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はじめに
こんにちは、口腔ケアアンバサダー(日本口腔ケア学会認定)の上林登です。
「喉の奥にネバネバした何かが常に張り付いている感じがして、咳払いが止まらない」「寝ている間に喉へ鼻水が流れてきて、咳き込んで目が覚める」――。このような不快な症状に悩まされていませんか?それ、後鼻漏(こうびろう)の可能性があります。
後鼻漏は、鼻水が本来の出口ではなく、喉の奥に流れ込むことで起こる症状です。そのため、喉に粘液がまとわりつくような感覚や、咳、口臭、睡眠障害といった二次的な問題を引き起こします。
この記事では、耳鼻科やセルフケアの現場で得られた知見をもとに、「のどに流れる・張り付く後鼻漏」の正体、原因、そして具体的な治し方を徹底解説します。できるだけ今日から始められるケアを盛り込みつつ、いつ病院に行くべきかの目安もお伝えしていきます。
後鼻漏とは?喉に流れる鼻水の正体
後鼻漏(こうびろう)ってどんな症状?
後鼻漏とは、本来は鼻の前方から外へ流れるはずの鼻水が、鼻の奥から喉に向かって流れ込む現象です。1日に作られる鼻水は約1〜2リットルにものぼりますが、通常は気づかないうちに飲み込まれていきます。
しかし、風邪やアレルギー、副鼻腔炎などで鼻粘膜が炎症を起こすと、鼻水の粘度が増し、粘り気のある鼻水が喉に張り付くようになります。
この「喉にまとわりつく感じ」が、後鼻漏の代表的な違和感です。
後鼻漏でよくある症状
- 喉の奥に何か詰まっているような違和感
- 頻繁な咳払い・軽い咳が続く
- 就寝中に咳き込み、目が覚める(睡眠の質低下)
- 声がかすれる、喉がイガイガする
- 口臭が強くなる(細菌の繁殖による)
- 食べ物が飲み込みにくい
症状が強くなると、仕事中や人との会話にも支障をきたし、「このままずっと続くのでは?」と不安になる方も少なくありません。
関連記事:【後鼻漏×口臭】症状を根本改善!原因・治し方・予防策を徹底解説
なぜ鼻水が喉に?後鼻漏の原因を探る
後鼻漏の原因は一つではありません。以下のような疾患や生活習慣が背景にあることが多く、人によって治療法が異なるのも特徴です。
1. 副鼻腔炎(蓄膿症)
副鼻腔炎とは、鼻の周囲にある空洞(副鼻腔)に膿がたまり、粘性の強い鼻水が作られる病気です。これが喉に流れ込むと、後鼻漏として感じられるようになります。
- 急性副鼻腔炎:風邪が原因で一時的に炎症が起きるもの。比較的治りやすい。
- 慢性副鼻腔炎:3ヶ月以上続く症状。粘り気が強く、慢性化しやすい。
特に黄色や緑色の濃い鼻水が喉に張り付くような場合、副鼻腔炎が疑われます。
2. アレルギー性鼻炎(花粉症など)
アレルゲン(花粉・ハウスダストなど)が原因で鼻水が大量に出ると、前方に排出されず後方に流れ込みやすくなります。
- くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみといった症状がある
- 花粉症の季節に悪化しやすい
- 通年性アレルギー(ホコリやペット)も原因になる
透明な鼻水でも、量が多くなることで後鼻漏を引き起こします。
3. 上咽頭炎(鼻と喉の奥の炎症)
上咽頭という、鼻の奥と喉の境目にあたる部位が慢性的に炎症を起こすと、粘液がその部分に停滞し、喉に流れ込みます。これが慢性的な後鼻漏や咳の原因に。
最近では、Bスポット療法(塩化亜鉛などを直接塗布する方法)で改善するケースも増えています。
4. 鼻腔ポリープ(鼻茸)や腫瘍
鼻の中にポリープ(良性腫瘍)ができると、鼻水の排出が妨げられ、後鼻漏を引き起こすことがあります。ごくまれに、悪性腫瘍が関係していることも。
5. その他の要因
