ドライマウスによる口臭
知恵袋を見ると「ドライマウスで口臭がひどい」との質問がありましたが、ドライマウスになると口が乾くため臭くなります。匂いの種類は、たまねぎが腐ったような匂い(メチルメルカプタン)、卵が腐ったような匂い(硫化水素)、キャベツが腐ったような匂い(ジメチルサルファイド)です。
引用:唾液はなぜ臭うの?
ドライマウスは口臭の一番の原因ですので、口臭を改善するにはドライマウス対策を抜きにはできません。
ドライマウス対策で重要なのは、唾液を出すことだと言われています。でも、唾液が出るとどうして口臭が改善できるのでしょう?
また、ドライマウス対策をおこなえば、本当に口臭が改善できると思いますか?実際、ドライマウス対策だけで口臭が改善できなかった人がいます。どうしてだと思いますか?
この口臭対策の本音の部分を追求してみたいと思います。口臭の本音が理解できれば、真の口臭対策ができるようになります。
今回の記事は、ドライマウスが原因の口臭を改善する方法についてです。どんな対策を行っても口臭が治らないとお困りでしたら、是非ご参考にしてください。
関連記事>> ドライマウスの症状と原因「駆け込みドクター」で紹介
記事は、口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登が書きました。
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ドライマウスと口臭の関係
ドライマウスとは
ドライマウスとは口腔乾燥のことをいいます。ドライマウスになると、口臭、口の粘つき、舌の渇き、舌がひりひり痛む、クッキーなどが飲み込みにくい、という症状が起きます。ドライマウス症になると、他にも目が乾くドライアイや唇が渇くことも。
ドライマウスの原因は、大きくは唾液の減少と口呼吸です。
唾液が減る原因は様々ですが、ストレスが自律神経(交感神経)に影響していたり、降圧剤など薬の副作用で唾液が出ないことも。
【唾液が減少する原因】
- 加齢
- ストレスによって自律神経に異常をきたす。
- 食事のときに良く噛まない。
噛む筋力が低下し唾液腺を刺激しないことも影響しています。- 舌と顎の筋力の低下。舌や顎を動かさなくなり唾液腺を刺激しなくなる。
- 口呼吸
- 更年期障害
- 糖尿病・腎不全などの病気が原因。
- 薬の副作用(抗うつ剤、睡眠薬、降圧剤など)
- 食事制限によるダイエット
- シェーグレン症候群
→ 歯磨きしても口がネバネバする!唾液の粘つき対策はこうする!
ドライマウス(口腔乾燥症)になると口臭が発生する
口臭の90%以上は口内(口臭細菌)に原因があります。そのため、十分に唾液が出ていると口臭はおきません。しかし、唾液が少ないと、唾液はすぐにネバネバになり臭くなります。
→ 口臭の原因がわからない!?よくある口臭原因と適切な対策方法
起床直後、空腹時、緊張時は、唾液の分泌が減少し細菌が増殖するため、口臭が起こりやすくなります。これらの口臭を「生理的口臭」と言いますが、通常は唾液によって口内が洗浄され、匂いがコントロールされています。
唾液が口臭を予防している
唾液が出ると口臭が予防できるのは、殺菌作用だけではありません。次の働きもあるからです。
- 口内の汚れ(食べかす、細胞の死がい、汚れた唾液など)を洗浄して清潔を保つ。
- ネバネバした唾液成分によって口内乾燥を防いでいる。
唾液がよく出ていると、口内が清潔になるので口腔乾燥を防ぐことができます。だから、口臭を改善するためには唾液量を増やすことが大事なのです。
ドライマウス対策で口臭を改善する
関連記事:ドライマウスの対策はコレが一番!いったいどんな方法なのか?
ドライマウス対策はタイミングが大事
口臭は次のような時に起きます。
- 加齢
- 起床時
- 空腹時
- 緊張時
- 生理時
どうして、このような時に口臭が強くなると思いますか?
