舌痛症の治し方
舌痛症は口腔灼熱症候群の一つの症状ですが、Yahoo!知恵袋を見ると「歯科で舌痛症と診断されたが、治療法はないと言われました。」とか「舌先に痛みを感じるようになりました、治し方を教えてください。」という質問のほか、「安定剤を処方され、服用して4日間で症状はなくなったんですが、またヒリヒリ感が出てしまいました。」や「痛いときはミンティアをなめると日常生活に支障がなくなりました。」という方もおられました。
口腔灼熱症候群は、しばしば舌、口の痺れで、口内炎などの異常がない人にみられるものです。
引用:桑名眼科脳神経クリニック
舌がヒリヒリと痛くなるとつらいものですよね。ところが、舌が痛くなる舌痛症は、ストレスが影響していて、病院を受診しても原因不明なケースが多いです。
舌の「ヒリヒリ、ピリピリ」と痛む症状を舌痛症といいますが、舌が痛くても他に症状がない場合には、ほとんどが心因性が原因のようです。そのため、精神科を受診される方も多いようです。
心因性による舌痛症以外にも、カンジダが原因で舌がヒリヒリ痛くなったり、ドライマウスや過剰な舌磨きが悪影響しているなどの原因が重なっていることがあります。
舌が痛い時は、たとえ舌苔で舌が白い場合でも舌磨きをしないことが大事。そして、刺激性の強い歯磨きやアルコール含有のお口のリンスなどは避けるようにしましょう。
舌が痛いといっても、症状や原因が異なるため治療方法や処方薬も違ってきます。ですから、舌がと痛いからといって勝手な判断をしないことが大事です。
舌の痛みが続くようでしたら、歯科や口腔外科を受診されることをおすすめします。
今回の記事は、舌が痛い時の原因や治療方法などについてお伝えしますので、舌がヒリヒリと痛い場合には是非ご参考にしてください。
この記事は、口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登が書いています。
クリックできる目次
舌痛症の症状
舌がひりひりと痛む症状を舌痛症(ぜっつうしょう)と言います。舌痛症の症状としては、舌がひりひりする他に、ピリピリする、カーと熱くなる(やけどのような感じ)、ジンジンする、しみる、味覚異常、口腔乾燥感(口が粘つく)など患者さんによって訴えは様々です。
舌痛症には2つの種類があり、一つは原因の分からない舌痛症で、もう一つは、舌が痛む原因のある舌痛症です。
原因として、ストレス等の心因性要因が大きく影響していますが、歯列不正、口腔乾燥、舌の血流障害等が関与していることもあり、原因のよくわからないこともあります。
引用:東京医科大学 口腔外科学分野 舌痛症
舌痛症の原因は様々で、舌に口内炎ができて腫れたり荒れて痛むこともあります。また、カンジダや菌による感染の場合もあるので、舌が痛む時には受診されることをおすすめいたします。舌が痛いと不安になり、ストレスから更に痛むこともあります。舌の痛みが続く場合は、一人で悩まずに診察してもらうことが大切です。
関連記事:舌が白いのは口腔カンジダ症!?
