阿川佐和子さんの膿栓は食べ物のカスがたまったモノ?

膿栓のできやすい食べ物について

口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登です。

扁桃腺の穴に食べ物のカスが溜まってできる膿栓は、口臭の原因になるので、予防するために膿栓のできやすい食べ物を探していたら、阿川佐和子さんのエッセイが見つかりました。

阿川佐和子さんは、膿栓(のうせん)がたまることを心待ちにしていたそうです。なぜなら、、膿栓を取るのが楽しみだったからです。

しかし、膿栓を取り除いても具体的な解決にはなりません。膿栓の対策で大事なことは、膿栓がたまらないように予防することです。

膿栓の予防と対策方法

阿川さんのエッセイを読むと、膿栓のことを「食べ物のカス」と書いていましたが、果たして膿栓は食べ物カスなのでしょうか?

膿栓が食べ物カスというのは半分合っていますが、半分間違いです。膿栓のあとの半分は、白血球と細菌の死がいです。だから、膿栓は乳白色の色をしている。

でも、膿栓の半分が食べ物カスだとしたら、どんな食べ物が膿栓をできやすくするのでしょう?興味ありますよね。

今回の記事は、膿栓のできやすい食べ物についてお伝えします。膿栓と口臭の予防のご参考にしてください。

関連記事:口臭の元になる「臭い玉」の原因と対策

膿栓は食べ物のカス?

扁桃に膿栓がたまると口臭の原因になることがあります。膿栓の数が一つや二つであれば問題ありませが、多量にあるとか毎日出る場合には口臭が強くなるでしょう。その場合は、膿栓を除去することで口臭の予防ができます。

膿栓ができるのは、扁桃の免疫システムが関係しています。口からウイルスや細菌が喉に侵入すると、免疫システムが作動して戦い体を守ります。その結果、扁桃腺のくぼみの中に白血球や細菌の死がいが溜まり膿ができます。そして、くぼみの中には、食べ物のカスやはがれ落ちた細胞などの汚れも溜まり、固まって乳白色の膿栓ができるのです。

>>膿栓(臭い玉)が溜まる場所はこちら

だから、膿栓は、食べ物も一部混じっているというのは間違いではありませんが、膿栓が臭いのは細菌がタンパク質を分解発酵させるからです。食べ物だけではあのような悪臭は発生しません。

阿川佐和子さんの膿栓

阿川佐和子さんも膿栓がよくたまるそうですが、私たちと違うのは膿栓がたまるのが楽しみなこと。

ところで、エッセイの中に「(膿栓は)喉のひだにひっかかった食べ物のカス」と書いていましたが、本当でしょうか?

膿栓は扁桃から分泌される粘液が主体で、食べかすなどは粘液に一部混じっただけですので誤解ないようにしてくださいね。それでは、阿川佐和子さんの体験エッセイをご紹介します。

扁桃膿栓症に関する阿川佐和子さんのエッセイ(抜粋)

喉オタク
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あるとき、いつものように口腔観察に熱中していると、喉の奥にプツンと白いかたまりが付着しているのを発見した。
小さなかたまりは一つだけでなく、よく見ると二つ、三つと見つかった。口内炎の一種だろうか。しかし、それにしては痛くない。痛みを感じないデキモノとは、もしかしてガンかもしれない。そう思うと、急に心配になった。
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そこで今度は直接、かたまりに触れてみようと決心し、人差し指を突っ込んだ。当然、「オエッ」となるのだけれど、我慢しなければ。なにしろ生死にかかわっているかもしれないのである。
ようやく指先が問題の地点に到達したかと思われたとき、ふいに、プルンとかたまりが飛び出した。
この話をすると、皆、「そんなこと、あるもんか」と胡散臭そうな顔をするが、嘘じゃない。どうやらそのかたまりは、喉のひだの間に挟まった食べ物のカスだったらしい。
そうとわかったとたん、悩みは一転して楽しみに変わった。気分も軽く、プルン、プルンと指先で一つずつ取り除き、喉のなかをきれいに掃除する。そして数週間、次のかたまりが溜るまでじっと待つ。そろそろかなと思う頃、期待に胸を膨らませながらふたたび喉を覗いてみる。これが案の定、溜っていたときの喜びといったら、なんとも表現しがたいものがあった。
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喉オタクからの手紙
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ご存じない方のために、かいつまんでお話ししておきますと、私は子供の頃、自分の喉を観察する趣味があった。ある日、いつものように手鏡を片手に大口を開けて喉観察に専念していると、奥のほうに白いかたまりを発見。それが実は、喉のひだにひっかかった食べ物のカスとわかり、以来、その白力スを採取するのが楽しみになった。
・・・・
そう、どういうわけか私を含め、これは若い頃の現象で、最近は見掛けなくなったという方が多い。押し並べて皆さん、「扁桃腺が腫れたときに喉を覗いた」のがきっかけだそうで、「白いかたまりは喉の奥でもひだの間でもなく、小さい頃よく腫らした扁桃腺にくっつくのです。扁桃腺のなごりのクレーター部分にくっつくのです」
そして、
「風邪のごくごく初期、喉の痛みを感じる前の少し腫れた時に、いつもはスムースに食べ物が喉を通るのに、ほんのわずか腫れたためにカスがくっつくのでしょう」
・・・・
白いカタマリの名はわかりませんが、その穴の名は゛扁桃陰窩″といいます。英語ではtonsillar cryptです。指や綿棒を使わなくても、喉の奥に力を入れることによって口腔内に出すことも出来ます。つぶすと舌苔や歯垢と同じ臭いですので、食餌カスであたっていると思います。
・・・・・・・

きりきりかんかん 文春文庫 著者 阿川佐和子 2000年1月10日 第一刷
初出「週刊文春」1991年1月3日号~1992年1月16日号
単行本 文藝春秋刊

この記事を読むと、「膿栓(のうせん)は自分だけではなかった!」と、少し安心するのではないでしょうか?