これらの時には全て、「唾液の減少」があるからです。加齢は水分不足、就寝中は唾液が出ない、食事中には唾液が出ますが空腹時は出ない、緊張すると交感神経が活発になり唾液が止まる、生理中はホルモンの変化が唾液分泌に影響する、という理由です。
これまでの説明によって、口臭を改善するにはドライマウス対策が重要なことが理解できたのではないでしょうか。口が乾くタイミングをみて「ドライマウス対策」を行なうことが効果的です。
唾液を出す方法
では、どうすれば唾液を出すことができるのでしょう?
簡単にできて効果のあるものから順番にお伝えします。
1、舌の体操
舌をべ~っと出す。引っ込める。出す。これを数回繰り返します。
次に、舌を出し上唇から鼻の下までなめる。唇の右側、舌唇から顎までなめるようにします。唇の左側と順番に数回行います。
これだけで、ふつうは唾液が出てきます。そして、毎日、舌の体操を行うことで舌の筋肉も鍛えられ、唾液の分泌がよくなります。
2、水を飲む
唾液を出すためには水分摂取が重要ですが、コーヒーや緑茶・ウーロン茶は逆効果です。
コーヒーや緑茶・ウーロン茶には利尿作用があるため、かえって口が乾くことになります。
また、ジュースや牛乳などは口の中を酸性化し、口臭が発生しやすくなるためご注意ください。
ですから、唾液を出すには水を飲むのが一番良いです。
水を飲むタイミングは、歯磨き後、食事と食事の間のお腹が空いた頃。そして、寝る前が良いです。
1回に飲む水の量は、コップ1杯程度です。それ以上飲んでもいいですが、これぐらいで充分です。
3、だし昆布を口に含む
口に物を入れると、唾液腺が刺激されます。
だし昆布は、溶けにくくアルカリ性のために細菌が増えないようにします。そういう意味からもだし昆布がお勧めです。
だし昆布は、1センチ×2センチの長方形にします。角がある方が唾液腺に刺激を与えるので良いです。
長方形に切っただし昆布を口に含み転がして、唾液で溶かすようにします。この時、決して噛まないようにします。だし昆布が溶けるまで結構長い時間がかかります。
4、ガムを噛む
キシリトール入りのシュガーレスガムを噛みます。味がなくなってからも口に入れたままにし、コロコロと転がします。
だし昆布の時と同じように、唾液腺が刺激されます。
5、発声練習
声を出すことで、舌と頬の筋肉が動き唾液腺が刺激されます。
発声法は、パタカラ体操(パタカラ、パタカラを繰り返す)でも、アイウエオや早口でもお気に入りのものを行うことと良いです。
気に入ったことを行なうと、副交感神経が働き唾液分泌が促されます。
ちなみに私の場合は、「アイウエオ、イウエオア、ウエオアイ、エオアイウ、オアイウエ」の発声を10回繰り返します。
舌の体操をやった後に、発声練習をやるというようにセットで行っています。
6、良く噛む
咀嚼することで唾液腺が刺激を受け唾液が出てきます。
ところが、現在は食ベものが柔らかくなってきたことと、生活が忙しいことから平均的に食事にかける時間が短くなっています。(食事時間の平均10分ともいわれています。)このことが唾液を出なくします。また、柔らかい食べ物を中心に摂取することも良くないです。繊維の多い生野菜などを摂ることをお勧めします。
唾液を充分出すためには、良く噛んで30分から1時間かける必要があります。
7、趣味、運動など好きなことをやる
楽しく食事をしたり、良く噛むと、副交感神経が刺激されサラサラ唾液が出るようになります。
反対に、緊張したり、いらいらしたり、悩みごとなどからストレスがあると、交感神経を刺激するので、口の中がネバネバしたりカラカラと乾いてしまいます。
思い当たるふしはありませんか?もし、心配など悪い感情が起きることが多いようでしたら、その感情こそが唾液を出さなくしてしまっている原因です。そのような場合には、明るく振る舞い体を動かすとリラックス状態をつくるので唾液も出るようになります。
8 、唾液を出すツボを押す
手と足には、唾液を出すツボがあるのでご紹介します。