舌の側面が痛い原因
舌の先端やその側面がヒリヒリ、ピリピリする場合の原因には次のようなことが考えられます。
- 口内炎・舌炎(ウイルス性、ストレスやビタミンB欠乏症などが原因のこともある)
- 舌粘膜の外傷(歯や詰め物の尖り、義歯の不適合、歯列不正などによる舌の傷)
- ドライマウス
- 舌癌(舌癌の9割以上は舌側面に発生する)
関連記事:舌癌と舌のできものとの違いはコレ!舌にできた口内炎が2週間治らなければ要注意
原因の分からない舌痛症
舌の表面がヒリヒリ、ピリピリと痛くなる舌痛症の原因は人によって様々ですが、病院のいろいろな科を受診しても「異常ないので心配ありません。」と告げられることもあります。舌痛症には、このように舌がヒリヒリと痛くても原因の分からないことがあります。
舌痛症は、舌がひりひりするのが一番の特徴で、他に焼けるよう、やけどをしたようなとか、ピリピリと痺れた感覚があります。また、原因の分からない舌痛症は、更年期の女性に多く、不安障害やストレスを抱えています。
舌がやけどをした後のようにひりひりと持続的に痛む舌痛症という疾患は、中高年の女性に多発傾向にあります。
引用:京都大学医学部附属病院 歯科口腔外科
病院で舌の痛みを訴えても異常がない場合には、心因性の「舌痛症」と診断されることが多いようです。
歯科や口腔外科、耳鼻科、内科、消化器科などいろいろな科を受診されても、「異常ないから心配ないです」「気のせいです」としかいわれないことが多いようです。
引用:北海道大学歯学部 口腔診断内科 舌のひりひりピリピリ
ストレスが原因
精神的なストレスや緊張状態は唾液の分泌を減少させます。 ストレスが慢性的に続くと、舌粘膜が乾燥し舌が痛くなることがあります。
また、ストレスが多いと舌の乾きから舌苔ができやすくなります。(舌が白いのも舌痛症の特徴の一つです。)
関連記事:口が苦い・舌が白いと悩んだら実践してほしい5つのこと
脳神経の混線
舌がヒリヒリ、ピリピリする原因について紹介しましたが、舌がヒリヒリ、ピリピリする原因で多いのは、原因不明による舌痛症です。
患者さんは舌が痛いと訴えるのですが、外見上の異常は見当たらないので治療方法もないようです。
舌に異常感を訴えるが、それに見合うだけの肉眼的な異常がないもの(局所所見、検査所見に異常のあるものを除き、心気症に近い病態で何らかの精神的要因が背景にあるもの)
引用:日本口腔外科学会 口腔外科相談室 舌が痛い
舌痛症は、脳の神経の混線が一因ではないかと推測されています。
この舌痛症になる人は40歳以上の女性に多く、まじめで几帳面な人が目立つようです。自臭症のタイプとよく似ていますよね。
また、半数ぐらいの人が歯の治療後に症状を感じており、口の中の環境の変化などが関わっている可能性もあるようです。
舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)
舌咽神経痛は、舌の奥にある神経の異常でおきる病気です。口を大きく開けたり、酸っぱい食べ物を食べた時にひどい痛みを感じます。
舌や喉の奥に我慢できないような強い痛みを感じるのが特徴です。口を開けた時に痛みを感じるので、顎の関節が痛いと感じる人が多いようです。
治療
2~3ヶ月、舌がヒリヒリ、ピリピリするようでしたら、口腔外科や耳鼻咽喉科などで検査を受けられたほうが良いでしょう。
この場合の舌痛症は、口内炎などのような舌のただれや傷など、見た目には異常がないため、経験の少ない医師の場合には、「気のせい」、「治療方法がない」と取り合ってもらえないこともあるようですので、専門医を探すことが大事です。
また、この場合には、舌がヒリヒリ、ピリピリするからといって、市販薬を飲んでも効きませんのでご注意ください。神経の異常が原因による舌痛症の場合には、神経内科を受けられることをおすすめします。
神経内科による治療では、主に「アミノトリプチン」など、痛みを和らげる抗うつ剤や抗てんかん薬を使うことが多いようです。こうした薬に抵抗感を持つ人もいますが、使用量はうつ病に比べると少なくてすみ、50年以上前から舌痛症に効果があることも分かっています。
痛みが続くとさらに不安が増し悪化するため、早めに薬で痛みを抑えることが大切です。
7割ぐらいの人に効果がありますが、便秘や眠気、口の乾きなどの副作用もあるため、薬の服用には慎重にならないといけないようです。
