
歯科で異常なし?それでも口臭が消えないなら「ピロリ菌」に注目を
こんにちは、口腔ケアアンバサダー(社団法人 日本口腔ケア学会認定)の 上林登です。
歯磨きや舌ケアを欠かさないのに、なぜか口臭が気になる――そんな経験、ありませんか?歯科で「異常なし」と言われたのに、口臭だけが残るケース。実は、その背景に「ピロリ菌」が関係している可能性があるのです。
口臭の原因の約9割は、歯周病や舌苔といった口腔内トラブルですが、残る1割には「胃」や「全身疾患」が潜んでいることも。本記事では、ピロリ菌と口臭の関係、最新の検査方法、除菌治療、そしてセルフケアのポイントまで、わかりやすく解説していきます。
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なぜピロリ菌が“残り1割”の口臭を生むのか?
ウレアーゼ活性とアンモニア臭の関係
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の中に生息する細菌で、ウレアーゼという酵素を持っています。この酵素は、体内の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、胃の中をアルカリ性に傾けます。
その結果、胃粘膜が炎症を起こしやすくなり、消化機能が低下するだけでなく、口に上がってくる「酸っぱい臭い」「アンモニア臭」の元となることがあるのです。
胃酸逆流・VSC産生のメカニズム
ピロリ菌感染が進行すると、胃炎や胃酸分泌の異常を引き起こし、逆流性食道炎を発症することもあります。胃酸が逆流することで、消化途中の食物やガスが喉元まで上がり、口臭として現れる場合があります。
さらに、ピロリ菌の影響で口腔内の細菌バランスが乱れ、揮発性硫黄化合物(VSC)が増えやすい環境にもつながるとされています。
【チェック表】歯科で異常なしなら次に疑うこと
セルフ判定フローチャート
以下のようなチェックポイントに心当たりがある方は、「ピロリ菌の可能性」を疑ってもよいかもしれません。
- 歯科で「異常なし」と言われたが、口臭が続いている
- 空腹時や朝起きた時の口臭が特に強い
- ゲップ・胃もたれ・胸やけなど、胃の不調を感じる
- 卵が腐ったような臭いや、すっぱい臭いがする
これらの症状が複数当てはまる場合、一度内科や消化器科で「ピロリ菌検査」を受けることをおすすめします。
臭いタイプ別ヒント
口臭のタイプ | 考えられる主な原因 | 受診の目安 |
---|---|---|
腐敗臭(ドブ臭) | 歯周病・舌苔 | 歯科へ |
すっぱい臭い | 胃酸逆流・ピロリ菌 | 内科・消化器内科へ |
アンモニア臭 | 肝機能低下・尿毒症 | 内科・専門外来へ |
口臭の「種類」から、発生源をある程度予測することができます。迷った場合は、複数の科にまたがって検査するのが正確なアプローチです。
最新検査4種の比較(費用・精度・手軽さ)
尿素呼気試験(UBT)
現在、最も信頼性が高いとされる検査が「尿素呼気試験(UBT)」です。検査用の薬を服用し、呼気に含まれる二酸化炭素の量を測定することで、ピロリ菌の有無を判定します。食事制限などの準備が必要ですが、精度は90%以上と高く、除菌後の判定にも使われます。
便中抗原検査
便に含まれるピロリ菌の抗原を検出する方法です。家庭で便を採取し、提出するタイプが多く、精度も高いため、UBTと並んで利用されます。便を扱うことへの抵抗はあるかもしれませんが、非侵襲的で体への負担は少ないのがメリットです。
血清抗体検査・内視鏡迅速法
血清抗体検査は、過去に感染した形跡も含めて判定できるため、スクリーニングには便利ですが、現在の感染状況を反映しないことも。
一方、内視鏡による迅速ウレアーゼ法は、胃粘膜を直接観察しながらピロリ菌の有無を確かめられ、正確性に優れています。ただし身体への負担が大きく、コストも高いため、胃の不調が強い方に適しています。
除菌治療の流れと成功率【2025年版】
一次・二次除菌プロトコル