そして、喉に違和感があり、「もしかしたら、膿栓(のうせん)かも?」と心配していたのでしたら、納得したかもしれませんね。

しかし、

間違いを犯さないように一言付け加えますと、阿川さんのようには、決して喉に手を入れて膿栓(のうせん)を取ろうとしないことです。一つ間違えると、喉の粘膜を傷つけ化膿するかもしれません。

膿栓(のうせん)については沢山の情報が出ていますが、正しい知識を持たないと、この記事のような間違いが起きます。

そのようなことのないように、この記事を読んで、膿栓(のうせん)の正しい知識を知ってほしいと思います。

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普通は膿栓ができると恥ずかしくて誰にも言えないという人が多いのですが、阿川佐和子さんだから、膿栓ができたこと、膿栓を取る様子について、面白おかしく記事にできたのでしょうね。

でも、膿栓は隠されていて秘密の部分が多く、膿栓の取り方について知りたい方にとっては、良くも悪くもご参考になる記事だと思いますよ。

>>臭い玉の取り方って知っていましたか? 

膿栓のできやすい原因

喉には、ばい菌やウィルスから体を守るための免疫組織があります。いわゆる扁桃腺(へんとうせん)というもので、風邪やインフルエンザにかかると膿栓(臭い玉)ができることがあります。

膿栓(臭い玉)は、喉の両脇にある口蓋扁桃と喉の上部にある咽頭扁桃の陰窩(いんか)という穴に、細菌の死がいや食べかす溜まるとできます。

耳鼻科疾患

膿栓(臭い玉)は誰にでもできるものですが、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎で後鼻漏や舌苔が厚い場合は、喉に細菌が繁殖するため、膿栓(臭い玉)がよくできます。膿栓をできないようにするためには、原因となる耳鼻科疾患を治療することが大切です。

ドライマウス(口腔乾燥症)

喉に細菌が増えると、免疫が働き膿栓(臭い玉)がよくできるようになります。細菌が増えるのは、口腔・喉が乾燥するドライマウスが原因です。唾液量が減ると口と喉が乾燥し細菌が増殖します。このことが膿栓のよくできる原因になっているので、唾液腺マッサージで唾液腺を刺激したり、口呼吸を鼻呼吸に直すようにしましょう。

膿栓のできやすい食べ物

膿栓の正体は、細菌の死がいのかたまりと「食べ物カス」です。それらのタンパク質は細菌のエサだから、そこに細菌が繁殖するのです。

(扁桃の)小さな穴の奥には細菌の死骸である細菌塊や食べ物のカスがたまってきます。このカスを、膿栓「のうせん」と呼びます。

引用:いのうえ耳鼻咽喉科

膿栓ができやすい食べ物は、動物性タンパク質なのです。だからといって、これらを食べても膿栓ができない人がいます。どうしてだと思いますか?

それは、唾液の分泌が十分にあれば、食べかすは胃に洗い流されて行くからです。また、喉が唾液で潤っていれば細菌が増えることもなくなります。ですから、膿栓をできないようにするためには、梅干しなど酸っぱいものや繊維の多い野菜を食べて(よく噛む)唾液を出すようにすることが大切です。

動物性タンパク質

喉の奥(膿栓)に集まる嫌気性細菌は、動物性タンパク質を分解して発酵させます。(菌はタンパク質をエサとします。)そして、膿栓を大きく成長させるのです。

肉や牛乳も、食後、口腔内を清潔に保たないと、口臭が発生します。これは口腔内の細菌が舌や歯に残った食べかすを栄養源として繁殖するからです。

引用:順天堂大学医学部附属順天堂医院

高タンパク質の食べ物

膿栓ができやすい(大きくする)食べ物は、たんぱく質の豊富な牛乳や肉、チーズです。

  • 魚介類:鮭、マグロ、ツナ缶
  • 肉類:鶏肉、豚肉、牛肉
  • 他に、卵、大豆、乳製品があります。

膿栓ができやすい場合の治療

膿栓ができやすく口臭が気になる場合には、扁桃の治療が必要になります。治療法としては、膿栓の吸引や扁桃の陰窩洗浄がありますが、免疫組織である「扁桃」が存在するかぎり、膿栓を取り除いても何度もたまります。

膿栓をできないようにする治療には、扁桃を縮小するラジオ波凝固手術や扁桃を摘出する手術があります。耳鼻咽喉科を受診して相談されてはいかがでしょう。

関連記事:膿栓は扁桃腺摘出手術で溜まらなくなる

まとめ

膿栓(臭い玉)は食べ物カスが溜まってできるものですが、耳鼻科疾患があり口腔乾燥の場合には、膿栓(臭い玉)がたまりやすくなります。

膿栓の原因となる嫌気性菌はタンパク質をエサとするので、牛乳やチーズなどの乳製品や、鶏肉や豚肉など高タンパクの食べ物の方が、膿栓(臭い玉)ができやすくなります。

だからといって、栄養が偏ると免疫力が低下するのでよくありません。健康維持で大事なことは、主食のごはん、肉や魚などのタンパク質、野菜などの副菜、をバランス良く組み合わせた食事を摂ることが大切です。

参考記事:口臭!膿栓(臭い玉)の取り方と予防方法

【出典】きりきりかんかん 文春文庫 著者 阿川佐和子 2000年1月10日 第一刷
いのうえ耳鼻咽喉科

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