- 加齢による粘膜の働き低下
- 喫煙や大気汚染などの刺激物質
- 薬の副作用(抗うつ薬や降圧剤など)
- 胃酸逆流(逆流性食道炎)による擬似的な喉の違和感
後鼻漏の診断と病院での治療法
受診のタイミング
次のような場合には、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
- 1〜2週間セルフケアをしても症状が改善しない
- 黄色や緑色の鼻水が出続けている
- 咳がひどく、睡眠に支障が出ている
- 喉の違和感で食事や会話に集中できない
- 後鼻漏と一緒に頭痛・顔面痛・発熱などがある
「これくらい大丈夫」と我慢せず、専門医に相談することで早期改善につながります。
診察と検査方法
病院では、以下のような方法で診断が行われます。
- 問診と視診:いつから、どんな症状か、鼻水の色や量、アレルギーの有無などをヒアリング。
- 内視鏡検査:鼻や喉の奥を小型カメラで直接観察し、炎症やポリープの有無を確認。
- 画像検査(CT・X線):副鼻腔炎や腫瘍の有無を詳しく調べる。歯性上顎洞炎(歯の炎症が原因)も発見可能。
- アレルギー検査:血液検査や皮膚テストでアレルゲンを特定。
これらにより、後鼻漏の根本原因を明確にし、適切な治療方針を立てていきます。
後鼻漏の治し方|耳鼻科での主な治療法
薬による治療
原因に応じて、次のような薬が処方されます。
- 抗生物質:副鼻腔炎や上咽頭炎など、細菌感染がある場合に使用。
- 去痰薬・粘液調整薬:粘り気のある痰や鼻水をサラサラにして排出しやすくする。
- 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬:アレルギー性鼻炎による鼻水やくしゃみを抑える。
- ステロイド点鼻薬:鼻粘膜の炎症を抑えて鼻づまりや後鼻漏を改善。
- 漢方薬:体質に合わせて処方されることもあり、慢性的な症状に用いられます(例:小青竜湯、辛夷清肺湯など)。
ネブライザー治療
専用の機械で薬剤を霧状にして吸入する方法。鼻腔や喉の奥まで薬を届けられるため、炎症部位に直接作用しやすいのが特徴です。副作用も少なく、小児にも適応されます。
Bスポット療法(上咽頭処置)
慢性上咽頭炎による後鼻漏に有効な治療法。薬液を含ませた綿棒で、鼻の奥(上咽頭)に直接塗布し、炎症を抑える方法です。
- 効果があれば数回で症状が改善することも
- 処置時に痛みや出血があるため、医師の指導のもとで受けることが大切
手術療法(重度の場合)
以下のような場合には、外科的処置が検討されます。
- 副鼻腔手術:蓄膿症(慢性副鼻腔炎)が薬で改善しない場合
- 鼻中隔矯正術・下鼻甲介切除術:鼻づまりがひどく、通気を改善するため
- ポリープや腫瘍の切除:空気や鼻水の通り道を確保するため
手術は最終手段ですが、症状の根本解決につながるケースも多いです。
自宅でできる!後鼻漏セルフケア5選
後鼻漏は、日常のちょっとしたケアで症状がぐっと軽くなることがあります。以下の5つの方法を、ぜひ今日から取り入れてみてください。
1. 鼻うがい(鼻洗浄)
後鼻漏対策の定番ともいえるのが「鼻うがい」。鼻腔や副鼻腔にたまった粘液やアレルゲンを直接洗い流すことができます。
- 人肌程度(37℃前後)の生理食塩水を使用(市販キットがおすすめ)
- 片鼻から注入して反対側または口から排出
- 毎日1〜2回、継続することで効果が高まります
慣れないうちは浅い角度で少量から。痛みが出ないようにやさしく行うことがポイントです。
2. 水分補給と加湿
粘液は乾燥すると粘り気が強くなり、喉に張り付きやすくなります。
- 水や白湯、ハーブティーなどをこまめに飲む
- 室内湿度は50〜60%を目安に加湿器や濡れタオルを活用