口瘡点は、手のひら側の中指の付け根の横じわの中央にあるツボです。喫煙者の方はタバコの火をツボに近づけたり、あるいは中国温灸で温かい刺激を与えるとさらに効果的です。
湧泉(ゆうせん)。ストレスなどによって自律神経の乱れがおきると、唾液が減少します。湧泉のツボを押すことで、自律神経の乱れを緩和できるので、唾液を出したい場合は、このツボを押すといいです。
「ためしてガッテン」ドライマウス口臭への対処法
NHKためしてガッテンで、昆布だしの「うまみドリンク」を口に含むと、脳をリラックスさせ唾液分泌を促すので口臭予防になる、と紹介されていました。
「うまみドリンク」の作り方は、細かく刻んだ昆布30グラムを500ミリリットルの水に1日つけておくだけ。 1日10回ほど、乾きを感じたときに口に含んでゆすぎます。
実は、昆布だしはPh8.0の弱アルカリなので、菌が増えて酸性化した口内を中性にする効果があると考えられます。余談ですが、口臭予防に効果があると言われている「重曹水」はPh8.2で弱アルカリ。口臭予防歯磨き粉「美息美人(びいきびじん)」のアルカリイオン水は、Ph10.0の強アルカリです。
「教えて坂上クリニック」のドライマウス対処法
坂上クリニックというテレビ番組で、ドライマウスについて話されていました。その中で、「唾液を出す方法」として紹介されていたのが、「発声法」と「カラオケ」です。
- 発声法
「いー」と言って、次に「うー」と言う。これを1セット5回。「いー」というときに、きれいな笑顔をつくるのがコツだそうです。 - カラオケ法
歌を唄うことは、顎や舌の運動になり唾液腺を刺激します。また、カラオケで楽しむことで、ストレス発散にもなり副交感神経が活発になり唾液がよく出るようになるそうです。
その他のドライマウス対策
シェーグレン症候群
ドライマウスで口臭が治らないときには、シェーグレン症候群を疑うことがあるかもしれませんが、この病気は難病に認定されている数少ない病気です。
専門医でないと一般歯科などでは診断できないものですので、素人判断は危険です。難病のため、現在まだ治療方法がなく対処療法となります。
シェーグレン症候群になれば、ドライアイやドライマウス、味覚障害、鼻の乾燥、鼻出血、関節痛、発熱、日光過敏、肌荒れ、夜間頻尿、脱毛などいろんな症状がおきます。
ただ、この内の一つが当てはまっても、シェーグレン症候群と考えるのは早合点といえます。大事なことは、お医者さんに行って相談することです。
シェーグレン症候群についてはこちらの記事「シェーグレン症候群って何?治療方法はあるの?」をご参考にしてください。
ドライマウスの原因として意外なのが、「水分摂取量が少ない」ことです。人によっては、極端に水を飲まない人がおられます。
食事をしているから水分が取れていると思うかもしれませんが、水分が身体に取り込まれるのは人によって異なります。身体に取り込まれた水分は血液になり、そして、唾液を作ります。
唾液が作られる過程には、体質的や病的なことが原因となっていて、作られる唾液量に個人差が生まれます。だから、同じだけ水分摂取をしていても、作られる唾液量に差が生まれます。
ですから、唾液が粘つくとか口内が乾く場合には、ドライマウスの症状が出ていると考えて、いつもより多くの水分を取る必要があります。
口呼吸の改善
唾液の蒸発は、開口状態と口呼吸によって生じます。
幼児の時期から口呼吸になっていると口内が乾くため、虫歯や歯周病になりやすく、また、細菌が増えるため舌苔(ぜったい)も良く出来るのが特徴です。
ほかにも、鼻炎などで鼻が詰まると口呼吸になります。口呼吸をしていると唾液が蒸発してしまい口が渇く原因となります。ですから、風邪などで鼻が詰まっているときだけ、舌が白くなることがあります。
口呼吸の習慣がない人でも、喫煙をしている時には、一時的に口内が乾燥します。
服用している薬を見直す
何でも気にしすぎることは良くありません。ご注意ください。
他にも、唾液分泌が減少する要因として、「お薬の副作用」があります。次のお薬を飲んでいたら要注意です。
- 降圧剤
- 抗鬱剤、精神安定剤
