口が苦い!舌が白い!
口腔ケアアンバサダー(社団法人口腔ケア学会認定)の上林登です。
母は、生前いつも「口が苦い!」「舌が苦い!」「息が臭い!」と訴えていました。口の中を覗くと、舌苔が厚く付いて舌が白く、唾もネバネバでした。口の中が苦くなる症状は高齢者だけがなるものではなく、誰にでも起きるドライマウス特有の症状です。
口が苦い、口が乾燥する、舌が白い、口臭などの症状は、一見異なる症状に見えますが、実はどれも唾液の分泌量の減少によるドライマウスが原因です。母の場合は、自律神経のバランスが乱れたことから口腔乾燥を起こしていました。
50歳以上の女性に多い疾患「ドライマウス」
出典:総合南東北病院
唾液の分泌量が減少すると、細菌が増殖して唾液の中にVSC(口臭物質)が溶け込み、口が苦くなります。そして、舌の白い苔が目立つようになります。
舌苔(ぜったい)ができると口が苦くなるだけではなく、口の中が粘つき口臭も強くなるのでご注意ください。
そこで、今回の記事では、口が苦くなる原因と治し方についてお伝えします。味覚障害でお困りでしたら是非ご参考にしてください。
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この記事の目次
口が苦い・舌が白い…原因
口の中が苦く、舌が白くなっている。この二つの症状が重なっている場合には、考えられる原因としては、唾液の分泌低下が大きく影響しており、次のようなものがあります。
- 加齢(更年期障害、唾液腺の機能障害など)
- 自律神経失調症(ストレス、精神緊張など)
- 薬の副作用(利尿剤や抗うつ薬など)
- 睡眠障害(眠りが浅いと交感神経が活発になりネバネバの唾液になる)
唾液量が減少すると、口腔内の自浄作用が不良となり、細菌が増殖して、虫歯、歯周病、口腔カンジダが発生しやすく舌苔の原因になります。唾液がネバネバで細菌が増えると、口の中がまずく感じるようになります。
口の中が苦い…考えられる原因
口の中が苦い場合には、次のようなことが原因になっていると考えられます。
- 低亜鉛血症(亜鉛不足が味覚障害を起こす)
- 風邪(免疫低下で舌が白くなる)
- 自律神経の乱れ(唾液量が減少して舌苔が増える)
- 疲労・睡眠不足(自律神経が乱れて舌が白くなる)
- 逆流性食道炎(胃酸が食道まで上昇して、口の中が苦いと感じる)
- 肝硬変(肝機能の低下によって呼気が苦いと感じる)
- 腎臓病(腎機能障害を起こすと亜鉛が排出される)
- つわり(ホルモンバランスが崩れて味覚障害を起こす)
- 更年期障害(口が苦いなど味覚障害を起こす)
- 味覚障害(加齢によって味蕾が減少するなど)
- がん(抗がん剤の副作用)
- 薬の副作用(利尿剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤、抗パーキンソン剤、抗うつ剤)…出典:国立熊本病院
- 新型コロナウイルス感染症(急に味覚異常を認めた時はPCR検査を受けましょう)
舌が白い…考えられる原因
舌が白いのは舌苔量が増えているからです。舌苔(ぜったい)は、舌の上に食物カスと唾液が溜まり、細菌が繁殖してプラーク(白い苔)となったものです。
舌が白くなる(舌苔)の原因は…
- 唾液の分泌低下
- 免疫低下
- 自律神経のバランスの崩れ(交感神経が優位)
口の中が苦いのは舌苔が原因

口の中が苦くなる原因は様々ですが、唾液の分泌量が減少することで苦みを感じるようになります。また、口の中が乾燥すると舌苔量が増えます。
舌苔が厚くなると、苦みを感じたり、口の中がまずく感じるなどの味覚障害を起こす人が多いです。
舌苔は、舌の表面や舌乳頭の間に付着した細菌や、口の中からはがれ落ちた粘膜細胞、食べ物のかすなどから構成されています。厚く積もった舌苔が味を感じる味蕾を覆い、健全な味覚の障害となると考えられています。
引用:グリコ健康科学研究所
口の中が苦くなる原因で意外と多いのは、舌苔(ぜったい)によるものです。上図で舌の白くなっている部分が舌苔(ぜったい)です。舌苔は食べかすや細菌の集まり(プラーク)から出来ます。
⇒⇒ 舌が白いのは舌苔(ぜったい)!原因・対策・予防・よくある質問
舌苔(ぜったい)が出来ると、臭い物質が産生され唾液中に溶け込むために苦味を感じるようになります。
また、舌苔ができる人の場合には、唾液の分泌が少なく口腔が乾燥していることが多いです。そのため、舌苔ができると「苦い」と感じるようになります。

