に確認し、痛くなる前に状態を見てもらいましょう。
20本未満でも手遅れではない
80歳で20本未満でも、残っている歯の管理と補綴治療によって、噛む機能を維持できる場合があります。
歯を失った部分を長く放置すると、隣の歯が傾く、噛み合う歯が伸びる、片側だけで噛むといった変化が起こることがあります。主な治療選択肢は、入れ歯、ブリッジ、インプラントです。
| 方法 | 主な特徴 | 確認したい点 |
| 入れ歯 | 取り外して清掃でき、幅広い症例に対応 | 安定性、痛み、清掃方法 |
| ブリッジ | 固定式で、自分では取り外さない | 支えとなる歯への負担、清掃方法 |
| インプラント | 人工歯根で歯を補う | 手術、費用、全身状態、継続的な管理 |
適した方法は、残っている歯、顎の骨、全身状態、費用、清掃のしやすさによって異なります。歯科で説明を受け、長期的に管理できる方法を選びましょう。
著者からの一言
長年口臭相談を受けていると、口臭を消す方法ばかり探し、歯ぐきの出血や噛みにくさを後回しにしている方が少なくありません。
口臭は歯周病だけで起こるものではありませんが、出血、腫れ、ぐらつきが重なる場合は、セルフケア用品を替え続けるより歯科で検査を受けることが先です。8020への近道は、特別な方法を探すことではなく、小さな変化を放置しないことだと考えています。
8020運動についてよくある質問
80歳より若くても8020を意識する必要がありますか?
はい。歯を失う原因となる虫歯や歯周病は、80歳になる前から進行します。現在の歯の本数と歯ぐきの状態を確認し、若いうちから清掃と歯科での管理を続けることが大切です。
インプラントがあれば8020達成者になりますか?
いいえ。インプラントは人工歯根なので、通常は8020で数える自分の歯には含めません。ただし、失った歯の機能を補い、噛める状態を保つための選択肢の一つです。
すでに入れ歯を使っていても8020運動は関係ありますか?
はい。入れ歯を使っていても、残っている歯を守り、入れ歯を清潔で噛みやすい状態に保つことは重要です。歯の本数だけでなく、噛む、飲み込む、話す機能も確認しましょう。
まとめ|8020は今日の習慣から始まる
8020運動は、80歳になっても自分の歯を20本以上保つことを目指す運動です。令和6年歯科疾患実態調査による達成率は、75~84歳の結果から推計した61.5%でした。
20本は大切な目標ですが、下回ったら手遅れという数字ではありません。今ある歯を守り、必要に応じて入れ歯などで噛む機能を補うことにも大きな意味があります。
- 歯と歯ぐきの境目を軽い力で磨く
- フロスや歯間ブラシを使う
- フッ化物配合歯磨剤を適切に使う
- 甘い物を摂る回数を見直す
- 自分の状態に合った間隔で歯科を受診する
参考文献・参考リンク
- 厚生労働省:令和6年歯科疾患実態調査の結果
- 日本歯科医師会:8020運動
- 8020推進財団:8020運動とは
- 8020推進財団:歯を失う原因の第1位は歯周病
- 厚生労働省 e-ヘルスネット:歯の喪失の原因