- 就寝時はマスクの着用も効果的
乾燥が気になる冬場やエアコン使用時は特に意識しましょう。
3. 蒸しタオルや入浴で温活
鼻周辺を温めることで血行が良くなり、粘液の排出が促進されます。
- 蒸しタオルを鼻の周りに当てる(1回5分ほど)
- 湯船にゆっくり浸かり、鼻と喉をスチームで温める
- 入浴時に深呼吸して、蒸気をゆっくり吸い込む
特に副鼻腔炎による後鼻漏が疑われる方にはおすすめです。寝る前に行うとリラックス効果もありますよ。
4. ツボ押し・マッサージで循環を促す
鼻づまりや後鼻漏に効くと言われるツボやリンパを刺激して、循環を改善していきましょう。
- 迎香(げいこう):小鼻の脇にあるツボ。鼻水・鼻づまりに効果的。
- 印堂(いんどう):眉間の中央に位置。副交感神経を刺激してリラックス効果も。
- 耳の下〜あご下のリンパマッサージ:耳の後ろから顎の下に向かって、親指でやさしく撫で下ろす。
毎日数分続けることで、むくみや詰まりが改善されやすくなります。
5. 生活習慣の見直し
後鼻漏は、日々の生活のちょっとした習慣で悪化・改善します。
- タバコや強い香料を避ける(粘膜を刺激)
- 睡眠不足を解消し、免疫力を保つ
- カフェインやアルコールは控えめに(粘膜の乾燥を助長)
- 寝る前の食事を控える(胃酸逆流を防止)
「生活の土台を整える」ことが、地味ながら一番の近道です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 後鼻漏は本当に治りますか?
A: はい、原因に合わせた対処をすれば改善するケースが多いです。ただし慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎がある場合は、数週間~数ヶ月単位のケアが必要なこともあります。大切なのは、「後鼻漏は“結果”であって、根本の原因がある」という視点です。
Q2. 鼻うがいは毎日しても大丈夫?
A: 基本的には、1日1〜2回までが目安です。やりすぎると逆に粘膜を傷つけたり、耳に水が入ったりするリスクがあります。朝晩など、生活の中で習慣化するのがおすすめです。
Q3. 市販薬だけで治せますか?
A: 軽症の場合は、市販の去痰薬・抗アレルギー薬・漢方薬などで一時的に症状が和らぐこともあります。ただし、「なぜ後鼻漏が起きているか」を突き止めないと根本改善は難しいため、改善しないときは早めに耳鼻科へご相談ください。
まとめ|原因を知って、正しい対策を
後鼻漏は、喉に流れ込む鼻水が粘着して不快な症状を引き起こす「結果としての症状」です。だからこそ、次の3つを意識しましょう。
- 原因を知る
副鼻腔炎、アレルギー、上咽頭炎…人によって異なるため、検査や診断が重要です。 - セルフケアを実践する
鼻うがい、温活、水分補給、生活改善など。地道でも続けることが回復の鍵。 - 早めの受診も検討
数週間たっても改善しないなら、耳鼻科での検査や治療が必要です。
後鼻漏は、決してすぐに治る症状ではありません。多くのケースで、慢性的な副鼻腔炎やアレルギー、上咽頭炎などが関係しており、「何をしても良くならない」と感じている方も少なくありません。
それでも、あきらめないでください。劇的な変化はなくても、少しずつ軽くなっていく過程は必ずあります。大切なのは「原因を正しく知ること」と「治療とケアを止めないこと」。今日できる小さな一歩が、半年後の快適な毎日にきっとつながっていきます。
今あなたの苦しさは、ちゃんと意味がある回復の途中です。焦らず、やさしく、自分の体と付き合っていきましょう。
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