舌スクレーパーのデメリット – アーユルヴェーダ式スプーンのリスクと正しい使用法

舌スクレーパーのデメリット:アーユルヴェーダ式スプーンの使用に伴うリスク

口腔ケアアンバサダー(社団法人 口腔ケア学会認定)の上林です。

舌スクレーパーによるアーユルヴェーダの舌磨きは、口臭予防と健康に良いと言われていますが、ご存知でしょうか?
アーユルヴェーダと言って、5,000年の伝統をもつインド・スリランカが発祥の伝統的医療や健康法の中に、(スプーンの形状をした)タングスクレーパーを使用する「舌磨き」があったのです。

出典:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』

中医学の漢方でも、舌苔ができるのは病気になる前のサインだと言うことで「舌診」を行いますが、舌苔自体には細菌が集まっているので、スプーンで舌磨きをして舌苔を取り除くことは、健康のためには良いことだということは、世界の共通なのですね。

しかし、間違った仕方で舌磨きを行うと、舌を傷つけて痛くなったり、味覚障害になったり、口腔が乾燥して、口臭が強くなってしまうこともあります。

そのようなことにならないために、今回は「舌スクレーパーのメリット・デメリット」について詳しくお伝えしたいと思います。

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タングスクレーパーのメリットとデメリット

タングスクレーパーの使用に関して、舌苔の除去と口臭の改善に及ぼす効果、およびデメリットに関する研究論文の情報は以下の通りです。

メリット:

  1. 舌苔除去効果: Choi et al.(2021年)の研究によると、タングスクレーパーを使用することで、舌の表面から舌苔を効果的に除去できることが示されています。また、舌苔除去は口臭を軽減するのに役立つとされています(Choi et al., 2021)。
  2. 口臭の改善: 同じくChoi et al.(2021年)の研究では、タングスクレーパーの使用により口臭が有意に減少することが報告されています。これは、舌表面の細菌数を減少させ、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物(VSC)の生成を抑えることによるものです。

デメリット:

  1. 感染症のリスク: Redmond et al.(2007年)の症例報告によると、タングスクレーパーの使用後に感染性心内膜炎を発症したケースが報告されています。この症例は極めて稀ですが、タングスクレーパーの使用によって細菌が血流に侵入するリスクがあることを示唆しています(Redmond et al., 2007)。
  2. 不快感や嘔吐反射の誘発: Moccelin et al.(2021年)の研究では、タングスクレーパーの使用が一部の人に不快感や嘔吐反射を引き起こす可能性があることが指摘されています。これは、舌の敏感な部分に触れることによるものです(Moccelin et al., 2021)。

以上の研究結果に基づき、タングスクレーパーは舌苔の除去と口臭の改善に効果的ですが、使用に際しては感染リスクや不快感などのデメリットに注意が必要です。

アーユルヴェーダ式スプーン舌磨きの基本

アーユルヴェーダにおける舌磨きは、口腔衛生の重要な側面とされています。古代インドの伝統的な健康法であるアーユルヴェーダでは、特にスプーン型の舌スクレーパーの使用が推奨されています。この方法は、口臭の減少や口腔内の清潔さを促進することで知られています。

タングスクレーパーの正しい使用ステップ

  1. タングスクレーパーの選択 : 様々な種類のタングスクレーパーがあります。プラスチック、金属、または他の素材で作られている場合があります。選択は個人の好みや快適さによって異なります。

  2. スクレーピングの方法 : タングスクレーパーを舌の後部に置き、舌の先端に向かって軽く押し付けます。この動作を数回繰り返し、舌の表面から舌苔を取り除きます。適切にタングスクレーパーを使用することで、口腔内の揮発性硫黄化合物(VSC)を減少させる効果があります。

  3. 使用頻度と時間 : 一般的に、タングスクレーパーは1日に1~2回使用されます。一部の研究では、朝と夜に使用することが推奨されています。Haas et al.(2007年)の研究では、タングスクレーピングが朝の口臭に与える影響が評価されています(Haas et al., 2007)。

  4. 清潔保持 : 使用後は、タングスクレーパーを水で洗い流し、清潔に保ちます。

タングスクレーパーの適切な使用方法は、適切なタイプのスクレーパーを選択し、舌の後部から先端に向かって軽く押し付けてスクレーピングを行い、定期的に使用し、清潔に保つことが重要です

舌スクレーパー使用時の潜在的な問題点

しかし、日本口臭学会第4回学術大会で発表された日本歯科大学の研究によると、「舌スクレイパー(スプーン)を使ったケースで組織炎症が観察された」という報告があります。特に、舌の糸状乳頭の損傷が激しいと指摘されており、乳頭の断裂や剥離が確認された事例も報告されています。

