糸状乳頭が長くなる原因と短くする方法

長くなった糸状乳頭を短くするには

口腔ケアアンバサダー(社団法人日本口腔ケア学会認定)の上林登です。

糸状乳頭(しじょうにゅうとう)の役割は、舌をザラザラにして食物をなめとりやすくし、舌の感覚を鋭敏にするためのものです。

参考:糸状乳頭とは?役割など

※糸状乳頭は舌全体に絨毯のように生えて細長く、高さが0.5~2.5㎜で円錐状の形をしています。また、表面上皮は鱗状で、角化する場合が多く、白ぽい色です。
出典:埼玉医科大学公衆衛生学教室「舌診の研究」

ところが、この糸状乳頭が長くなると、「糸状乳頭の角化」が進み「舌苔(ぜったい)」が厚くなります。肉眼で舌を見た時に薄く白い毛のように見えます。口内が乾燥すると、糸状乳頭はより白く毛羽立ってザラザラしてきます。

糸状乳頭(舌乳頭)が長くなると、舌に食べかすや細菌などの汚れがよくたまるようになり舌苔ができやすく、また、口臭の原因にもなります。ですから、舌乳頭が長い場合には、その対策が重要です。

舌乳頭が長く伸びる原因は二つあります。一つは、胃腸などの炎症によって舌乳頭の角化が起きるのです。この角化によって舌乳頭が長くなるのです。そして、もう一つの原因は「舌磨き」です。

舌乳頭は柔らかい組織なので、舌磨きでも簡単に傷つくからです。でも、一度長くなってしまった舌乳頭を治さないことには、舌苔や口臭を改善できません。

今回の記事では、「糸状乳頭が長くなる原因」についてお伝えします。ぜひご参考にしてください。

関連記事:舌が白い!舌苔の原因と取り除き方

糸状乳頭とは

糸状乳頭は舌乳頭の一種。 舌の背面全域にもっとも多く存在して、じゅうたんのようにザラザラしています。 このザラザラしている乳頭が、食物をなめとりやすくし、舌の感覚を鋭敏にしています。出典:Quintessenceデンタルゲート

舌の表面には、絨毯のように舌乳頭がありざらざらしています。舌乳頭には、糸状乳頭,茸状乳頭,有郭乳頭,葉状乳頭などがありますが、この中でも糸状乳頭が舌苔の形成に大きく関係しています。また、糸状乳頭には味蕾のような味覚を感じる働きもありません。

舌苔ができると、ブツブツの茸状乳頭(じじょうにゅうとう)が目立つために心配する人がいますが、茸状乳頭は、舌苔とは関係ないのでご安心ください。

糸状乳頭(しじょうにゅうとう)は舌の全域にあり、糸状乳頭が舌苔(ぜったい)の原因になります。

糸状乳頭が伸びると口臭原因になる

糸状乳頭が長くなると、食べかすなどが溜まりやすくなり舌苔も厚く付着するようになります。そのため、舌磨きをしているかもしれませんが、舌を磨いても完全に舌苔を取ることはできないために過剰に磨く人が多いです。

しかし、舌を磨くと舌を保護している唾液(粘液)まで取ってしまい、口腔乾燥を起こします。口が乾くと、ネバネバ唾液になり唾液が臭うようになり、口臭が強くなっていきます。口臭が治らない人の場合には、ほとんどがこの悪循環にはまっています。

口臭を改善するには、どこかでこの悪循環を断ち切る必要があります。

糸状乳頭が長くなると舌苔ができる

糸状乳頭は再生能力を持ち、その編成角化細胞が絶えず成長、脱落、積集される。また角化細胞で食物残渣、細菌が繁殖して白く薄い皮膜を形成しているこれが舌苔である。

参考文献:埼玉医科大学公衆衛生学教室、舌診の研究

糸状乳頭が長いと舌苔ができやすくなります。その理由は、舌乳頭の間に食べかすや細菌などがたまり清掃が困難になるからです。

舌苔は風邪などで発熱した時や胃腸の病気の時によくできます。また、加齢などで舌の動きが悪くなったり、疲労、喫煙、口腔ケアが不十分な時にもできやすいです。

それでも、唾液の分泌が多く舌粘膜が潤っている場合は、舌苔はできにくく治りやすいものです。

糸状乳頭が長くなる原因

「糸状乳頭が長くなった」、「舌乳頭が伸びた」とご心配される方がおられます。舌乳頭が先天的に長い場合もありますが、舌乳頭が伸びる原因は糸状乳頭の角化によるものです。

