歯周病と食事 – 避けるべき食品と推奨食品
口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登です。
歯周病は、多くの大人が直面する口腔の健康問題です。この病気が進行すると、歯を失う原因ともなり得ます。しかし、日々の食事が歯周病の進行にどのように影響を与えるかは、意外と知られていません。特に、ある食品は症状を悪化させる可能性があります。
この記事では、「歯周病の患者が食べてはいけないもの」という観点から、歯周病患者が避けるべき食品とその理由、さらには病気の予防や進行を遅らせるための食生活のアドバイスを提供します。
読者が健康な生活を送るための実用的な情報を得られるように、具体的な食事のポイントを解説します。
歯周病とは何か?
歯周病の定義と原因
歯周病とは、歯肉や歯を支える組織(歯根膜、歯槽骨など)に発症する慢性の炎症性疾患です。主な原因は、歯垢(プラーク)中の細菌が引き起こす感染症です。 適切な口腔ケアが行われず、歯垢が長期間放置されると、細菌が増殖し、歯肉に炎症を引き起こします。この状態が改善されないと、次第に深い歯周ポケットが形成され、結合組織の破壊が進行します。
歯周病が進行するとどうなるか?
歯周病が重症化すると、以下のような症状が現れ、最終的には歯を失う恐れがあります。
- 歯肉からの出血
- 歯肉の腫れや発赤
- 歯肉の退縮により、歯の長さが長く見える
- 歯が動くようになる(動揺)
- 歯の喪失
また、歯周病は全身疾患のリスク因子とも関係しており、糖尿病や動脈硬化、呼吸器疾患などを悪化させる危険性があります。 歯周病が進行すると、重大な全身への影響が生じるだけでなく、食事も十分にできなくなるなど、Quality of Life(QOL)が著しく低下する可能性があります。
歯周病を悪化させる食品
糖質が高い食品とその影響
糖質が高い食品は、歯周病の悪化につながる大きな要因の一つです。菓子パン、ケーキ、アイスクリームなどの甘い食べ物や、清涼飲料水、フルーツジュースなどの糖分の多い飲み物は控えめにする必要があります。 口腔内の細菌はこれらの糖質を栄養源として利用し、増殖します。その結果、歯垢(プラーク)が蓄積され、歯周病の進行を助長してしまいます。
酸性の強い食品の避け方
酸性の強い食品も歯周病に悪影響を及ぼします。ワインやコーヒーなどの酸味の強い飲み物、酢の物やドレッシングなどの酸味の強い調味料、柑橘類の果物は控えめにしましょう。 酸は歯の表面を溶かす作用があり、歯周病菌の活動を活発化させてしまいます。症状の改善が難しくなる可能性があります。
硬い食品や粘着性の食品と歯周病
硬い食品やゴムのように粘着性の高い食品も、歯周病を悪化させる恐れがあります。ナッツ類、ポップコーン、プレッツェル、キャラメルなどがこれに当てはまります。 これらの食品は歯肉を傷つける可能性があり、細菌が侵入しやすくなってしまいます。歯周病が進行すると、さらに食べにくくなるため、避けることが賢明でしょう。
歯周病に良い食品
抗炎症作用を持つ食品の選び方
歯周病は炎症が原因なので、抗炎症作用のある食品を意識的に取り入れることが大切です。
- 緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草など)
- 赤身の魚(サーモン、鯖など)
- ナッツ類(アーモンド、くるみなど)
- 緑茶
これらの食品には、抗酸化ビタミンやオメガ3脂肪酸などの抗炎症成分が豊富に含まれています。歯周組織の炎症を和らげる働きが期待できます。
骨の健康を支えるカルシウム豊富な食品
歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨が破壊されてしまいます。骨の健康を維持するためには、カルシウムを十分に取ることが重要です。
- 乳製品(ヨーグルト、チーズなど)
- 小魚(いわし、あじなど)
- 大豆製品(豆腐、納豆など)
これらの食品は、カルシウムだけでなく、ビタミンD、ビタミンKも豊富に含んでいます。相乗効果で骨の形成を助けます。
栄養バランスを整える方法
歯周病は全身の健康にも影響する病気です。そのため、偏りのない栄養バランスの良い食事が重要になります。
- 主食(穀物)、主菜(肉、魚、卵、豆)、副菜(野菜)をそろえる
- 乳製品や海藻、きのこ類なども組み合わせる
- 食物繊維の多い食品を選ぶ
様々な栄養素を適切に摂取することで、口腔内外の健康が保たれます。適度な運動と並行して実施することをおすすめします。
歯周病予防のための食事のポイント
食事のタイミングとその重要性
食事のタイミングを意識することが、歯周病予防には重要です。