それに、舌苔(ぜったい)ができると、口の苦みだけではなく口臭を発生するので、ストレスもたまりやすくなります。精神的なストレスは唾液を減少させ、口腔細菌を増殖することになり、「口の苦み」や口臭を悪化させるのでご注意ください。
「口の苦み」を解消させるには、口腔ケアを十分にし口腔環境をキレイにし舌苔を予防することが大切です。
舌苔(ぜったい)を取り除き口臭をしないようにするには、こちらを参考にしてください。
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舌苔を除去する方法はどれが一番効果があるか調べてみて分かった!
口が苦い・舌が白いのは自律神経の乱れが原因
ストレスや更年期障害は自律神経のバランスを乱して、口腔乾燥を起こしやすくなります。口がネバネバして苦くなるのは自律神経のバランスが崩れていることが原因かもしれません。
引用:口が乾くのはストレスが原因!?ストレス性ドライマウスについて
ストレス

ストレスが原因で味覚障害を起こすことがあります。
味覚障害の原因としては,亜鉛欠乏,薬剤,糖尿病,腎不全などの全身疾患,感冒,舌粘膜疾患,心因性などが挙げられます。
引用:日本医事新報社
唾液の分泌は、交感神経と副交感神経に作用されています。ストレスがたまると唾液の分泌が減少してしまうので、舌苔(ぜったい)や膿栓(のうせん)ができやすくなり口臭が強くなります。
また、舌苔(ぜったい)は口の中が苦くなったり口臭の原因にもなります。口臭の根本的な原因であるストレスがたまらないようにすることが大事です。
ところが、ストレスというとほとんどの人は精神的ストレスを想像するかもしれませんが、じつは、空気の汚れや騒音、口の汚れなどのような環境ストレスもあります。
そして、歯磨き粉に含まれている合成界面活性剤などの添加物が身体にストレスを及ぼすことも。もしかすると、今使用している歯磨き粉が、「口の苦み」の原因になっているかもしれないのです。
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更年期

「更年期だから口が苦い」という方がおられます。本当でしょうか?
舌痛症の発症頻度は、全人口の0.7-3%に発症するとされており、特に更年期の女性に多く発症します。
閉経後の女性における有病率は、12-18%とも言われています。引用:わだ歯科クリニック
更年期になると自立神経が乱れるなどによって唾液が減少しやすくなります。そのため、味覚障害になることも珍しくありません。
唾液の量が減ると食べ物の味物質が溶け出しにくくなったり、舌の表面の味を感じる細胞(味蕾・みらい)が働きにくくなるために、味覚障害が起こります。原因としては、加齢をはじめ、良く噛まないで早食いをする食生活、生活習慣病、精神的なストレス、薬の副作用などが挙げられます。
引用:タケダ健康サイト
確かに更年期になると、口が苦くなることがあります。しかし、「更年期だから仕方ない」と片付けてしまうのはどうかなと思います。
実は、更年期で口が苦くなるのは次のようなことが要因になっているからです。
- 自律神経が乱れ、唾液分泌が減少する。
- 加齢とともに歯周病率が高くなるため、口内環境が悪い。
- 加齢により、唾液腺の働きが衰える。
- 残存歯が少なくなり咀嚼回数が減ることによって、唾液分泌が減る。
- 加齢とともに、薬の服用率が高くなることで副作用で唾液が減る。
- 加齢とともにドライマウスになりやすく、舌苔が出来る。
このように、更年期になると様々な「口が苦くなる」要因が増えます。だから、口が苦いからといって更年期のせいにするのではなく、直接影響している原因を改善することが大切です。
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まとめ
高齢になるほど「口が苦い・口がまずい」と困っている方が多いです。また、口がまずい場合には、口臭がしていることがよくあります。これは、唾液量が少ないことが影響しているからです。
また、喫煙、ストレス、ドライマウス、体調不良、更年期、薬の副作用、などが、味覚異常を引き起こす原因になるのでご注意ください。
味覚障害は病気が原因のこともあるので、一人で悩まずにお医者さんに診てもらうことをおすすめします。
【参照リンク・参考文献】
・北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室
・兵庫医科大学 耳鼻咽喉科 頭頸部外科教室
・北海道大学 歯学部 口腔診断内科 味覚障害
・厚生労働省 薬物性味覚障害マニュアル
・日本歯科医師会 歯とお口のことなら何でも分かるテーマパーク8020
・日本口臭学会 口臭と口臭症に関連する用語
・日本耳鼻咽喉科学会 代表的な病気
・日本口臭学会誌 口臭への対応と口臭治療の指針2014
・日本口腔ケア学会