- 睡眠誘導剤
これのお薬を服用されている場合には、一度かかりつけのお医者さんにご相談されると良いかもしれません。副作用の少ない漢方薬もあるようです。お薬の副作用で口が乾く場合は、『口が粘つくのは薬の副作用かも?ネバネバしないための対策はこれ!』をご参考にしてください。
ドライマウス症への対処法
ドライマウスの一般的な対処法としては…
- 糖尿病などの疾患がある場合には、その治療が先決です。
- お薬の副作用によって口内や喉が渇く場合には、お薬を変更したり調整することが必要です。
- ストレスによって口腔が乾燥している場合には、ストレス緩和に努めることが大事です。
- 歯科で問題がある場合は、欠損歯や不適合の被せを改善し、衰えた咀嚼機能を回復することで唾液分泌が正常に働くようにします。
これらがドライマウスの対処法ですが、残念ながらドライマウスには根本的な治療法はありません。
この他にも…唾液を促進する方法としては次のような方法があります。
・唾液の分泌を促すお口の体操や歯ぐきのマッサージ
・食事を何回かに分けてとる
・繊維の多い食品を多くとる(咀嚼回数が増えるため)
・小まめに水を飲む
・口呼吸から鼻呼吸への習慣づけ
などがあります。唾液量を増やすためには水を飲むことは大切ですが、コーヒーや緑茶には利尿作用があるので逆効果になることがあるのでご注意ください。
また、ドライマウスの症状が重い場合には、次のようなことも必要かもしれません。
・刺激性の食物をさける
・部屋が乾燥しないようにする
・人工唾液の投与も必要です。
ドライマウスの場合には、口腔が乾燥することで口内が不清潔になりやいので、ブラッシングをきちんとすることと、うがいを頻繁に行うことが大切です。
この二つを心がけることで、たとえドライマウスであっても口臭を予防できます。
ドライマウス対策グッズ
1、うがい薬
2、部屋の保湿器
3、保湿剤、保湿ジェル
4、唾液の分泌促進薬の服用
5、マウスピース(ナイトガード)の使用
ドライマウスを緩和するには、このような対処法を行うことも大切です。
難病情報センターが推奨するドライマウス対策
難病情報センターのサイトでは、ドライマウスの対策方法として次のように説明されていました。
- ドライマウスになると、虫歯になりやすいので、定期的に歯科検診を受ける。歯石除去をしてもらう。
- ていねいに歯磨きケアをする。
- 口内の真菌感染や口角炎になりやすいので、うがい薬などで良くうがいをして口腔の清潔を維持する。
- 口腔内の状態をよくするために、乾燥食品、香辛料、アルコール飲料は避ける。
- 喫煙は口腔や喉が乾燥するだけではなく、ドライマウスと重なると舌苔が出来やすく、歯周病にもなりやすくなるため、禁煙が必要です。
- 食事は、刺激のあるものは避けたり、パンやクッキーは液体に浸して食べるなどの工夫が必要。
- 虫歯になりやすくなるので、甘いものは避ける。ガムはキシリトールガムにする。
- カルシウムを摂取するようにする。
- 口の乾燥を予防するために、小まめに少量ずつ水を飲む。
出典:難病情報センター
「9」の「小まめに水を飲む」をやるのとやらないのでは、舌苔(ぜったい)予防や粘つきの予防に大きな差が生まれます。もし行っていないのでしたら、是非お試しください。
まとめ
口臭は口臭菌が産生します。ですから、唾液が多いと口臭が抑えられ、唾液が少ないと口臭が発生する。
ですから、口臭を予防するためには、ドライマウス対策を抜きにして考えることはできません。しかし、唾液を出すことだけをしても、口臭対策にはならないのです。
元から口臭を断つには、毎日のブラッシングでプラークを除去する以外にないのです。磨き残しは、歯科衛生士さんに任す。このようにして、ドライマウス対策と口腔ケアを行うことで、本当の口臭対策ができるようになります。
この記事は、口腔ケアアンバサダー(社団法人口腔ケア学会認定)の上林登が書きました。
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