歯周病による口臭の治し方
口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登です。
歯周病が進行すると、歯が浮く、歯が痛む、歯茎が腫れる、歯茎から血が出る、歯が動揺するなどの症状が起こりますが、歯周病初期からずっと続くのが口臭です。
歯周病が臭いのは「硫化水素」や「メチルメルカプタン」と呼ばれるガスのせいです。歯周病菌は歯茎に炎症を起こして、滲出液や血のタンパク質を分解する過程でこのガスを作り出すのですが、腐った玉ねぎや卵のようなひどい匂いです。
口臭の治療・予防
歯周病の一番の原因はブラッシング不足です。歯面がザラザラ、ベタベタしていたら、それが歯周病菌などの細菌から成るプラークです。プラークをそのままにすると歯石化し、さらにプラークが着きやすくなるので、その前にブラッシングによってプラークを除去する必要があります。
しかし、歯と歯の間の隙間や、ブリッジのダミーの底、奥歯の奥などはブラッシングが容易ではありません。歯磨きだけでは限界があるのです。(歯科で歯石除去とクリーニングが必要な理由)
プラークが歯と歯肉の境目に付着すると、歯肉に炎症が起こり、歯周ポケットが形成されます。歯周病菌は酸素を嫌う「嫌気性菌」というタイプで、ポケットに歯周病菌が繁殖し「硫化水素」や「メチルメルカプタン」という臭いガスを発生させるのです。
歯周病は進行する病気なので、治療をしないと炎症を悪化させてしまい、ポケットは深くなり、口臭はドブのように臭くなっていきます。これが歯周病による口臭です。
朝日新聞出版から発行された「日本人はこうして歯を失っていく」(日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会)によると、口臭対策のためには歯周病を治療することが最も大切ですが、それだけではだめで、歯周病を予防するためのセルフケアが大事だと書かれています。
今回の記事は、歯周病が原因の口臭対策について詳しくお伝えします。口臭を治したい方は、是非ご参考にしてください。
クリックできる目次
歯周病になると口臭が発生する
厚生労働省が実施した「歯科疾患実体調査(2016年)」によると、日本人の7割が歯周病になってるそうです。この時の調査方法は、歯周病の特徴的な歯肉の所見(歯周ポケットがある、歯石の沈着、歯周ポケット測定後の出血)が見られるかどうかの結果をまとめたものです。
口臭が発生する原因
歯周病菌の多くは酸素を嫌う嫌気性菌で、歯肉に炎症をおこしてポケットができます。ポケットができると、その中の歯石(プラーク)、膿・血を住みかにして嫌気性菌(歯周病菌)が繁殖するので、膿や血の匂いがします。
歯周病になりやすい部位
歯周病といえば、歯ぐきの腫れや痛み、出血、口臭をイメージすると思います。歯周病になりやすい所は、歯磨きが上手くできなく、磨き残しからプラークが着く部位です。歯周病になり臭くなるのは、次のケースの歯と歯ぐきとの境目の溝の部分です。
- 前歯の差し歯・セラミック歯
- ブリッジ歯(支台歯)
- 銀歯、クラウン、ブリッジ歯
- 奥歯(大臼歯、小臼歯)最後臼歯の奥
- 部分床義歯のクラスプをかける歯
関連記事:
歯周病の確認方法
慢性歯周病は、痛みなどの自覚症状がないことがあるので、歯を磨いても口臭が気になる時は歯科で検査してもらうといいでしょう。歯科での検査は、レントゲン撮影とポケットの深さを測って歯周病を診断します。
口臭の原因が歯周病でないと診断された場合には、耳鼻科や内臓などに原因があるかもしれません。口臭外来に行くと、口臭計測装置を使ってガスの種類と臭いレベルを調べるので、口臭原因をみつけることが可能です。
口臭チェック
自分で口臭がしているかどうか調べる方法としては、唾液を嗅ぐと自分でも臭いがわかります。この時、口臭が歯周病による臭いかどうかは、臭いの種類で判断します。
歯周病菌によって発生する「硫化水素」は、おならの匂い、卵が腐ったような匂いです。また、「メチルメルカプタン」の匂いは、魚の生臭い匂い、玉ねぎが腐った匂いに近いです。これらの臭いがしたら、歯周病が原因になっている可能性が高いといえます。
歯周病による口臭の治し方
歯周病による口臭を治すには、歯周病治療を受けてください。そして、定期的に歯石除去と歯のクリーニングもしてもらい予防することが大切です。歯周病予防で大事なことは、しっかりとお家でブラッシングを行なうことです。
基本はPMTCとブラッシングケア
