
こんにちは、口腔ケアアンバサダー(社団法人 日本口腔ケア学会認定)の 上林登です。
監修:歯科衛生士 上林ミヤコ
「耳鼻科で取ってくれなかった…」「うがいで出るって本当?」「綿棒の正しい使い方が知りたい」——そんな不安とモヤモヤを、ここでやさしく解消します。この記事は“Q&A+実践コツ特化”。全体像や原因から予防までを網羅した完全版は、ピラー記事(ためしてガッテン流の完全ガイド)に任せ、ここでは「今、安全に、どうやって出すか」に絞って解説します。
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結論|耳鼻科が取らないのは“危険回避と再発性”。まずは安全な即効ケアから
【結論】
- 耳鼻科が取らない主な理由:小さい膿栓は自然排出、診察時に見えない、無症状なら治療不要
- まず試すべき安全3ステップ:ぬるま湯(または食塩水)うがい → 丸型洗浄瓶の弱水圧でピンポイント洗浄 → 鼻呼吸と加湿習慣
- やってはいけないこと:強水圧シャワー直撃、綿棒で奥を突く、金属器具の使用
受診の目安:痛み・発熱、出血の繰り返し、飲み込みづらさ、石のように硬く大きい膿栓は耳鼻科へ。
耳鼻科が「様子を見ましょう」と言うのは冷たいからではありません。膿栓の多くは自然に排出され、無理に触ると出血や炎症、再発のループを招くからです。診察中に視認できない位置にあることもよくあります。そこで、まずは自宅でできる弱い刺激から順に試しましょう。
- Step1:ぬるま湯(または薄い食塩水)で「そっとうがい」。上を向き、左右にゆっくり傾けて扁桃の陰窩へ水を行き渡らせます。
- Step2:丸型洗浄瓶(弱水圧)でピンポイント洗浄。扁桃に斜め手前から短時間だけ当て、当てっぱなしにしない。
- Step3:鼻呼吸・加湿・水分補給のルーティン化。喉の乾燥は再付着を招きます。
本記事では、膿栓が気になるときに「今すぐ安全にできる対処法」に絞ってご紹介しています。原因や予防方法などの詳しい解説は別記事でまとめていますので、ここでは重複を避けつつ、具体的な手順と安全のポイントを丁寧にお伝えします。
耳鼻科が膿栓を積極的に取らない医学的な理由
耳鼻科で「膿栓は取りません」と言われるのは、冷たい対応ではなく、安全性を優先した医学的判断です。代表的な理由は以下の3つです。
- 自然に排出されることが多く、無理に取らない方が安全
膿栓はくしゃみや咳をきっかけに自然に外れることがよくあり、大きな害を及ぼさないケースが大半です。
サラヤ健康情報サイトでも「多くの場合、食事や咳のタイミングで自然に取れるため、無理に除去しなくても問題ない」と記載されています。 - 再発しやすく、扁桃のくぼみにまたできやすい
扁桃には多数の陰窩(くぼみ)があり、一度取っても同じ場所や別の陰窩に再形成されやすいため、”根治”は難しいとされています。
あゆみ歯科クリニックのブログでも「耳鼻科で安全に取り除いても、またすぐ同じ場所にできることがある」と触れられています。 - 診察時に見えない位置に隠れていることがあり、安全優先で処置を避ける
診察時に膿栓が陰窩の奥深くにあると見落とすことがあり、無理に探そうとすると粘膜を傷つけるリスクがあります。
家庭の医学オンラインでも「くぼみに隠れた膿栓は確認できず、無理に除去するよりも自然に経過を見るのが一般的」と記されています。
このように、「膿栓だから早く取ってほしい」と焦る気持ちも自然ですが、医師が慎重になるのは、安全第一・再発防止という医学的な判断に基づいていると理解すると、安心感につながります。
知恵袋で多かった悩みTOP5と専門家の即回答
1. 「耳鼻科で取ってくれないのはなぜ?」
小さく症状が軽い膿栓は自然排出が基本。無理に除去しても再発しやすく、粘膜損傷のリスクがあります。痛み・発熱・嚥下障害などレッドフラッグがある時のみ、処置の適応が検討されます。
2. 「うがいで出る?コツは?」
出ます。ポイントは水の流れを“当てる”のではなく“回す”こと。上を向いて「あー」と小さく発声しながら、左右にゆっくり傾けると、陰窩に水が入りやすくなります。朝・入浴前後に1〜2回、強くガラガラしないのがコツです。
3. 「綿棒で押しても大丈夫?」
奥を突くのはNG。どうしても使うときは、膿栓の“周囲”をやさしく持ち上げて、自然に浮かせるイメージで。痛み・出血・強いえづきが出たら即中止。1日1回まで、連日トライは避けましょう。
4. 「シャワーで流すやり方は安全?」
弱水圧で短時間なら補助になります。直撃・長時間・高水圧は絶対NG。斜め手前から一瞬だけ当て、すぐ止める。入浴後に喉の保湿(加湿・水分)もセットで。
5. 「再発を防ぐ方法はある?」
あります。鍵は乾燥させない・細菌の温床を作らないこと。鼻呼吸、就寝時の加湿、こまめな水分、そして毎日のやさしい口腔清掃(歯・舌・うがい)をセットで続けると、付着しにくくなります。膿栓が大量に出たり、続いたりする場合は、「膿栓が大量に出る」原因と対処」も参考に。