- 就寝前の夜食や間食は控えめにする
- 主食を最後に食べ、デザートは避ける
- 食後は30分以内に歯みがきをする
就寝中は唾液の分泌が低下するため、口内に残った食べ物が細菌の活動を活発化させてしまいます。また、デザートを最後に食べると、砂糖分が口に残りやすくなります。 食後はこまめに歯みがきをして、歯垢をきちんと除去することが大切です。
口腔環境を整える食事方法
次の食習慣を心がけることで、歯周病を予防しやすい口腔環境を作ることができます。
- よく噛んで食べる
- 歯垢を除去する硬い食品(りんご、キュウリなど)を取り入れる
- 食後は水分を十分に取る
噛む回数が増えれば、唾液の分泌が促され、自浄作用が高まります。一方で水分不足は、唾液の分泌を低下させてしまうので注意が必要です。
食事の量と頻度の調整
適度な食事の量と頻度を保つことも、歯周病予防に役立ちます。
- 1日3食を基本とする
- 糖分の取りすぎに注意する
- 過剰な食事は避ける
頻繁な食事は唾液の分泌を促しますが、糖分を過剰に取り込むと細菌が活発化してしまいます。代謝を乱さず、適切な量を心がける必要があります。
日常での食事例とアドバイス
朝食で気をつけるべきこと
- デザートやジャムを避け、野菜を取り入れる
- コーヒーやジュースよりも、緑茶や豆乳を選ぶ
- つぶつぶのあるパンや穀物料理を選び、よく噛む
朝食で甘い食べ物を取ってしまうと、一日中口内に砂糖が残ってしまいます。代わりに野菜を意識的に取り入れ、飲み物も低糖質のものを選びましょう。噛む回数を増やすことで、唾液の分泌も促進されます。
昼食と夕食の推奨食品
- 赤身の魚や鶏肉、豆腐などのたんぱく質
- 緑黄色野菜を多めに
- 乳製品やナッツを組み合わせる
- ごま和えやドレッシングを控えめに使う
抗炎症作用や骨の健康を支える食品を、積極的に取り入れることが大切です。一方で、酸味の強いドレッシングは避け、素材本来の味を楽しむようにしましょう。
間食の選び方と注意点
- 新鮮な果物
- 野菜スティック(人参、セロリなど)
- 低塩の燻製魚やささみなど
- ヨーグルト、チーズ
間食は低糖質で、歯垢除去効果のある食べ物を選びましょう。一方で、ナッツ類やポップコーンなどの硬い食べ物は、歯肉を傷つける可能性があるので避けることをおすすめします。
歯周病の食事:よくある質問(FAQ)
Q1: 砂糖は完全に避けるべきですか?
A: 完全に避けるのは難しいですが、できるだけ控えめにすることが大切です。加糖食品や清涼飲料の摂取を減らし、自然な甘さの果物を選びましょう。
Q2: 歯周病なのでナッツ類は避けたほうがいいですか?
A: 控えめにするのがよいでしょう。しかし、ナッツ類には良質な植物油や食物繊維が含まれているため、過剰に避ける必要はありません。よく噛んで食べることが重要です。
Q3: 酢の物やドレッシングは酸が強いので避けたほうがいいですか?
A: 酸味が強すぎるものは避けたほうがよいですが、適度な酸味なら問題ありません。酢の物やドレッシングは、口腔内の細菌を一時的に減らす効果もあります。
Q4: 歯周病なので生野菜は避けたほうがいいですか?
A: 必ずしも避ける必要はありません。歯垢除去効果のある生野菜は歯周病予防に役立ちます。ただし、かたい生野菜は避け、加熱するか細かく切ってから食べることをおすすめします。
Q5: 運動と食事を並行するのが難しいのですが?
A: 少しずつでも構いません。軽い散歩など、気持ちよく続けられる運動から始めましょう。運動は全身の代謝を高め、口腔環境の改善にもつながります。
まとめ
歯周病患者が食事で気をつけるべき重要なポイントをまとめます。
- 糖質が高い食品(菓子パン、清涼飲料など)を控えめにする
- 酸味の強い食品(コーヒー、酢の物など)を避ける
- 硬い食品や粘着性の高い食品は歯肉を傷つける恐れがあるので注意する
一方で、以下の食品は積極的に取り入れることをおすすめします。
- 抗炎症作用のある緑黄色野菜、赤身の魚、ナッツ類、緑茶
- カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを多く含む乳製品、小魚、大豆製品
また、食事のタイミングや方法、頻度にも気をつける必要があります。
- 就寝前の夜食や間食は控えめに
- よく噛んで唾液の分泌を促す
- 1日3食を基本に、過剰な食事は避ける
このように、バランスの良い食生活を心がけることで、歯周病の予防や改善が期待できます。適度な運動と並行して、口腔内外の健康を総合的に保ちましょう。
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