角化とは、表皮の角化細胞(ケラチノサイト)が、角質細胞へ至るまでの過程のことで、新しい細胞が生まれてからはがれ落ちるまで、およそ4週間以上の周期で繰り返されています。糸状乳頭の角化は、刺激や乾燥があると進むので、舌に刺激を与えないようにし、唾液で保湿することが大切です。

糸状乳頭が長くなり、ここに剥離細胞、粘液、食べかす、細菌などが積み重なると舌苔は厚くなります。

【糸状乳頭が長くなる原因】

  1. 糖とタンパク質の過剰摂取
  2. 胃腸の炎症
  3. 過剰な舌磨きによる乳頭の炎症
  4. 毛舌症

糖とタンパク質の過剰摂取

糸状乳頭の血管中の糖やタンパク質が多くなりすぎると、舌乳頭の角化が亢進して糸状乳頭が長くなります。

引用:口腔衛生会誌 舌苔と生活習慣および自覚症状との関連性

胃腸炎で糸状乳頭が長くなる

胃腸に炎症が起きると治癒反応が、舌にも同じように伝わり糸状乳頭が伸びるのです。

胃や腸が炎症を起こすと、すぐに直そうとして新しい細胞がつくられます。胃腸と舌は粘膜でつながっているため、舌の細胞もどんどん新たに作られ、表面の「乳頭」も成長してしまいます。
引用:この差って何ですか?

胃粘膜の炎症で糸状乳頭の角化が進み乳頭が長くなります。また、病状が進行すると舌苔が黄色くなるそうです。

舌苔は、防御反応としても発生します。胃粘膜の炎症や膵(すい)臓の働きが弱っている時には、舌の糸状乳頭の角化が亢進(こうしん)して伸びるために、舌苔が厚くなります。

引用:上毛新聞 情報提供/群馬県保険医協会

糸状乳頭が長くなると、乳頭の先端が擦れて角化が増進します。舌乳頭の角化はこんな感じです。

舌磨きのし過ぎで糸状乳頭が長くなる

舌磨きで舌をこすると糸状乳頭の先端が傷つき角化をおこし、更に乳頭を長くしてしまいます。専用の舌ブラシやタングスクレーパーでも同じように舌乳頭を角化させるのでご注意ください。

糸状乳頭は粘膜で柔らかい組織のために、舌磨きでも簡単に傷つきます。

・出典:舌磨きしないほうがいい?真実を暴き、誤解を解明する正しいケア方法

毛舌症

毛舌症(もうぜつしょう)は、口腔細菌のバランスがくずれることで舌乳頭が長く毛のようになる症状で見た目が悪いかもしれませんが、良性です。舌が白くなるのを白毛舌、黒くなるのを黒毛舌といいます。

黒毛舌などによって乳頭が長くなる原因は、抗菌剤の長期使用のほかに次のようなものがあります。

毛舌の原因としては口腔内を不潔にしておいたり、抗菌薬やステロイド剤の投与、トローチ、軟膏などを利用したために起こることが多くあります。
喫煙や放射線照射などの化学物質による刺激によっても起こりえます。
また舌粘膜の神経障害や慢性の胃腸障害、糖尿病などによって引き起こされる場合もあります。
糸状の乳頭が伸びた状態は通常は白く見え、その量や食べ物の内容などによって黄色やグレー、茶色、黒へと変化することになります。唾液の分泌量が低下し、口から唾液が蒸発してしまうことも原因となっています。

引用:スマイルデンタルクリニック

糸状乳頭を短くする方法

口臭を改善するためには、伸びて長くなった糸状乳頭を短くしないといけません。そして、舌をきれいにして口臭をなくすためには、どこかで生活習慣を改善して悪循環を断ち切る必要があります。

その中でも、腸内環境を整えて胃腸を健康にすることが、長くなった糸状乳頭を元に戻すためには効果があります。

糸状乳頭を短くする方法

  • 唾液の分泌を促進する
  • 胃腸を健康にする(運動、食生活の改善)
  • 舌磨きを止める
  • 自律神経を整えて唾液の分泌を促進する(ストレスの軽減)

痛んだ舌粘膜の治し方はこちらをご参考にしてください。

>> 舌磨きで傷ついた舌は何日で治る?傷の治し方はコレ!

小まめに水やお茶・白湯などを飲んで、口内と喉を洗浄することは口臭予防に効果的です。

【関連記事】

唾液が臭いとキスもできない!唾の臭いを消す方法!
ドライマウスは口臭をひどくする!改善する鍵は菌にある

唾液を出す

口腔乾燥すると糸状乳頭が伸びるので、唾液を充分に分泌するようにして舌を保湿させることが大事です。

関連記事:唾液が出ない!?その原因と対処法は?