薬を服用することで、1ヶ月ぐらいで痛みが治まる人が多く、ぶり返さないように徐々に薬の量を減らしながら半年間ぐらい飲むそうそうです。
舌のヒリヒリやピリピリがいったん治まれば再発の心配はほとんどありません。ただし精神面の影響が強い場合は、カウンセリングや生活指導など精神科の治療も必要になることもあります。
対策としては、薬による治療だけではなく、睡眠不足を避け生活リズムを整えることも大切です。疲れると痛くなるようです。忙しいというような理由で眠る時間が少ないと脳が休まらず痛みも中々治まりません。
ガムやあめなどで痛みがまぎれることもあるようです。
参考記事:毎日新聞 2016.1.11 くらしなび 医療・健康
関連記事:舌がヒリヒリする「舌痛症」の原因と治し方
カンジダが原因の舌痛症
心因性以外の舌痛症で多いのは、口の中のカビ(カンジダ)だといわれています。
最近の研究では、舌痛を訴える患者さんのなかに別の要因が関係している場合があることがわかってきました。その1つ目は、口の中のカビ(真菌のカンジダ)です。
引用:北海道大学歯学部 口腔診断内科 舌のひりひりピリピリ
カンジタ性の口内炎
口の中にカビ(カンジタ菌)が増え、上あご・舌・唇などに白い苔状や赤い斑点やびらんができます。カンジダ菌による口内炎は歯肉にできることは少なく、舌に良くできます。だから、熱いお茶などを飲んだときに舌がヒリヒリします。
口腔カンジダ症の主な症状としては、
- 口内にクリーム状の斑点ができる。
- 唇の端にひび割れができる。(口唇炎)
- 舌が赤くなり痛みがある。舌が平滑になる。口腔カンジダ症には、舌に苔ができ真っ白くなる偽膜性カンジダ症と粘膜が赤くなりヒリヒリする萎縮性カンジダ症があります。
カンジタ菌は誰でも持っているものですが、体の調子が悪く免疫力が低下することで菌のバランスがくずれたり、抗生物質を長期間使用したことによって異常繁殖することでなることがあります。他にも、口腔乾燥や義歯の汚れが影響することがあります。
治療
口腔カンジタ症の治療方法は、口の中の局部に抗真菌剤を塗布する方法と、抗真菌剤を口に含む方法があります。
カンジダ菌が検出された場合は抗真菌剤の投与を、微量金属やビタミンの不足の場合はその物質を補充することで容易に症状は改善します。これらが該当しない場合、心因性と考えます。
引用:北海道大学歯学部 口腔診断内科 舌のひりひりピリピリ
二次性の舌痛症
二次性の舌痛症とはなんらかの原因があり、舌にヒリヒリやピリピリと痛みがあるものを言います。(先に説明したカンジダも二次性に分類されます。)
ドライマウス
ドライマウスはストレスでなることが多いです。それは、唾液の分泌は自律神経で決まるからで、緊張や不安が多くなると交感神経が活発になり唾液が出なくなるのです。
難病指定のシェーグレン症候群や加齢などによって、ドライマウス症になることがありますが、口の中が乾燥すると舌の表面に舌苔(ぜったい)ができたり、傷つきやすくなるため、ヒリヒリ、ピリピリと痛むことがあります。
シェーグレン症候群は唾液や涙が出ない難病指定の病気です。
シェーグレン症候群などによって舌がパサパサに乾いている場合には、少しの刺激でもヒリヒリピリピリと痛みを感じます。
異常に舌や口腔が乾く場合には、シェーグレン症候群かもしれないので早めに歯科や内科を受診されることをお勧めします。
関連記事:自宅でできるドライマウス対策
舌の口内炎
口内炎になると、中心部が楕円形に白くなり、その周囲が赤く腫れます。軽く触れるだけでも、痛みを感じピリピリします。
次のようなことが原因となって口内炎がおきます。
- 亜鉛・鉄・ビタミンの欠乏症
- 疲れやストレスにより免疫力が低下
- 義歯のクラスプや被せなどが破損し尖った部分が舌に当たる
- 精神的ストレス
舌に口内炎ができても、普通は日にちが経過すると自然と治っていきます。ところが、中々治らない場合には、舌がんの可能性もあるので放置してはいけません。
治りが遅い場合は、一日も早くお医者さんに診てもらうことをおすすめします。
口内炎ができたときには、刺激のある食べ物を控えたりすることが大事ですが、ビタミンなど多く含まれる食べ物を多くとるようにしないといけません。口内炎ができた時の対策について詳しくは、『口内炎が治らない!それってビタミン不足や食べ物が原因?塩で治る!?』をご参考にしてください。