歯周病が原因の口臭対策は、歯科でのPMTC(歯石除去と歯面清掃)とお家でのブラッシングケアで治すことが可能です。歯ブラシだけではなく、デンタルフロスや歯間ブラシも使ってしっかり歯磨きを行うことで歯茎が引き締まるので、口臭発生を防ぐことが可能になります。
歯周ポケットからの臭い対策
歯周ポケットからの臭いの対策法としては、歯間ブラシやデンタルフロスを使って歯と歯の間のポケット部分の汚れを落とすことが大切です。ポケットが深い場合は、歯間ブラシをポケットに突っ込むような感じで清掃します。
歯ブラシだけでは落とせない汚れもあるので、フロスや歯間ブラシも使って歯と歯の間の汚れもしっかり落とすようにしましょう。
薬用歯磨き粉で対策
歯周病特有の生臭い味と匂いを感じる場合には、「アセス」などの歯槽膿漏に効く歯磨き粉が有効です。薬用成分によって、歯肉炎や歯槽膿漏で歯茎が腫れた場合に効果があります。
歯磨きの仕方は、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)に、歯ブラシで歯磨き粉を塗り込むようにしてブラッシングします。
しかし、薬用成分だからといっても、歯周病自体を治すことはできないので誤解しないでください。薬用歯磨き粉は、軽度の歯肉炎による歯ぐきの腫れには有効ですが、中程度以上の歯周病には効果は期待しないほうがいいです。
歯磨き粉アセスの効能書には「歯肉炎、歯槽膿漏の原因となる『嫌気性菌』にすぐれた抗菌力を発揮して、歯ぐきの出血、はれ、口臭などをしずめます。」とありますが、それは歯周病が治まることで口臭が軽減するという意味です。
膿の臭い対策
歯周病になると血のような生臭い膿が出ます。この臭いを消すためには、ポケットの中にある嫌気性菌を除菌することが効果的です。今からご紹介するのは、歯周病用の薬用歯磨き粉を使う方法ですが、本来の使用方法とは違う「裏ワザ」のため、試される場合は自己責任でお願いいたします。
【歯周ポケットの臭いを消す方法】
1,歯周病用の薬用歯磨き粉を準備する(おすすめの歯磨き粉は、カムテクト、シュミテクトなど)
2、通常どおり、歯ブラシで口腔全体をブラッシングする
3,歯間ブラシ(またはワンタフトブラシ)に、歯周病用歯磨き粉を米粒ほど付けて、歯周ポケットに塗り込む。
4,歯磨き粉を塗った後は、できるだけ洗い流さないようにする。(※もしうがいを行う場合は、軽く1回程度)
裏技と言っても、手順はこれだけですので簡単に誰でもできます。ところが、効果は抜群です。いつも起床時に口がネバネバしていても、スッキリしているかもしれませんので、口臭に困っていましたら是非おすすめします。
口臭を消す方法
歯周病は治療で治すことが大事ですが、でもそれまでに一時的でも「口臭を消したい!」のが人情です。応急的に口臭を予防する方法をご紹介しますので、臭いを消す時のご参考にしてください。
- こまめに水(または白湯かお茶)を飲む
- うがい(マウスウォッシュやデンタルリンスを使用)
- ガムを噛む
- 舌苔の清掃(舌磨き)
注意)口臭が気になると歯磨きをする人がいますが、合成界面活性剤など添加物含有歯磨き粉を使用すると、反って口腔乾燥を助長して口臭を発生させることになります。歯磨き頻度は一日2回で十分です。
歯周病による口臭の予防方法
歯周病と口臭を予防するために最も大切なのはブラッシングです。食べ残しがプラーク(菌)を作るからです。効果的なブラッシングのポイントは、「磨き残しの多い箇所」と「歯磨きの仕方」ですのでご参考にしてください。
磨きにくい所を重点的にブラッシング
歯茎が臭くなる原因は、ブラッシング不足です。ブラッシングができていないと汚れがたまるため臭くなるのです。
【おすすめの口臭ケアとポイント】
独断と偏見ですが、お客様の間で結果の出ている「おすすめの口臭ケア」のポイントをご紹介します。1, ブラッシングケア・グッズは…電動歯ブラシ、歯間ブラシ、ワンタフトブラシ(磨き残しを軽減できる)
2, 洗口剤は…アルカリイオン水(舌苔とプラークを分解できる)
3, 市販の歯磨き粉の使用をやめる(添加物が口腔乾燥を起こすため)
4, 小まめに水やお茶を飲む(口内と喉を洗浄するため。うがいだけでは不十分。)
歯茎が臭くなるのは、どの部分が多いでしょう。それは、次の部位です。
- 差し歯の裏側(舌側)
- 奥歯と歯茎の境目
- 歯と歯の間の歯茎部分
- 親知らずと歯茎の境目
- ブリッジのダミー底部の歯茎
- 矯正装置が付いている部分の歯茎
この場所は、どれもブラッシングが困難な部位ですが歯ブラシが届きにくいところです。ご本人は、ていねいにブラッシングをしているつもりでも、自然と磨き残しができてしまうのです。だから、歯周病になり歯茎が臭くなる!