腸内環境を整える

糸状乳頭の角化は胃腸など内臓が弱った時などに起こしやすくなるので、胃腸を健康にすることが大事です。毎日の食事に乳酸菌や発酵食品を摂り善玉菌を増やすと、腸内環境が整い糸状乳頭が短くなっていきます。

関連記事:胃腸が悪いと口臭になる!?腸内フローラを整えると口臭予防できる

舌磨きをやめる

口腔内が乾燥すると、糸状乳頭が長く伸び、唾液だけでなく飲食物の残りかすがたまり、口臭を発するという。
ブラシで舌苔を取ることは口臭防止に効果的だが、舌をこすり過ぎると伸びた糸状乳頭がはがれ落ち、粘膜が荒れた状態になって味覚障害を引き起こす場合がある。「特に正常な状態のときの舌磨きは逆効果」と本田医師。

引用:時事メディカル

舌苔が出来、舌が白くなると、舌磨きを行う人が多いです。舌を磨く一般的な方法としては、市販の舌ブラシや歯ブラシを用いて舌粘膜をゴシゴシと磨く方法ではないでしょうか。

舌磨きが良くない理由は、この舌磨きによって舌粘膜が傷つくからです。舌の表面は、「舌乳頭」が生えてザラザラ面になっています。この乳頭を舌ブラシでゴシゴシと磨くと舌が削れて傷付きます。

だから、舌磨きはしない方が良いのです。しかし、「舌磨きをしない方が良い」というのは、舌が傷つくからだけではありません。舌磨きによるリスクについては、『舌磨きは絶対にしてはいけない!なぜなら口臭をひどくする原因だからです。どうしたらいいかというと・・・』をご参考にしてください。

歯磨き粉の使用をやめる

舌磨きを行う時に、歯みがきと同じ要領で舌ブラシに歯磨き粉を付けて磨く方がいます。しかし、この行為こそが舌苔を作ってしまう大きな原因になっているということをご存知でしょうか。

一般的な歯磨き粉には、合成界面活性剤や発泡剤など刺激性のある成分が含まれています。歯磨きを行うと、これらの添加物が舌の粘膜に付着します。

でも、唾液が多いと、唾液に含まれる粘ついたムチンという成分が、舌を保護し守ってくれています。それだけではありません。唾液が分泌されるたびに、舌に着いた添加物も洗い流してくれます。だから、たとえ合成界面活性剤が含まれていても舌を痛めることがないのでしょう。

ところが、舌が白くなる人の特徴は、唾液の分泌が少ないこと(又は口呼吸)によって舌が常に乾燥しています。

舌の粘膜が、唾液保護されずにむき出し状態の所に、歯磨き粉に含まれる添加物が付着します。そして、舌が常に乾燥しているので、舌乳頭の角化が増長されるのです。

ですから、舌が白くなる人の場合には、歯みがきの時も出来るだけ歯磨き粉の量を減らし、歯磨きを終えたらしっかりと水で洗い流すなどの配慮が大切です。

舌磨きの時の歯磨き粉を使った時のリスクについては、『舌磨きは歯磨きでやってはダメ。コットンにあるものをつけて磨く方法とは?』をご参考にしてください。

まとめ

舌をキレイにするためには、舌だけをキレイにしようとしてもダメです。過剰な舌磨きによって舌が傷ついているかもしれません。そして、糸状乳頭が長くなっている場合もあります。

このように、舌粘膜が悪化すると、かえって舌苔ができやすくなります。そのような場合には、一度舌磨きをやめてみるといいでしょう。

また、市販の刺激の強い歯磨き粉ではなく、無添加歯磨きなど舌肌に優しいものが望ましいです。お勧めできるのは、口臭予防歯磨き粉「美息美人(びいきびじん)」のアルカリイオン水です。

これ一本で歯磨きとうがいの両方に使えます。舌苔は舌の奥に出来やすいので、アルカリイオン水でうがいするのが有効です。

口腔ケアを改善することで、舌もきれいになると思います。誤解しないで頂きたいのですが、健康な舌は、粘膜はピンクや赤色ですが、舌乳頭の角化と舌苔によって、薄っすらと白い膜がはっているイメージです。

>>舌苔の状態をチェック!あなたの舌苔は正常?口臭は大丈夫?

【参照リンク・参考文献】

大阪医科大学看護研究資料、舌苔の評価における動向および評価基準とその信頼性・再現性に関する文献検討
日本歯科医師会 歯とお口のことなら何でも分かるテーマパーク8020
日本口臭学会 口臭と口臭症に関連する用語
日本耳鼻咽喉科学会 代表的な病気
日本口臭学会誌 口臭への対応と口臭治療の指針2014
日本口腔ケア学会
厚生労働省
日本口臭学会

 

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