ピロリ菌の除菌には、一般的に「抗生物質+胃酸抑制薬」の併用が行われます。一次除菌では、クラリスロマイシンなどを含む3剤併用療法が標準的です。除菌成功率は70〜80%程度と言われており、近年は耐性菌の影響で少しずつ低下している傾向にあります。
一次除菌が失敗した場合、異なる抗生物質を使用した二次除菌が行われ、成功率は90%近くに上がります。保険適用の範囲内で対応可能なため、自己負担も比較的少なく、安心して治療に臨めます。
除菌後の再検査スケジュール
除菌治療後は、1か月以上経ってから「再検査」を受ける必要があります。これは、ピロリ菌が完全に排除されたかを確認する重要なプロセスです。多くの場合、再びUBTまたは便中抗原検査を使用します。
除菌が成功していても、胃粘膜の回復には時間がかかるため、胃の不調や口臭がすぐに消えるわけではありません。しかし、徐々に臭いが軽減される方が多く、再発防止策と併用することで長期的な改善が期待できます。
日常でできる再発防止&口臭ケア
食習慣:発酵食品と食物繊維
ピロリ菌の再感染を防ぎ、胃腸環境を整えるためには、食生活の見直しが欠かせません。とくにおすすめなのは、発酵食品(ヨーグルト・納豆・キムチ)や食物繊維を多く含む野菜・海藻類などの摂取です。
乳酸菌には胃酸のバランスを整える働きがあり、腸内環境を改善することで免疫力向上にもつながります。また、香辛料や脂っこい食事は胃を刺激しやすいため、摂取を控えることも意識するとよいでしょう。
アルカリイオン水うがいの活用
口臭対策として注目されているのが、アルカリイオン水によるうがいです。口腔内のpHを中和することで、細菌の繁殖を抑え、口臭を穏やかにする効果が期待できます。
市販の洗口液とは異なり、刺激が少なく、胃や喉の粘膜をいたわる点もメリット。ピロリ菌の除菌後、再発防止と同時に口臭ケアを続けたい方にとって、やさしく効果的な方法です。
Q&A:よくある誤解をプロが解説
Q1:除菌治療を受けたらすぐに口臭は消えるの?
A:すぐに消えるとは限りません。除菌が成功しても、胃粘膜の炎症が治まるまでには数週間~数か月かかることがあります。焦らず、継続的なケアが大切です。
Q2:検査は保険適用される?費用は?
A:胃の不調があると診断されれば、ピロリ菌検査や除菌治療は保険適用となります。自己負担は数千円程度です。胃カメラを伴う場合はやや高額になります。
Q3:再発を防ぐにはどうしたらいい?
A:衛生的な生活環境を保つことが大前提です。家族との箸やコップの共有を避ける、外食時の衛生管理に気をつける、そして年に1度の検査を継続しましょう。
まとめ|“原因不明”を終わらせる3ステップ
- 歯科で異常がないなら、胃の検査を視野に
- ピロリ菌検査は手軽で精度が高く、保険対応もあり
- 除菌後の生活改善と口臭ケアを同時に進めることで、再発予防と安心を得られる
歯科で“異常なし”と言われても焦らないで大丈夫。
胃の検査→除菌→生活習慣の見直しを
“3カ月サイクル”で続けると、ほとんどの方が
臭いの変化を実感できます。焦らず、でも放置せず。
今日の一歩が未来の息を変えますよ。
もし「ピロリ菌で口臭かも」と不安になったら、放置せず、一度検査を受けてみましょう。あなたの“気になる臭い”の背後にある本当の原因を知ることが、快適な毎日への第一歩です。
こちらの簡単な質問に答えるとピロリ菌などによる口臭リスクの診断ができます。
・参考文献:
- ピロリ菌を除菌しましたが、その後胃カメラ検査を受ける必要がありますか? | 日本消化器内視鏡学会
- 健康情報誌「消化器のひろば」No.17-8 | 日本消化器病学会
- 日本口臭学会会誌の2020年11巻1号「Helicobacter pylori除菌治療に伴う口臭と口腔内環境の変化についての研究」
- 口臭の原因の9割は口腔内トラブル! 残る1割はピロリ菌が-テレ東プラス
- ヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用 による胃がん減少-厚生労働省
- ピロリ菌について-東京警察病院
- 口臭 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020-日本歯科医師会