関連記事
夜歯磨きしないとどうなる?虫歯だけではなく、翌朝、口臭を招くのでご注意!
歯磨きのコツ
歯肉に炎症のある歯周病の場合は、歯ぐきが痛くないように優しく丁寧に歯磨きを行うようにしましょう。
- 鏡を見ながら磨くポイントに当てる
- 歯茎を傷付けないように歯ブラシを小さく動かす
- 力を入れすぎない(力を入れると歯ブラシの毛先が開き磨けない)
- 歯ブラシを細かく動かす(歯垢が良く取れる)
- 1か所のつき10~20回磨く
ワンタフトブラシで磨く
歯周病の予防は、歯垢や歯石がつかないようにすることが最も大事なことです。
具体的な方法としては、歯と歯ぐきの境目の溝(歯周ポケット)の中の歯垢を取ること。そのためには、通常の歯磨きだけではなく、極細毛歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス、ワンタフトブラシなどを使用して、ていねいに歯垢を取り除く必要があります。
これらの歯磨き方法は、始めの内は慣れないため面倒に思うかもしれませんが、慣れるとていねいに歯磨きを行うことにより口がスッキリするに違いありません。そして、口がスッキリすることで一日気分も良くなるでしょう。
ブラッシングの仕上げにワンタフトブラシを使用する。これだけのことですが、これほど効果が出る方法を他には知りません。
ワンタフトブラシというのは、一般の歯ブラシとは形状が異なり、毛先を束ねて筆のようにした歯ブラシです。
このワンタフトブラシで、歯と歯茎の境目(歯周ポケット)と、歯間部分をなぜるように磨きます。一般の歯ブラシでは磨き残しができる部分でも、筆のようなワンタフトブラシを使うとキレイに磨けます。
使ってみるとよく分かると思いますが、今まで感じることができなかった「スッキリ感」を感じるはずです。それほど狭い部分までよく磨けます。
このワンタフトブラシを習慣にすると歯周病が予防できるため、歯茎からの臭いも気にならなくなると思います。効率よく口臭予防するためには、美息美人(びいきびじん)を併用されると良いです。
うがいで予防する
一度歯周病になると完治することは難しいです。治ったと思っていても、体調がすぐれない、ストレスで免疫が低下する、噛みしめが強いこと等によって、歯周病は再発します。
その度に、歯茎が腫れて口臭が起きます。臭いがするのは、歯周ポケットに臭い膿がたまるからです。
口臭を予防するには、ブラッシングやうがいが有効です。うがいはいつどこでも出来るので、臭いが気になった時には水道水でうがいを行ってください。臭い唾液を洗浄できるので口臭の軽減が期待できます。
おすすめは、水よりも効果のある「アルカリイオン水」によるうがいです。アルカリイオン水には、プラーク(たんぱく質)を分解する作用があるので口臭予防にも適します。
まとめ
歯周病になると口臭を発生するようになりますが、歯周病が進行すると出血や排膿が多くなり、臭いも強烈になります。
歯周病による口臭を防ぐためには歯科治療は絶対ですが、これまで以上にお家でのブラッシングケアをていねいに行なうことが大切です。
口臭がしなくなるということは、歯周病が改善されているということになります。
関連記事:口臭ケアブランド『美息美人(びいきびじん)』が舌苔を溶かして取る仕組み