※舌ブラシ・舌スクレイパーともに清掃により乳頭・乳頭周囲からdebris(残骸、破片)が除去されている様子が観察された。舌スクレイパーでは組織損傷とみられる所見が一部観察された。特に糸状乳頭の損傷が激しく、乳頭の断裂や剥離が認められた部位もあった。

引用:演題「効果的な舌清掃を行なうための舌清掃器具についての検討」日本歯科大学新潟病院、日本歯科大学新潟短期大学、日本歯科大学新潟生命歯学部 デンタルプロ(株)

たとえ、古代からあるアーユルヴェーダで使われているスプーン(舌スクレーパー)だと言っても、正しく、優しく磨かないと舌乳頭を傷つけてしまうのでご注意ください。

舌スクレーパー使用の正しい方法

これらのリスクを軽減するためには、正しい使用方法が不可欠です。舌スクレーパーを使う際には、優しく、適切な圧力をかけることが重要です。強すぎる圧力や不適切な使い方は、舌の敏感な組織を傷つける可能性があります。

代替の口腔衛生ツールの検討

舌スクレーパーの使用に不安を感じる場合は、他の口腔衛生ツールの使用も検討する価値があります。たとえば、柔らかい毛の舌ブラシは、舌の表面を傷つけるリスクを減らしつつ、効果的な清掃が可能です。

アーユルヴェーダ式舌磨き:実際の効果

昨日も、お客様から「舌が白いのですが、スプーンで舌磨きをしてもいいですか?」との問い合わせがありました。

私「えっ?スプーンですか?」と聞くと、
お客様「(舌苔をスプーンで取る方法が)ネットで紹介されていたので、良いと思ったものですから。」

早速、私もネットで調べてみました。すると、、、

舌磨きの始まりは、インドの伝統医療であるアーユルヴェーダ(生命科学)の一つだったようです。

アーユルヴェーダは、毎日の生活に瞑想やヨガ、オイルマッサージ、呼吸法、ハーブを用いた食事療法を取り入れて健康な心身をつくるのが目的です。実は、この健康法によって舌苔が予防できるのです。

そして、インド仏教で舌磨きを行うようになったのは、次の理由からでした。

体の中から口に出てきた毒素「アーマ」を取り除くためです。古代のインド仏教では、口の汚れを不浄として嫌っていて、僧侶は口臭を気にしていたようですが、結果的には健康を守ることになったのでしょう。

ということは、すでに、舌磨きで口臭予防ができると分かっていたのですね。

その伝統からでしょうか、インドでは舌磨き専用の器具「タングスクレーパー」が、口腔ケアに使われているそうです。(※どこでも安易に購入可能)

舌ブラシ・舌クリーナーはAmazonで購入可

Amazonで「スプーン、舌磨き」と検索すると、多くの舌ブラシと舌クリーナーがありました。日本でも、アーユルヴェーダの「タングスプレーパー」を使う人が多いことに、少し驚いています。
ご参考までに…

  • 舌ブラシ 舌磨き 舌クリーナー 口臭ケア ダブル対策(2,299円)
  • 舌ブラシ 舌クリーナー 舌みがき タングスクレーパー 口臭予防 SD-17 lobon(699円)
  • Neory 舌ブラシ 舌磨き 舌クリーナー 舌苔(780円)
  • 銅製タングスクレーパー(舌みがき)日本製(1,480円)

専用の舌クリーナー(タングスクレーパー)がなくても、家庭にある大きめのスプーンで代用できます。

舌を磨いても舌苔が取れない場合は、「舌苔が取れない7つの理由」をご参考にしてください。

舌磨きは口臭予防に効果がある

アーユルヴェーダだからといっても、スプーンを使った舌磨き(舌苔の除去効果)には期待しない方がいいです。それでも、インドで「舌磨き」を取り入れているのは、どういうことだと思いますか?

それは、口臭を予防できるからです。

舌のひだひだ(舌乳頭)の間には、汚れた唾液がたまり口臭の原因になります。ですから、タングスレーパーの代わりにスプーンの裏を使って、舌の汚れ(ネバネバの唾液)を掻き出すことで、口臭予防が期待できると思います。

しかし、頑固な舌苔を取る方法としては、アルカリイオン水でうがいをしてから舌を磨くようにする方がよく取れます。舌苔ケアはケースバイケースで柔軟に対処しないといけないので、ご自身の舌の状態に適した舌苔除去の方法を見つけられてはいかがでしょう。

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