舌磨きのし過ぎ
舌が痛む原因に、過剰な舌磨きが原因のことがあるのでご注意ください。
舌が白くなる(または黄色くなる)と、見た目が悪いだけではなく、口臭もでるようになります。舌が白くなっているものを舌苔(ぜったい)といいます。詳しくは『舌が白い人は舌苔です。舌苔を取り除く7つの方法とは?』をご参考にしてください。
舌磨きを過剰に行っていると、デリケートな舌粘膜を傷つけてしまいます。傷がつくと細菌が繁殖し化膿します。そのことによって、舌が「ヒリヒリ」することがあります。
もし、今も舌磨きを行っているのでしたら、直ぐにやめることをお勧めします。
「でも、舌を磨かなかったら。。。(白くなってしまう。)」
そのようにご心配されているのでしたら、美息美人(びいきびじん)をお使いになってみてはいかがでしょう。詳しくは『舌苔や口臭をうがいだけで取り除くことができる美息美人とは?』をご参考にしてください。
関連記事
舌磨きはしないほうがいい!?舌磨きのメリット・デメリットと正しい舌ケアの方法を解説
舌がんが原因
舌がピリピリと痛むと「舌がんではないだろうか?」と心配されるかもしれませんね。しかし、初期の舌がんでは痛みがありません。持続的に舌が痛く感じる頃には癌が進行しているので、初期に発見することが大事ですので、早目に病院で診察や検査を受けることが大切です。
舌痛症の治療
何科に行けば良い
舌が痛い時には、一般的には耳鼻科や歯科、口腔外科を受診することをおすすめします。。歯科医は、歯だけではなく口腔内のことについては良く分かっているので、治療ができないケースでも診断することはできます。
舌が痛いと言っても、その原因は異なります。義歯のクラスプなどとがった物に舌が当たり傷が出来、舌が痛い場合もあれば、口内炎ができて痛いこともあります。しかし、舌の痛みはそのようなケースだけではなく、ストレスなどが原因による精神的な舌痛症もあります。
傷や炎症で舌が痛い時には、歯科や口腔外科で治療が可能ですが、精神的な原因による舌痛症の場合には、精神科や神経内科が専門になります。
舌が痛い場合の薬
これまで舌が痛い場合の原因についてお話しました。舌が痛いといっても口内炎が原因の場合もあれば、神経系の病気かもしれませんし、過剰な舌磨きが原因のこともあります。
ですから、症状や原因によってお薬が違ってきます。
【口内炎で舌が痛い場合のお薬】
- 口内炎パッチ 大正クイックケア(パッチ)
- ケナログA口腔用軟膏(塗り薬)
- トラフル ダイレクト(パッチ)
- トラフル錠(飲み薬)
- チョコラBBプラス (飲み薬)
【口腔カンジダ症のお薬】
ファンギゾンシロップやフロリードゲル経口用などの真菌薬
【ドライマウスで舌が痛い場合】
ドライマウスに効く市販薬はありませんが、舌に塗る保湿ジェルがおすすめです。乾燥を防ぐ働きがあるのでヒリヒリ感が和らぐ効果が期待できます。保湿ジェルについて詳しくは、『舌が白いなら保湿ジェルをつけるのがおススメ。なぜおススメなのか・・・』をご参考にしてください。
【神経系が原因の舌痛症のお薬】
市販薬はありません。神経内科などで痛み止めなどのお薬が処方されます。
どの場合も自己判断でお薬を購入するのではなく、薬剤師さんやお医者さんにご相談されてから使うことが大事です。
まとめ
舌がひりひりして痛いといっても、その原因は様々です。一時的な口内炎の場合もありますが、舌がんのような病気の場合もあるかもしれません。ですから、舌が痛むときにはお医者さんに診てもらうことが大事です。
舌痛症で案外多いのが、脳神経の混線など心因性によるものだということに驚かれたかもしれません。治療を受けても舌の痛みが治らない場合には、神経科の治療が必要になることもあります。
このほか、病気ではないのですが、舌の磨きすぎで舌がヒリヒリと痛んでいる人も多いようです。この場合は、舌を磨かないようにすれば痛みはなくなりますが、「舌が白い」という問題が残ってしまいます。
舌を磨かかずに舌苔をきれいにするためには、口臭予防歯磨き粉「美息美人(びいきびじん)」をおすすめします。
【引用・参考文献】
京都大学医学部附属病院 歯科口腔外科
北海道大学歯学部 口腔診断内科 舌のひりひりピリピリ
東京医科大学 口腔外科学分野 舌痛症
日本口腔外科学会 口腔外科相談室 舌が痛い