スプーンを用いた舌苔の取り方
口腔ケアアンバサダー(社団法人口腔ケア学会認定)の上林です。
アーユルヴェーダの舌磨きは、口臭予防と健康に良いと言われていますが、ご存知でしょうか?
アーユルヴェーダと言って、5,000年の伝統をもつインド・スリランカが発祥の伝統的医療や健康法の中に、(スプーンの形状をした)タングスクレーパーを使用する「舌磨き」があったのです。
中医学の漢方でも、舌苔ができるのは病気になる前のサインだと言うことで「舌診」を行いますが、舌苔自体には細菌が集まっているので、スプーンで舌磨きをして舌苔を取り除くことは、健康のためには良いことだということは、世界の共通なのですね。
しかし、間違った仕方で舌磨きを行うと、舌を傷つけて痛くなったり、味覚障害になったり、口腔が乾燥して、口臭が強くなってしまうこともあります。
そのようなことにならないために、今回は、スプーンを用いる「アーユルヴェーダの舌磨き」について詳しくお伝えしたいと思います。
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舌苔の取り方
タングスクレーパーによる舌磨きの仕方
タングスクレーパーというのは、スプーン状のU字型舌クリーナーのことで、使い方は簡単で、舌全体を一度に掻き出すことができるので効率が良いのがメリットです。
【舌磨きの仕方】
1、 タングスレーパーのU字部を舌の奥に置いて舌の汚れ(舌苔)を掻き出す。
2、 水でうがいして吐き出す。
3、 これを2~3回繰り返す。
※舌磨きのコツ(注意するポイント)
舌苔が分厚く頑固な場合は、はちみつや舌ジェルを塗り込み舌苔を柔らかくしてから磨くと、舌苔が取れやすくなります。また、舌がヒリヒリするなど痛みがある場合は、舌磨きした後に保湿ジェルを塗るようにしてください。
>>舌苔がはちみつで取れた!?蜂蜜で舌苔ケアが出来るか調べました
スプーンを用いた舌磨きの仕方
市販の金属製スプーンで舌磨きをして、舌苔のケア(口臭予防)ができるのでしょうか?
というわけで、お家で使っている「スプーン」を代用して実際に行ってみました。その効果(感想)は…
1、 スプーンの裏(膨らみ部)を使って舌を掻くと、まったく舌苔は取れませんでした。
2、 次にスプーンの表(凹み部)を舌に向けて舌を掻くと、苔は少し取れたが、舌乳頭が白く逆立ち見苦しくなった。
3、 スプーンの縁を使って舌を磨くと、舌がひりひりと痛くなった。
4、 舌の奥の苔を取ろうとスプーンを入れた時に「おえっ」と嘔吐反射が。
スプーンではなく歯ブラシで舌磨きをしても、舌苔を完全に除去することはできないことは分かっていたのですが。。
舌苔は単なる汚れではありません。
舌苔ができるのは、舌乳頭の角化から起きます。舌乳頭に角質ができると細菌や真菌が付きます。そして、角質に菌糸を張り、舌と苔が一体化します。まるで、カビと同じです。
専用の舌ブラシで舌を磨いても、舌苔を取ることは不可能です。舌苔はただの汚れではなく舌の角化と細菌が原因だからです。
スプーン(アーユルヴェーダ)舌磨きのデメリット
ここまでスプーン(アーユルヴェーダ式)を使う舌磨きについてご説明させていただきましたが、残念なお知らせがあります。
実は、日本口臭学会第4回学術大会の日本歯科大学の演題に「舌スクレイパー(スプーン)を使ったケースで組織炎症が観察された」との表記を発見したのです。
※舌ブラシ・舌スクレイパーともに清掃により乳頭・乳頭周囲からdebris(残骸、破片)が除去されている様子が観察された。舌スクレイパーでは組織損傷とみられる所見が一部観察された。特に糸状乳頭の損傷が激しく、乳頭の断裂や剥離が認められた部位もあった。
引用:演題「効果的な舌清掃を行なうための舌清掃器具についての検討」日本歯科大学新潟病院、日本歯科大学新潟短期大学、日本歯科大学新潟生命歯学部 デンタルプロ(株)
たとえ、古代からあるアーユルヴェーダで使われているスプーン(舌スクレーパー)だと言っても、正しく、優しく磨かないと舌乳頭を傷つけてしまうのでご注意ください。
アーユルヴェーダ式舌磨き
昨日も、お客様から「舌が白いのですが、スプーンで舌磨きをしてもいいですか?」との問い合わせがありました。
私「えっ?スプーンですか?」と聞くと、
お客様「(舌苔をスプーンで取る方法が)ネットで紹介されていたので、良いと思ったものですから。」
早速、私もネットで調べてみました。すると、、、
舌磨きの始まりは、インドの伝統医療であるアーユルヴェーダ(生命科学)の一つだったようです。
アーユルヴェーダは、毎日の生活に瞑想やヨガ、オイルマッサージ、呼吸法、ハーブを用いた食事療法を取り入れて健康な心身をつくるのが目的です。
そして、インド仏教で舌磨きを行うようになったのは、次の理由からでした。
体の中から口に出てきた毒素「アーマ」を取り除くためです。古代のインド仏教では、口の汚れを不浄として嫌っていて、僧侶は口臭を気にしていたようですが、結果的には健康を守ることになったのでしょう。
ということは、すでに、舌磨きで口臭予防ができると分かっていたのですね。
その伝統からでしょうか、インドでは舌磨き専用の器具「タングスクレーパー」が、口腔ケアに使われているそうです。(※どこでも安易に購入可能)
舌ブラシ・舌クリーナーはAmazonで購入可
Amazonで「スプーン、舌磨き」と検索すると、多くの舌ブラシと舌クリーナーがありました。日本でも、アーユルヴェーダの「タングスプレーパー」を使う人が多いことに、少し驚いています。
ご参考までに…
- 舌ブラシ 舌磨き 舌クリーナー 口臭ケア ダブル対策(2,299円)
- 舌ブラシ 舌クリーナー 舌みがき タングスクレーパー 口臭予防 SD-17 lobon(699円)
- Neory 舌ブラシ 舌磨き 舌クリーナー 舌苔(780円)
- 銅製タングスクレーパー(舌みがき)日本製(1,480円)
専用の舌クリーナー(タングスクレーパー)がなくても、家庭にある大きめのスプーンで代用できます。
舌を磨いても舌苔が取れない場合は、「舌苔が取れない7つの理由」をご参考にしてください。
舌磨きは口臭予防に効果がある
アーユルヴェーダだからといっても、スプーンを使った舌磨き(舌苔の除去効果)には期待しない方がいいです。それでも、インドで「舌磨き」を取り入れているのは、どういうことだと思いますか?
それは、口臭を予防できるからです。
舌のひだひだ(舌乳頭)の間には、汚れた唾液がたまり口臭の原因になります。ですから、タングスレーパーの代わりにスプーンの裏を使って、舌の汚れ(ネバネバの唾液)を掻き出すことで、口臭予防が期待できると思います。
しかし、頑固な舌苔を取る方法としては、アルカリイオン水でうがいをしてから舌を磨くようにする方がよく取れます。舌苔ケアはケースバイケースで柔軟に対処しないといけないので、ご自身の舌の状態に適した舌苔除去の方法を見つけられてはいかがでしょう。