これらの実際の声や体験談を参考に、あなたも自宅でできるケア方法を取り入れてみませんか?気になるケア方法や、さらに詳しい情報は【膿栓を取るアルカリイオン水うがい】や【舌苔はコットン(綿花)で拭き取る】の記事もぜひご覧ください。
膿栓の取り方コツ10選(弱→強の安全順)
- ぬるま湯うがい:36〜40℃のぬるま湯で、上向き・左右傾けの「そっとうがい」。1回15〜20秒、朝晩。
- 薄い食塩水:コップ180mLに食塩ひとつまみ。浸透圧で粘膜にやさしく、剥がれやすく。
- 入浴前後うがい:血流と湿度が上がるタイミングを狙って“出やすい時間帯”に実施。
- 舌のやさしい動かし方:「あー」「いー」を小さく交互に発声。陰窩に水を送る“ポンプ”の役割。
- 丸型洗浄瓶(弱水圧):斜め手前から1〜2秒だけ当てる→止めるを数回。当てっぱなし厳禁。
- スチーム+うがい:加湿器や入浴の蒸気で潤してからStep1へ。乾燥状態より成功率↑。
- 就寝前の保湿ルーティン:鼻呼吸テープ(肌に合う範囲で)や枕の高さ調整で口呼吸を減らす。
- 弱水圧シャワー(補助):あくまで補助。直撃・高水圧・長時間はNG。
- 綿棒は“周囲だけ”:奥を突かず、周囲を軽く押し上げて自然に浮かせる。痛み/出血で即中止。
- それでも難しい時は中止→受診へ:痛み・発熱・反復する出血・飲み込みづらさ・石化/巨大化は耳鼻科で相談。
やってはいけないこと(必読)
- 金属器具の使用(粘膜損傷・感染リスク)
- 強水圧シャワーの直撃(出血・炎症)
- 綿棒の深追い(えづき・粘膜損傷・慢性化)
- 毎日の繰り返しトライ(炎症→再発の悪循環)
耳鼻科での対応と受診すべきサイン
自宅ケアで改善しない場合や、症状が悪化している場合は耳鼻科での処置が必要です。耳鼻科では、膿栓の状態や位置に応じて以下の方法がとられます。
- 洗浄:専用の器具でぬるま湯や生理食塩水を流し、膿栓をやさしく除去します。
- 吸引:細い吸引管で陰窩内の膿栓を取り除きます。
- 焼灼:再発を繰り返す場合、陰窩の入り口を焼き固める方法がとられることもあります。
- 摘出:扁桃全体を摘出する外科手術。重症例や合併症がある場合に限られます。
受診を検討すべき症状
- 喉の痛みや強い違和感が続く
- 発熱がある
- 出血が繰り返し起こる
- 飲み込みにくさがある
- 膿栓が石のように硬く大きくなっている
これらの症状は、膿栓だけでなく扁桃炎や扁桃結石、その他の病気のサインである可能性があります。早めに耳鼻科で診てもらいましょう。
再発させない根本ケア
膿栓は一度取れても、扁桃の構造や生活習慣によって再び作られやすくなります。再発予防には、日常のちょっとした工夫が大切です。
- 鼻呼吸の習慣化:口呼吸は喉を乾燥させ、膿栓が付きやすくなります。
- 加湿と水分補給:特に就寝時は加湿器や水を枕元に置き、乾燥を防ぎます。
- やさしい口腔清掃:歯磨き・舌のケア・うがいをセットで行い、細菌の温床を減らします。
- 生活習慣の見直し:栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス軽減も免疫力維持に大切です。
再発しにくい環境づくりが、膿栓の悩みから解放される近道です。
▶膿栓が見えないけれど臭いが気になる!その原因と対策を徹底解説
よくある質問(FAQ)
耳鼻科で断られたらどうすればいい?
症状が軽ければ自宅ケアで様子を見ても構いません。痛みや発熱がある場合は、別の耳鼻科や総合病院を受診してみましょう。
毎日取ってもいいの?
毎日の膿栓除去はおすすめできません。粘膜が傷つき、炎症や再発の原因になります。気になる時だけ、やさしく行うようにしましょう。
臭いが強い時は?
一時的に口臭が強い場合は、うがいや口腔清掃で改善することもありますが、慢性的な場合は耳鼻科や口臭外来での診断が必要です。
著者の一言アドバイス
著者の一言アドバイス
膿栓は「強く押し出す」ほど再発と炎症の悪循環に陥ります。まずは“弱い刺激で自然に出す”が基本。ぬるま湯うがい → 丸型洗浄瓶の弱水圧 → 鼻呼吸・加湿を1週間続けてみてください。変化が乏しければ耳鼻科での相談をおすすめします。
※喉の膿汁除去にはアルカリ性のうがいが有効です。うがい用のアルカリイオン水に関しては、製品案内ページをご参考ください。
参考文献リスト:
- MedlinePlus(米国国立医学図書館・米国国立衛生研究所運営):「Tonsillectomy(扁桃摘出術)」
- PubMed(米国国立医学図書館所蔵論文):“Tonsilloliths: Diagnosis and Management”
- PMC(PubMed Central、公的アーカイブ):“Tonsillolith – Clin Case Rep.”
- “今日の臨床サポート”(診療報酬点数ガイドライン):J098‑2 扁桃処置
- 池袋ながとも耳鼻咽喉科:「扁桃膿栓(におい玉・臭い玉)」
- 耳鼻咽喉科 坂本クリニック(大阪市天王寺):膿栓の除去について
- いしゃまち病院検索:「喉の奥にできる白い塊『膿栓』」
- リンククラブ:「扁桃膿栓症と扁桃処置」(PDF)