舌にできものが出来ると「舌癌では?」と不安になりますよね。癌の初期は口内炎と見分けがつきにくいので放置する人がいますが、先ずは舌癌のセルフチェックをすることをおすすめします。
口の中にできる癌を総称して口腔がんといい、舌癌は口腔癌の半数以上を占めています。癌は、舌のほか、歯肉、上あご、下あご、頬粘膜、口唇にもできます。
口腔癌、特に舌癌は、口内炎とできる部分が同じで勘違いすることが多く、ほっておいたら癌だったというケースもよくあります。
また、舌癌の初期は、痛みがないこととしこり以外の症状は、口内炎とよく似ているため見間違えやすいです。
気になる症状がある場合は、自己判断しないで早めに口腔外科や耳鼻咽喉科を受診するほか、がん検診を受けて早期発見につなげましょう。
この記事は口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登が書きました。
舌癌じゃなかった
私の「舌癌じゃなかった」という体験話です。ある日突然、舌の縁に紫色のできものが出来て気になっていました。大きな痛みはなく、歯に触れると少し痛いだけでしたのでそのままにしていました。
(舌の)粘膜下あるいは粘膜内に“水”が溜まると“水ぶくれ”ができます。この場合は、内容液の色により“水ぶくれ”の色が変化します。
舌のできものが気になると、舌が歯や入れ歯に触れないようにしていたのですが、そのできものの箇所で触っていたようです。
家族そろって夕飯の時です。焼酎のお湯割りを飲みながら、口内炎のことも忘れておかずを食べると「舌が痛い!」。舌の痛い箇所を指で触ると水泡が膨らんでいるのが分かりました。
看護師の娘に舌を見てもらうと、「癌かもしれないね。」と驚かされ、直ぐに鏡に直行。見ると、舌の縁に約1.5センチの紫色の水泡が出来ているのが分かりました。
ショックでしたが、それからも食事を続けていると、水泡が破れてしまい舌にくっ付きました。心配でしたが、翌朝見るとほとんど治癒していたのです。それから2~3日で完治したので安心できました。
舌に紫色の大きな水泡が出来たので不安でしたが、単なる口内炎でした。実は、この時に口内炎になった原因は、部分症義歯を入れていたからでした。舌の縁が常に、部分症義歯のクラスプやバー、義歯床の縁に触れていたことが口内炎になった原因だったのです。
舌癌の初期症状チェック
舌癌の初期症状
- 初期では痛みがない
- いつまでも治らなく悪化する
- しこりがあり硬い
自覚症状には、舌の硬いしこりやただれがありますが、痛みや出血があるとは限りません。舌の動きに対する違和感や舌のしびれがある、舌の粘膜に赤い斑点(紅板症)や白い斑点(白板症)ができている、口内炎が治りにくいなどの症状がみられることもあります。また、がんが進行した場合の症状としては、痛みや出血が持続する、口臭が強くなるなどがあります。
引用:国立がん研究センター
舌を観察することで早期に癌を見つけることができます。
舌がんは、鏡を使って、患部を自分で見ることができるがんです。舌の両脇の部分にできることが多く、舌の先端や表面の中央部分ではあまりみられません。舌の裏側などの見えにくい場所にできることもあります。
引用:国立がん研究センター
早期舌がんのステージⅠは2㎝以下。ステージⅡになると、2㎝以上4㎝未満です。
癌が進行すると、できものが大きくなり違和感が出ます。2㎝から3㎝になるとお医者さんを受診されるケースが多いようですが、もっと早く見つけることが出来ると、早くお医者さんにかかることができるので早期発見が大事です。
口腔がんが進行すると、肉が腐ったようなにおいの口臭を発することがあります。舌癌の口臭についてはこちらに詳しく載っていますのでご参考にしてください。
舌癌の初期症状チェック
毎日、舌の状態を観察することで早期発見・早期治療につながります。今からご紹介する点をセルフチェックしてください。
- 口内炎が2週間以上なおらない
- 舌に白板症や紅板症ができ、白いとか赤くなっていないか
- 治らないしこりはないか
- いつまでも腫れが治らない
- 舌粘膜のただれができて治らない
- 舌にしびれや麻痺がある
- 味覚障害になっている
- 少しの刺激でも痛い
- 舌を動かしにくい
- 食べ物が飲み込みにくい
セルフチェックをして、一つでも気になる点があれば歯科で診てもらうようにしましょう。
舌癌の写真
早期の舌癌(ぜつがん)は、これからご紹介する画像のようなできものが多いようです。
この部分にできていないからといって、「舌がんではない。」と決めつけるのもよくありません。簡単に素人判断で決めないで、お医者さんに診てもらうのが一番良いです。
出典:笠井耳鼻咽喉科クリニック 自由が丘診療所
出典:舌の病気・できもの辞典
出典:さくま歯科
口腔癌の前兆
口腔癌の初期は口内炎と変わりません。
わたしの知人も頬の粘膜に口腔がんの腫瘍ができました。当初、見た目は口内炎と変わりなかったので放置していました。
ところが、数日たっても炎症は治らないので、歯科医院を受診し「口内炎治療」をして。歯の治療も受けていたので、毎回、口内炎治療も受けたのですが、症状は一向に改善しません。
その時、やっと歯医者さんも「おかしい」と首を横に振り、口腔外科のある病院で検査を受けたら、「悪性の腫瘍です」と告知されたのです。
こんな風に、口腔がんは歯科医院でも分からないことが多いそうですので、2週間たっても治らない場合は、口腔外科など専門病院を受診されることをおすすめします。
まとめ
舌がんと口内炎の違いについてお伝えしました。初期の舌がんと口内炎はよく似ていて、形や色など微妙に違いがありますが、大きな違いは「口内炎は10日程で治る」が、「舌がんは治らない」ことです。
ですから、いつまでも治らない場合には、一人悩まずに病院で受診されることが大事です。また、癌は早期発見と早期の治療が大切ですので、口腔がん検診を受けるようにしましょう。
また、若い女性に舌がんが増えています。そして驚くことに、舌がんや喉頭がんの死亡率が子宮頸がんの死亡率を超えたことです。堀ちえみさんが舌がんを公表し社会的に関心が高まりましたが、手術後も食事や会話が十分にできないのでリハビリも大変な病気です。
舌がんの直接的な原因は分かっていないのですが、喫煙や飲酒が間接的に影響するともいわれていますので、喫煙・飲酒もほどほどにすることが大事です。
それと、口内が不清潔であると舌がんだけではなく口内炎のリスクも高まりますので、毎日丁寧な口腔ケアが大切です。
【引用・参考文献】
日本口腔外科学会 口腔外科相談室
国立がん研究センター
厚生労働省 がん対策情報
日本癌治療学会 がん治療ガイドライン 口腔がん
日本口腔腫瘍学会学術委員会 舌癌取扱い指針
東京医科歯科大学 顎口腔外科学分野 舌がん
大阪医科大学 耳鼻咽喉科 頭頸部外科 口腔癌
国立がん研究センター がん情報サービス 舌がん